“お金にストレスを感じない生活”の実現に向けて

サブスクリプション方式の時代と今後の金融業界や仮想通貨の在り方について、株式会社マネーフォワードの神田潤一氏にお話を伺いました。

サブスクリプション方式の時代と今後の金融業界や仮想通貨の在り方について、株式会社マネーフォワードの神田潤一氏にお話を伺いました。

神田 潤一 氏

到来するサブスクリプション方式の時代

2030年の世界を考えたとき、現在のキャッシュレスの流れは確実に進んでいるでしょう。それは、単に現金を使わなくなるだけではなく、いろいろな購買情報がデータとして活用できる形になるということだと思っています。
たとえば、あるユーザーが店舗で決済をするときに「法定通貨と仮想通貨のどちらで払うのが得なのか」と悩んだ場合、「いまは仮想通貨の含み益がこれだけあるので仮想通貨で払ったほうがいい」とAIが判断して選択する世界が身近になってくるでしょう。
いま全国でさまざまな電子決済手段、いわゆる「Pay」が立ち上がっていますが、それらもここの店舗で使うのであればこのPayが得だとか、いまはキャッシュ・キャンペーンをやっているからこのPayが得だというのが必ずあるはずです。たくさんPayがあっても自分では選べないという人も、AIが選んでくれるのであれば、別にたくさんあってもいいわけです。ピッとやれば、一番得なPayを選んでくれる。すごく楽になっていくと思います。
さらに、支払い自体はサブスクリプション方式が、決済にも浸透してくると思っています。携帯のような月間定額というサービスが出るでしょう。つまり、月間3万円を支払えば、電車であれば地下鉄乗り放題、ランチも複数の店舗で食べ放題、さらにオプションでプラスアルファを払えば、特定の飲み屋は何回食べ、何回飲みに行ってもその金額でカバーできるとか。だから、定額を払えば、あとはもう支払いをしない。ピッとやっても、自分が定額を払っていることを認証するだけで生活できるような、さらに言えば指紋認証や生体認証で済んでしまう時代になっているのではないかと思っています。

プラットフォーマーのカギは「データ」

現在の金融業界は金融機関が中心ですが、そこに我々のようなFintech業者や新規IT事業者が提携などの形で参入し、それぞれの機能を受け持ち、全体として1つのサービスという形で提供していくようになると思っています。
また、Fintechベンチャーと金融機関は対立の構図ではなく、強みを活かし合った1つのエコシステムのようになっていくでしょう。それぞれの強みを持ち寄る。逆に言うと、強みがないところは、どんどん淘汰されていくことになるでしょう。それぞれが自分の得意なレイヤーを担当する組み合わせになっていくと、最後は「ユーザーのデータをどこが握り、その全体の組み合わせをどのようにデザインするのか」というところが重要になります。
何かしら自分のところに強みがないと、エコシステムに入れません。そして、エコシステム全体を管理するのがプラットフォーマーです。どこがプラットフォーマーとして全体のデザインに強みを発揮していけるのか。やはりデータがカギになってくると思っています。

法定通貨と仮想通貨の世界が近くなる

現在、仮想通貨は「暗号資産」として規制の見直しの対象になっていますが、その見直しの先では、資金調達や決済目的など、気軽にいろいろなトークンが発行されていくように、仮想通貨・暗号資産の世界が拡がっていくと思います。
今後はますます仮想通貨の世界と法定通貨の世界とをトークンを通じて行き来するようになるでしょう。逆に言うと、法定通貨と仮想通貨の世界がどんどん近づきミラーになっていく。それを自由に、柔軟に使い分けるような世界観になっていくと思います。
そのときにマネーフォワードがこれまで築いてきたプラットフォーム、金融サービスの見える化というところは大きな強みになると思っています。

リスクは、セキュリティの整備とコストのバランス

Fintechはテクノロジーだけではなく、金融の要素が非常に強くなります。ユーザーの資産や価値を預かり、それを動かすことになるので、金融の規制やセキュリティがさらに重要になってきます。
仮想通貨はいろいろな流出事件などもあり、体制を整えるところが注目を浴びていますが、やはり、仮想通貨は他のサービスよりも一段高いレベルの体制やセキュリティの整備が求められており、これを満たしていくためのコストに収益をどうバランスさせていくのかが難しく、そこがビジネスリスクになるでしょう。
体制の整備にしても、セキュリティにしても、旧来の金融機関の考え方のいいところは踏襲しつつ、最新のITで今まで以上にレベルの高いものを実現していくという発想が大事になってくると思います。それが最終的にはユーザーの利便性につながると思いますし、まさに収益とのバランスを取っていく面にもなっていくのだと思います。

地域経済やコミュニティの取組みをサポート

今後10年の間に、私はもっと地方に、あるいは地域経済やコミュニティに焦点が当たっていくと思っています。それがいま日本の一番の課題でもありますから。アグレッシブな自治体とか、面白いことをやりたいという金融機関が地域のコミュニティのレベルで、新しい取組みをどんどんやっていく流れになっていくのではないでしょうか。それを後押ししていくのが、Fintechのような新しい技術だと思っています。
もともと、ブロックチェーンや仮想通貨は分散化する流れを加速するものと考えています。今までは集中して管理していたものがどんどん分散化していく方向に技術が進歩しています。そうなってくると、中央一極集中だったものが、今度は地方に戻っていき、元気のいい地方がたくさん出てくる。それが新しいビジネスポテンシャルになっていくのではないかと思っています。トークンのようなもので活動をサポートする仕組みが出てきたり、まさに、そういう地域やコミュニティの取組みをサポートしていくものが、このブロックチェーンだったり仮想通貨だったりという役割になっていくのではないかと思います。

お金にストレスを感じない生活を目指して

マネーフォワードが目指すところは、ユーザーが毎日触るアプリです。これがスマホに入っていれば、これを使っていれば、いろいろなことがうまくいく。これに任せていれば、いろいろなことが楽になる。そこを目指しています。
お金は毎日使います。マネーフォワードのアプリを入れて、いろいろなシーンの決済や、あるいはお金を動かすところで使っていただき、そのユーザーの利用のしかたを覚え、そのユーザーにお金にまつわるもっと効率的な生活を提供していくような世界観です。今日はあそこのお店が安いから「お昼はあのお店に行った方がいいよ」とか、クーポンやキャンペーン情報も併せてリコメンドできると思います。
1つひとつの技術やアプリは、すぐにコモディティ化されていくでしょう。長い間、優位性を維持するのは難しいと思います。しかし、コモディティ化して終わりではなく、それら1つひとつをどう組み合わせて、付加価値を高め、ユーザーに気持ちのいいサービスを提供していけるか、という考え方です。
マネーフォワードは、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションとして掲げており、「お金と前向きに向き合い、可能性を広げることができる」サービスを提供することにより、ユーザーの人生を飛躍的に豊かにするような世界観を描いています。
いままでマネーフォワードで「お金の見える化」を進め、実現してきましたが、これからはそれを一歩進めて、「気持ちよくお金を動かす」とか、「お金にストレスを感じない生活」というのを提供していきたいと考えています。

神田 潤一 氏

株式会社マネーフォワード
執行役員

1994年日本銀行入行。金融機構局で主要行や外国金融機関等のモニタリング・考査を担当し、2014年より考査運営課市場・流動性リスク考査 グループ長。2015年金融庁に出向、日本の決済制度・インフラの高度化、フィンテックに関連する調査・政策企画に従事。2017年12月株式会社マネーフォワード執行役員就任。一般社団法人Fintech協会理事。

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