コネクティッドシティ - アジア太平洋地域での市民の洞察

スマートシティの進展状況に関して、アジア太平洋地域の5つの大都市で実施した調査の結果をもとに分析・考察したレポートです。

スマートシティの進展状況に関して、アジア太平洋地域の5つの大都市で実施した調査の結果をもとに分析・考察したレポートです。

アジア太平洋地域全域で急速な都市化が進んでいます。人口が都市部に集中することにより、交通路線の改善、持続可能性の高い都市計画、エネルギー/資源のより有効な管理などが課題となります。また、都市部の人口の高齢化により医療サービスの改善と強化が必要になると同時に、移動の利便性も重要性を増します。

本調査では、香港、メルボルン、ソウル、上海、シンガポールの5つの都市が、都市の発展に合わせ、都市のスマート化をどのように実現しているかについて分析しています。スマートシティ開発イニシアチブが都市のニーズとどの程度合致し、充足しているかを正しく評価するため、スマートシティ開発に対する市民の期待と優先事項について、交通機関/モビリティ、将来の労働力の育成、住環境、医療サービス、エネルギー/資源、テクノロジーの影響という6つの分野について調査しました。

ポイント

  • 調査結果から、市民が都市のどの分野を改善したいと考えているかが明らかになると同時に、実際にそれぞれの都市がどのように機能向上をさせたかを参考にできる。
  • 交通機関/モビリティの改善は、調査対象の都市でスマートシティ開発のカギとなる優先事項に挙げられ、中でも交通渋滞の軽減が「スマート化」した都市で期待できる恩恵としてランキングの上位に入る。
  • スマートシティはテクノロジーやその他の要因によって引き起こされるさまざまな現象に革新的かつ臨機応変に対応できる社会のための教育の強化と将来の労働力育成が、すべての都市で重要視されている。
  • 人口比において高齢者市民が増えていることから各都市は速やかに高齢者や障害者が移動しやすい都市環境に変える必要があり、慎重に配慮された都市計画・設計によって良好な住環境の構築が最優先事項に挙げられる。
  • 市民の高齢化と労働人口減少に伴い、医療サービスの提供とアクセスの改善が喫緊の開発優先事項になっている。
  • 各都市のエネルギーと資源管理の将来像について5都市の市民は高い意識を持っており、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギー資源の利用の加速などを目指した行動が広く支持されている。
  • 一般的に実装される9つのソリューションについて認識度が高くなればなるほど、そのテクノロジーが生活の質をプラスにするという印象も高まる。
  • アジア太平洋地域の都市で市民が求めているのは、単なるコネクティッドシティではなく、彼らの生活に役立つ都市であり、市民のニーズに応え、長期的に持続可能な方法でソリューションを提案する必要がある。

エグゼクティブサマリー

アジア太平洋地域の5つの都市で、開発に対する市民の期待と彼らが選ぶ優先事項について、交通機関/モビリティ、将来の労働力の育成、住環境、医療サービス、エネルギー/資源、テクノロジーの影響という6つの主要分野で調査を行いました。

全体的に見ると、51%の市民が慎重に配慮された都市計画と都市設計によって、より良い住環境が作られることがもっとも重要な要素と考えています。次いで都市開発の優先事項として49%の市民が医療サービスを容易に利用できるようになることを挙げています。交通機関/モビリティの改善がこれに続く3番目の重要な優先事項で(全市民の43%)、その次に僅差で続くのが教育の強化と将来の労働力の育成です。

モビリティおよびインフラストラクチャーのプロジェクトはすでに多くの都市で進んでおり、調査結果から重要な分野が明確になっています。5つの都市で共通の開発における2つの重要な優先事項は、歩行者のウォーカビリティと安全性の改善、鉄道と地下鉄の交通路線の増加です。

教育、起業家精神、イノベーションの推進などの分野では最新のテクノロジーに関連するスキルを身に付けたいという人々の欲求を反映し、継続的な教育/生涯学習の推進が最優先事項に挙げられています。

それぞれの都市の住環境について、調査対象のほとんどの市民が「良い」または「どちらともいえない」と思っています。ただし、満足度については各都市で注目すべき差異があります。

医療サービスにおける全体の最大の懸案は、都市が人口の高齢化にどのように取り組むか、その要望をどう反映するかということです。回答者は健康診断、予防接種などの予防医療を重視し、医療サービスの向上には公共セクターと民間セクターの相互協力が必要であると考えています。

エネルギー/資源の分野では、都市のエネルギー効率の改善と再生可能エネルギー源の利用の加速が重要な改善分野であると5都市の市民の多くが回答しています。

市民の認識度が高くなるほど、そのテクノロジーがプラスの影響を与えるという印象も高いことがわかります。そのためスマートテクノロジーが生活の質をどれほど改善させるかについて、市民に対して周知させるためのより良い方法を各都市が探る必要があるでしょう。

次のステップ:スマート化した都市に対するスマートシンキング

都市がスマートシティアジェンダを推進する場合、暮らしやすさと生活の質をすべての開発計画の中心に据えるとともに、政策を通じて告知したうえで、市民のニーズに合った都市をデザインするために、どんなテクノロジーを採用するかを決定していくことが重要です。またサービスの効果と効率を向上させるためには、データおよび分析の利用を拡大することになります。持続可能性と復元力を重視し、プロジェクトの計画と開発の中心的な要素としなければなりません。そして継続的な成功のためには、公的機関が持続可能なソリューションを展開するにあたり、市民や企業とより密接に交流する必要があるでしょう。

スマートシティプロジェクトの推進には、広い見識を持った政府が重要な役割を果たしながら、市民の積極的な関与を促し、民間企業のベストプラクティスを受け入れると良いでしょう。そうすることで暮らしやすさの改善や経済成長と競争力の強化、市民のニーズにより適した対応などを行う際に、正しい決定を行えるようになるのです。

英語コンテンツ(原文)

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