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サーキュラーエコノミーへの移行:WBCSDが企業のための指標を提案

サーキュラーエコノミーへの移行:WBCSDが企業のための指標を提案

2020年1月、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は企業のサーキュラリティを測る指標(サーキュラートランジション指標)を提唱し、指標の算定方法や指標を用いた目標設定などについて説明するガイドである“Circular Transition Indicators V1.0”を公表しました。

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サーキュラートランジション指標は、WBCSDサーキュラーエコノミー・プログラム(通称Factor 10)のサーキュラーメトリックス・ワーキンググループに参加する企業26社とKPMGオランダが開発した指標です。

「サーキュラリティ」とは、製品や資源の価値を永続的に再生できる能力のことを指します。これまで人類は「取る・作る・捨てる」という直線的な経済システム(リニアエコノミー)に従い、天然資源を採取し、使用してきました。しかし、人口が爆発的に増加し、特に新興国を中心に中間層が激増するにしたがい、資源の枯渇と価格の高騰や変動という潜在的リスク(リニアリスク)が顕在化しつつあります。

リニアエコノミー

リニアエコノミー

リニアリスク(例)

  1. 資源の価格高騰による、調達コストの増加
  2. 資源の価格変動による、事業継続性を損なうサプライチェーンリスクの高まり
  3. 資源の枯渇による、価格・需要の変動による収益の変動

リニアエコノミーから脱却するためには経済活動のサーキュラリティを改善し、従来の直線的な経済システムから、「サーキュラーエコノミー」と呼ばれるシステムへの根本的な変革の重要性が認識されています。サーキュラーエコノミーでは、廃棄物と資源の使用を最低限に抑え、資源と製品の経済価値を永続し、自然システムを再生します。

サーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミー

出典:“Circular Transition Indicators V1.0”からKPMG仮訳

サーキュラーエコノミーの原則

  1. 廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う
  2. 製品と原料を循環的に使い続ける(焼却や埋立をしない)
  3. 自然のシステムを再生する

出典:エレン・マッカーサー財団

欧州委員会は2015年、サーキュラーエコノミーの実現に向けたEU共通の枠組み構築を目的とする「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を採択しました。ヨーロッパ経済をサーキュラーエコノミーへと移行することで資源の消費と経済成長のデカップリングを成し遂げるだけでなく、国際競争力の向上につながるイノベーションの強化、持続可能な経済成長、新規雇用創出などを目指しています。※1

※1欧州委員会、サーキュラーエコノミーウェブサイト

冒頭で紹介したWBCSDのガイドでは、このようなサーキュラーエコノミーへの移行に向けて企業活動のサーキュラリティを測るため、下表のサーキュラートランジション指標を提唱しています。今まで、企業の資源循環に関するパフォーマンス指標として「原材料におけるリサイクル素材率」や「廃棄物のリサイクル率」などが使用されてきましたが、サーキュラートランジション指標では事業活動を通じて「投入されるサーキュラー素材(ノンバージン素材)の割合(=サーキュラーインフロー)」と「創出されるサーキュラー素材(生分解、リサイクル、再製造、修復、再利用などを通じて、原材料または製品として回復(リカバリ)が可能な素材)の割合(=サーキュラーアウトフロー)」をパフォーマンス指標としています。

サーキュラートランジション指標

・サーキュラーループを閉じるための指標(Close the Loop)

1.サーキュラーインフロー
事業活動に投入した原材料の総重量におけるサーキュラー素材(ノンバージン素材)の割合

2.サーキュラーアウトフロー
事業活動により創出された製品の総重量において、リカバリが可能、かつ、回収が可能な素材の割合

3.ウォーターサーキュラリティ
未公開(開発中)

4.再生可能エネルギー
年間エネルギー使用量における再生可能エネルギー使用量の割合
 
・サーキュラーループを最適化するための指標(Optimize the Loop)

5.クリティカル資源※2
リニアインフロー(バージン素材の投入量)の総量におけるクリティカル資源の割合

6.リカバリタイプ
リカバリタイプ別(生分解、リサイクル、再製造、修復、再利用など)の割合

・サーキュラーループを価値化するための指標(Value the Loop)

7.サーキュラー資源生産性
収益に対するリニアインフロー(バージン素材の投入量)の総重量

出典:“Circular Transition Indicators V1.0”からKPMG仮訳

※2欧州委員会などが公表している枯渇する可能性のある重要な原材料(参考:欧州委員会、クリティカル原材料ウェブサイト

 

これらの指標はどの業界のどのバリューチェーンにおいても適用可能であり、包括的でありながら柔軟性のある指標です。ガイドでは、指標の算定対象とするバウンダリーの決定から、指標の計算結果から事業活動における改善の機会を見出し実践するまでを以下の7つのステップに沿って解説しています。

ガイド

出典:“Circular Transition Indicators V1.0”からKPMG仮訳

現在の世界のサーキュラリティはたったの9%であると言われます。サーキュラーエコノミーの実現可能性は、サーキュラリティを可能な限り100%に近づけていくという大きな変革に社会経済が対応できるか否かにかかっています。この点において、サーキュラートランジション指標は、サーキュラーエコノミーへのパラダイムシフトをもたらす新しい価値基準を示しているといえます。

例えば、2019年5月に欧州委員会が発表したリサイクルプラスチックに関する指令※3では、「ペットボトルのリサイクル成分を2025年までに25%、2030年までに30%とする」という目標が掲げられています。この目標をサーキュラートランジション指標に当てはめると、製品の一部(包装)のサーキュラリティを改善する「サーキュラーインフロー」に関する目標であることが分かります。

※3欧州委員会“Commission welcomes European Parliament adoption of new rules on single-use plastics to reduce marine litter”

また、サーキュラーエコノミーへの移行を精力的に進めているオランダでは、金融機関3社(ABN AMRO、ING、RABOBANK)がサーキュラーエコノミー金融ガイドライン※4を2018年7月に公表し、サーキュラーエコノミーを後押しする事業に投融資をはじめています。ガイドラインでは投融資先の環境社会インパクト評価を推奨しており、将来的にはサーキュラリティを定量的に評価するサーキュラートランジション指標のような指標を投融資の判断基準に取り入れることが考えられます。

※4Circular Economy Finance Guidelines

今後、サーキュラーエコノミーへの移行を促す制度や取り組みが広まるにつれ、政府、投資家、NGO、消費者などのステークホルダーから、企業や事業のサーキュラリティを定量的に測り、サーキュラー・パフォーマンスを評価・改善することや、関連する情報開示への要請が高まることも想定されます。また、サーキュラートランジション指標を取り入れ、サーキュラリティへの理解を深めることにより、企業はサーキュラーエコノミーへの移行がもたらす自社にとっての機会やリスクを特定し、対応の優先順位付けや中長期戦略への統合を検討することができます。

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