タクシー業界は、キャッシュレスの優等生に

タクシー業界は、キャッシュレスの優等生に

【スペシャルインタビュー】フィンテック推進を先導する立場にある、日本のトップ企業の有識者を対象にしたインタビュー記事です。ユーザー・エクスペリエンスの向上を前提にした決済のあり方とは何か?決済をスムーズ化するためのフィンテックの活用について、日本交通株式会社ならびにJapanTaxi株式会社の代表である川鍋一朗氏にお話を伺いました。

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川鍋 一朗 氏

「決済」スムーズ化のためのFintech

最近、タクシー業界におけるFintechの取組みを聞かれることが多いのですが、Fintechがどう変えるかという目線よりも、我々タクシー業界は、モビリティをどうやって良くしていくか、UX(ユーザー・エクスペリエンス)の向上を前提に改善を考えています。そうすると、「決済」にたどり着くのです。
そこで、10年ほど前に「Suica」での決済を導入しました。それまではお客様が1,000円札を出し、運転手さんが100円玉や10円玉を指先の開いた軍手で掴み、お釣りを払う、そういう世界でした。次に、2011年に「アプリ」での決済を始めました。我々が「ネット決済」と呼んでいるものですが、アプリの中に登録したクレジットカードで決済ができ、このことで実際の支払い行動がなくなりました。そして2017年、「JapanTaxi Wallet」という「QRコード決済」を始めました。既存のQRコード決済は、金額が決まった後にQRをピッとやるのですが、我々の「JapanTaxi Wallet」は、乗ったらすぐにピッとやる。お客様は着いたらなるべく早く降りたいわけです。いくらSuicaやQRが速いといっても、着いてからプロセスが始まります。それを乗ってから到着するまでの時間にピッとやっておくと、着いてからの支払い行動はなく、そのまま降りられるわけです。要するに、時間をシフトしたのです。
ただ、この端末、それなりの値段がします。設備投資がボトルネックになるのです。そこで、広告を流すことで総設備を実質無料で配れるようにしました。このように、UXの向上を考えた結果、「決済」のスムーズ化を極める。その目線しか我々にはありませんので、Fintechの技術に詳しい方々から新たな使い方の提案を期待しているところです。

「仮想通貨」は時期尚早か

「仮想通貨をタクシーで使いましょう」というご提案を一時、非常に受けていました。もちろんタクシー業界としては、いろいろな決済方法があった方がいいのですが、まだ決済が確定するのに5分くらいかかるといいます。決済に秒速が争われるタクシーでは、ちょっと待っていられないな、ということで、採用が見送られました。
ただ、そこも高速の通信が開発されていますし、おそらくあと数年すれば、実用レベルになる気がしています。
ところで、各業界で行われているような、既存のチケットやクーポンをコインやポイントに変える動きがありますが、タクシー業界には、いわゆる航空業界のマイレージみたいなものがありません。そこで、ポイントを導入して、例えばタクシーコインとしてタクシーチケットの代わりにならないかとか、決済手段を超えた何かができるのではないかなど、希望は持っていますが、如何せん、ちょっとまだ早いかなと思っています。
難しいのは、このタクシーチケット。これはこれでやはり譲渡性が高いというか、メリットがあって、根強い。たしかに微減はしていますが、逆に言うと、どんどん煮詰まっており、ここに残っているお客様は、結構、単価が高い方が多い。したがって、ボリュームは減っていますが、タクシー業界にとっての大事さというのは変わらないのです。

タクシーはデータの宝庫

タクシーの走行履歴はカーナビに送られており、渋滞解消につながっています。また、ドライブレコーダーは、移動している画像のすべてが撮れています。今は衝突時の検証という使われ方ですが、次のテーマとして、「タクシーが走れば走るほど、街が良くなる」というのを目指していきたいと思っています。
そのために、JapanTaxiは、タクシーから取得できるビッグデータを用いてモビリティの未来を創る部署として「モビリティ研究開発部」を創設しました。さまざまな企業や社会のニーズに応えられる有益なセンシングデータを
「JapanTaxi Data Platform」として収集・蓄積し、柔軟に活用できるプラットフォームを目指していきます。

「MaaS」として、タクシーの事前定額運賃を目指す

メディアも含め、モビリティ業界の各社が、さかんに「MaaS、MaaS」とおっしゃっていますが、日本ではSuicaでバスも乗れて、タクシーも乗れます。むしろ日本はMaaS先進国だと私は思っています。
ところで、地図・経路検索アプリで全部予約できればいいのでしょうが、電車が遅延した時に全部カチッと組み合わせができるのか。いずれはものすごく最適化されるのでしょうが、コンポーネントをつなぐ前に、各コンポーネントがまずIT化されていないとダメです。そういう意味で、タクシーは圧倒的にIT化されていません。また、一括予約するのでも、タクシーが定額で走れないと一括決済できません。
そこで、現在、タクシーの「事前確定運賃」を提唱しています。例えばお客様が「丸の内から渋谷まで」とアプリに入力すると、運賃とルートが事前に決まる「事前確定運賃」機能が2019年10月よりスタートしました。
アプリに行き先を入れると「1,400円」と出て、よければ「OK」。例え渋滞があったとしても、もうハラハラすることはありません。最後に、「あ~、運転手さん、そこ停めて!」と言ったら「カチッ」と上がって、ということはありません(笑)。私も1ヵ月、乗務員をやっていたのでクレームをもらう嫌さがわかるのですが、文句を言われるのだったら、上がる前に停止したい。あのシ~ンっていう、お客様が「チッ」って心の中で言っているのが、乗務員も感じますから。また、乗務員もお客様からルートのご指摘をもらうかもしれない、という不安がなくなります。どのルートを選択するかのプレッシャーが、お互いになくなるというのは、実は非常にいいことです。そうやって、「MaaS」が進んでいくと思っています。

「キャッシュレス化」が、業界にはプラスに働く

キャッシュレス化でいいますと、現金以外ではクレジットカードが圧倒的に多く、次にSuica、その他となります。もちろん現金のやり取りが減れば、タクシー強盗が無くなりますし、我々の業界では相当プラスです。現金ハンドルがなくなるというのは、ミスがものすごく減りますし、乗務員がお釣りを用意するなどもなくなり、本当にありがたいことです。ただしチップもなくなるので、電子的にチップをあげられるようなものを取り入れたいな、と思っています(笑)。
アプリなどで運転手さんにコーヒー1杯をピ~ってやると200円あげられるとか。キャッシュレス化によりヒューマンタッチの部分がなくなるのはもったいないので、そこを補完できればと思っています。
現在、タクシーのIT化はどうしても東京が進んでいますが、今年(2019年)のうちに、大阪、京都、神戸の京阪神、福岡、名古屋、札幌、あと神奈川、埼玉、千葉あたりはキャッシュレス率が上がります。なぜかというと、今まで地方のタクシーはIT化されていませんでした。端末が高かったからなのですが、ここにきて、広告の仕掛けがようやくでき、一気にIT化が始まります。それこそリープフロッグ現象(途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうこと)が起こるのです。
タクシー業界は、キャッシュレスの優等生になると思いますよ。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

川鍋 一朗 氏

日本交通株式会社 代表取締役会長
JapanTaxi株式会社 代表取締役社長

1997年ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院MBA取得。同年マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社を経て2000年日本交通に入社。2005年代表取締役社長、2015年代表取締役会長に就任。日本最大のタクシー配車アプリ『JapanTaxi』の提供や、『JapanTaxi Wallet』等の多様な決済手段の開発を手がける。

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