経験豊富な人材とデジタルの融合で、新たなる挑戦を

支払などが不要になるフリクションレスな世界での銀行業の在り方について、三菱UFJ銀行の岩田廉平氏にお話を伺いました。

支払などが不要になるフリクションレスな世界での銀行業の在り方について、三菱UFJ銀行の岩田廉平氏にお話を伺いました。

岩田 廉平 氏

本来の目的以外の行動はなくなる?

2030年の社会は、完全にフリクションレスの世界(摩擦のない世界)になっていると思っています。おそらく支払いという行動自体がなくなっているか、それに近い世界になっているでしょう。
だれも「支払う」という行動自体に価値を持ってはいないはずです。Amazon Go が良い例です。スーパーに行く目的はレジに並ぶことではありません。おにぎりを買いたくて行くのです。また、電車に乗るときの目的は、A 地点からB地点に行くことです。切符を買うことではありません。やりたいこと以外のことをやる必要はないはずです。したがって、本来の目的でないことは、どんどん見えなくなっていくでしょう。

既存の銀行業務からの解放

2030年には、金融が「決済」という意味で表に出ることがなくなり、完全な裏方になる可能性もあります。APIでの連携が進み、インターフェースは資産管理アプリに代替されているかもしれません。最近のFSB(金融安定理事会)などのレポートでは、「小さなFintechは銀行にとっての脅威ではなく、銀行の商売を伸ばしてくれるいい友だちだ」と書かれています。しかし、GAFAなどの世の中を変えるような存在は、金融機関にとって大きな脅威といえます。彼らが出てくると、そもそもの金融の秩序が乱れるのではないかとも言われています。
秩序が乱れるとは、銀行が生き残りをかけ、現在のようなフルラインナップの形態から、収益性の低い業務については撤退する可能性が出てくるということです。
しかし、銀行は公共性の高いビジネスです。ガス会社が「ガスが儲からないからやめます」といかないように、社会を支えるインフラ機能として銀行は必ず必要とされます。ただし、必要とされることと、商売として成り立つかは別です。そのため、変化に合わせて我々のビジネスを持続させていくために、在り様を変えていかねばならないと、強い危機感を持って取り組んでいます。1つはコスト構造改革です。具体的には、RPAなどのデジタル技術を用いた業務効率化によって、2023年度までに9,500人相当の業務量削減を目指しています。業務効率化によって、社内で働く人は定型業務から解放され、他の付加価値が高い業務にシフトすることが可能になります。

「信頼」を起点に

トップも含め「未来のために『変わるための投資』をしなければならない」という危機感は非常にあります。「新しいことをやる」、「変えていく」というマインドはあります。しかし、自分たちだけで変化に対応しようというのは、かなり厳しい。理由は、世の中を革新していくような新たなテクノロジーが次々と生まれてきているためです。こういった新たな技術をいかに取り込んでいくかが重要になると考えています。例えば、新しいことができるスタートアップが我々のインフラに乗り、そこと一緒に連携してやっていくことになるでしょう。
我々の優位性はこれまでに築いた「信頼」です。この信頼に対して、お客さまには安心して大切なお金を預けていただけています。この「信頼」を起点に、顧客基盤を維持し、金融のエコサイクルの中心にあり続けたいと考えています。しかしそれを「守る」という意識が強くなり過ぎると挑戦意欲を阻害します。そこで、MUFGでは「新しい信頼をつくろう」をスローガンとし、長年培ってきた信頼を「守る」という視座を超え、未来に向けて新たな信頼を「築く」、そのために「挑戦」していきます。

顧客起点の発想を

ところで、海外の金融機関のATMは、普通に止まります。売上げを夜間金庫に預けると、当然、通帳に記帳されるはずですが、インターネットバンキングで見ても、預けたのに載っていない。電話すると、「あぁ、すみません。忘れていました。もう一日待ってください」。それが標準的な世界レベルのサービスです。日本の水準は極めて高いのです。
このように考えると、もしかしたら、日本の銀行は品質が過剰なのかもしれません。でも、はたしてこれは本当にお客さまのことを考えているのでしょうか。お客さまが求めるのは、本当は安くて安心の良質なサービスを受けることだと思います。「日本のATMは止まらない」ですが、そのために莫大な投資やメンテナンス体制を構築しています。しかし、お客さまは「たまに止まっても良いので、もっと手数料を下げて欲しい」と思っているかもしれません。これは、単なる一例ですが、我々はもっとお客さま起点で柔軟なサービスを提供していかなければならないと考えています。

オープンイノベーションへ

預金と貸出金の金利差で収益をあげる伝統的な商業銀行ビジネスは、超低金利下においては厳しい状況にあります。それに加えて、GAFAに代表されるプラットフォーマーやレガシーを持たないFintech企業が金融ビジネスに進出する状況は、我々既存の金融機関にとっては脅威だと感じています。一方で、我々自身にとってもデジタル化は大きな事業変革のチャンスだと捉えています。
事業変革にあたっては、オープンイノベーションの発想で、新しい技術や外部の知見を取り入れ、Fintech企業などデジタルプレイヤーとも積極的な協調、協働を進めています。例えば、2015年に邦銀初のスタートアップアクセラレータ・プログラムとしてスタートした「MUFG Digitalアクセラレータ」は現在4期目ですが、これまで26社のスタートアップ企業が参加し、他の参加企業との協働が数多く実現しています。

2030年変わる銀行

2016年の銀行法改正により、銀行の業務範囲規制が緩和され、銀行業高度化等会社、つまり一定の条件を満たすFintech企業等への出資が容易となりました。MUFGとしても、デジタル技術を活用した次世代の金融UX(User Experience)を創造・提案することを目的とした「Japan Digital Design株式会社」を立ち上げています。また、近年Fintech関連スタートアップの資金調達はグローバルベースで大型化し、国内外の金融機関や異業種による戦略出資が活発化しています。このような環境変化を受け、2019年1月には投資専門子会社として、「株式会社三菱UFJイノベーション・パートナーズ」を設立し、200億円のコーポレートベンチャーキャピタルファンドを立ち上げました。日本のみならず、シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールにソーシングの拠点を置いており、グローバルに既に複数の出資を実行しています。Fintechおよび関連スタートアップ企業への戦略出資を通じて、引き続きMUFGグループ各社と出資先との協業および事業シナジーを追求してまいります。
そして、直近2019年2月には、米国Akamai社と「Global Open Network株式会社」を設立しました。新型ブロックチェーン技術を基盤としたオープンかつフリクションレスな決済を支えるペイメントネットワークの提供を目指しています。
このように、MUFGのビジネス領域は、デジタル化によって、実は広がっているというのが実感です。我々の社内にはもともと高度なファイナンスの知識を持つ人材やマーケットアナリスト、コンサルタント、日本のあらゆる業界の会社を支援するための高度な知識や経験をもつ人材が数多くいます。こうした人材とデジタルが組み合わさることで、新たな付加価値を生み出せる可能性もあります。MUFGは、「新しい信頼をつくろう」をスローガンにこれからもお客さまの信頼を大切にし、新たな挑戦を続けていきます。

岩田 廉平 氏

株式会社三菱UFJ銀行
デジタル企画部 次長

東京三菱銀行入行後、IT事業部にて法人向け決済商品企画・開発をに従事。MUFG Union Bank(サンフランシスコ)出向を機に、三菱UFJ銀行デジタルイノベーション推進部の海外チームとして、現地フィンテック企業とのアライアンスを担当。2017年より現職にて、AI、ブロックチェーンなど新技術の業務活用を推進中。

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