WBCSDとICAEWによる非財務情報に対する保証のバイヤーズガイドの公表

2019年11月、持続可能な開発のための世界経済人会議は、イングランド・ウェールズ勅許会計士協会と共同で、非財務情報に対する保証の「バイヤーズガイド」を公表しました。

2019年11月、持続可能な開発のための世界経済人会議は、共同で、非財務情報に対する保証の「バイヤーズガイド」を公表しました。

本ガイドは、前半において、非財務情報に対する保証の果たす役割や主な機能、非財務情報に対する保証業務の実施プロセス、また、合理的保証と限定的保証の違いや、保証報告書に盛り込まれる要素について説明しています。後半では、組織が目的を達成する上で非財務情報に対して保証を受けることが最も適した手段であるかを確認するためのポイントや、保証を受けるための準備について説明した上で、適切な保証提供者を選定するためのステップを示しています。

本ガイドは、保証提供者を選定する際には以下のステップで検討すべきとしています。

Step 1. 将来志向のマインドセットを持つ

組織の成熟度や情報利用者の期待の変化に伴い、どのような保証が望ましいかは変化しうることから、保証業務は継続的な改善の行程であると言える。組織が現在この行程のどこに位置しており、将来的にどこにたどり着こうとしているのかを頭に描いておくことが重要である。

Step 2. 計画する

この段階では、保証報告書の想定利用者や、想定利用者によって保証が期待されている主題、また、個々の主題に対する規準が明確になっていると想定される。さらに、具体的な保証業務の範囲を決定する上では以下のような要素を検討すべきであり、そのために内部的なレビューや事前の評価を行うことも有用である。

  • 確実な情報の収集が困難である等の理由から、保証業務の範囲から除外すべき情報はあるか?
  • 少数の重要性の低い指標に対する保証業務にならないか(保証業務では、組織内外の情報利用者にとって重要性の高い情報が幅広く対象となることが望ましい)?
  • 個々の主題に対する規準は適切か?

Step 3. 保証業務の選択肢について保証提供者と対話する

この段階では、複数の保証提供者の候補と対話し、保証の範囲や水準についての意見を得るとともに、個々の保証提供者がどの保証基準に準拠して保証業務を行うのかについて理解しておくことが有用である。

Step 4. 計画とアプローチを文書化する

決定した保証の範囲や水準について、決定した理由も含め、文書化しておくことが推奨される。

Step 5. 適切な保証提供者を見つける

適切な保証提供者を見つける上で考慮すべき要素には以下が含まれる。

知識と専門性

保証提供者が保証業務を実施する上での適切なスキルや経験を備えていることは、何にもまして重要である。したがって、保証提供者の候補に対し、保証業務における主題についての専門的知識を有しているかどうか、また、非財務情報に対する保証業務の豊富な経験を有しているかどうかについて質問することを検討すべきである。また、同業他社に対して非財務情報の保証業務を行っていることも、業種特有の知識や経験を有している裏付けとなりうる。

保証基準と評判

保証提供者が保証業務を実施する上で準拠する保証基準は何か、保証業務を実施する上で運用している品質管理システムはどのようなものか、また、保証提供者は市場で良い評判を得ているのかについて確認することは、品質を確保する上で重要である。

独立性

保証提供者は保証業務を委嘱する組織から独立している必要がある。保証提供者は保証業務を受嘱する前に独立性を評価するが、保証業務を委嘱する側としても、保証提供者が独立していることを確認しておくことが望ましい。

地理的カバレッジと文化

保証提供者は組織の主要なサイトがある地域にオフィスを有しているか、保証提供者のリソースは十分であり、文化的に上手くやっていけそうかということも検討しておく必要がある。

報酬

報酬は重要な要素であるが、保証業務の品質に影響する要素(例えば、データの収集や管理の仕組みの改善に対する助言が得られるかどうか)に照らして慎重に検討する必要がある。また、限定的保証業務において、例えば、保証提供者Aの保証手続が保証提供者Bの保証手続と比べて著しく限定されていることから、保証提供者Aの提示する報酬が保証提供者Bの提示する報酬の半分であるという場合、重要な誤りが検出されないリスクが増してしまうことにも留意する必要がある。

企業が開示する非財務情報の信頼性がますます問われるようになっていますが、非財務情報に対する保証がどのようなものであり、保証提供者を選定する際にどのような点を考慮する必要があるかについて解説したガイドはこれまで存在しませんでした。その意味で、本ガイドは、これから非財務情報に対する保証を受けることを検討している組織にとって参考になるものと言えます。

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