IFRS第17号「保険契約」の修正 - 再審議の開始

IFRS第17号「保険契約」の修正 - 再審議の開始

IASBは、適用範囲が広範な2つのトピックを議論することによって、再審議を開始した。

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基準設定主体は、不利な契約の当初認識時における再保険契約の救済措置を、保有するすべての種類の再保険契約に拡大する。
新しい保険契約会計基準(IFRS第17号「保険契約」)における2つの追加の修正案がさらに明確となった。

1.保有する再保険契約 - 不利な契約の当初認識時に生じた損失の回収:この修正の対象があらゆるタイプの保有する再保険契約に拡大された

論点の所在
公開草案においては保有する再保険契約のグループの測定に関する修正が提案されている。修正案では、企業が基礎となる不利な保険契約グループの当初認識時または当該グループへの不利な契約の追加時に損失を認識する場合、「比例的カバー」を提供する保有している再保険契約グループの契約上のサービス・マージン(CSM)を修正し、その結果として利得を認識することを企業に要求している。
コメント提出者がこの修正の目的を支持する一方で、「比例的なカバー」の定義が狭すぎるため、修正は少数の再保険契約にのみ適用されるという見解を採っているというフィードバックをIASBは受け取った。保有する再保険契約の利得の計算の提案は厳格過ぎるという懸念がコメント提出者から示される一方で、正味でコストポジションである再保険契約において収益を認識する企業が発生する可能性があることを懸念するというコメントもあった。

IASBは2019年12月に何を決定したか?
IASBは定義を変更する理由を明らかにしなかったが、修正案の適用範囲については比例的な再保険に限定されず、あらゆるタイプの保有する再保険契約に適用することを決定した。これによって、以下の場合において、企業が保有する再保険契約グループのCSMを修正し、その結果として利得を認識することになる。

  • 企業が、基礎となる不利な保険契約グループの当初認識時に損失を認識する場合
  • 当該グループへの不利な契約の追加時に損失を認識する場合

またIASBは、上記の通り適用範囲を拡大したことの結果として、利得の計算の提案の修正を決定した。修正された計算の提案は、保有している再保険契約から回収される損失の金額を以下の積によって算定することを企業に要求している。

  • 基礎となる保険契約のグループについて認識する損失
  • 基礎となる保険契約に係る保険金のうち、保有している再保険契約から回収すると企業が見込んでいる比率

またIASBは、IFRS第17号の修正は、損失が基礎となる保険契約について認識されるより前、もしくは同時に、保有する再保険契約が認識される場合にのみ適用されることを確認することを決定した。もし保有する再保険契約が基礎となる保険契約に係る損失が認識される時点で存在しなければ、修正案が対処している会計上のミスマッチは、基礎となる保険契約に係る損失の当初認識においては発生し得ない。これにより修正案の濫用の可能性を制限している。これはまた再保険契約の当初認識の前後で発行される基礎となる保険契約をカバーする再保険契約を会計処理する際にも関連するであろう。

どのような影響があるのか?また財務諸表作成者は何をすべきか?
保有する再保険契約に係る会計処理はIFRS第17号において最も複雑な論点の1つであり、議論の中でいくつかの重要な修正があったことで、保険者が検討を中止した論点であった。

  • これらの不確実性は現在解決されている。契約の境界線についての複雑性は依然として残っているが、この修正は多くが望んでいたよりも幅広く、企業が基礎となる不利な保険契約のグループの当初認識時に係る損失を認識する際、もしくは当該契約グループに不利な契約を追加する際に、企業が保有する再保険に係る利得を認識することができる状況が拡大されるであろう。保険者は当該修正をあらゆるタイプの保有する再保険契約に適用することができることになるであろう。そしてこれは会計上のミスマッチを減少させることで、保有する再保険契約の経済的効果についてより良い情報を提供することを目的としている。
  • 修正は保険契約の損失は専ら保険金請求によってもたらされると仮定している。元受保険者の損失における再保険者の持分が、保険金請求における持分とは一般的に異なる場合、状況次第で多かれ少なかれ再保険契約からの利益が認識される。

保険者は、不利な契約の再保険に関する修正を全てのタイプの再保険に対して拡大するというIASBの決定に賛同するであろう。これは元々の提案が狭すぎたというフィードバックからも明らかである。適用範囲の拡大により、保有する再保険契約の経済的な効果についてより良い情報が提供されることとなる。

2.保険獲得キャッシュ・フローの予想される回収:この修正は公開草案における提案の通り確認された。ただし、移行措置については今後のIASB会議で検討される予定である。

12月のIASBボード会議において、国際会計基準審議会(以下、IASBという)は、11月のIASBボード会議において再審議を要求しなかった6つの修正案について、公開草案において記載されていた通り最終化を進めるのと同様に上記2点のトピックを確認することによって再審議の計画を進めた。
明確化のため、IASBは保険獲得キャッシュ・フローの予想される回収おける確認された修正に関連した数点の特定のエリアを強調した。

  • 保険獲得キャッシュ・フローを規則的かつ合理的な基準で配分する際、配分方法そのものではなく、基礎となる仮定を報告期間毎に更新しなければならない。
  • IASBは「規則的かつ合理的」な基準の適用方法について定める予定はないが、予想される回収を基礎とした方法は保険獲得キャッシュ・フローにかかる資産に対し要求される減損テストに沿ったものとなるであろう。
  • 2つの減損テストが要求される:1つはグループレベルの減損テスト、もう1つは予想される更新契約へ配分された特定の保険獲得キャッシュ・フローの減損テスト。

現状、今後2か月間でIASBが対応すべき11つのトピックが残っている。

修正が確認されたもの

  • 融資契約に関する適用範囲の除外
  • 投資サービスへの契約上のサービス・マージン(CSM)の配分 - 直接連動の有配当保険契約におけるカバー単位
  • 財政状態計算書の表示 - 保険契約グループではなく、保険契約ポートフォリオレベルで区分して表示する
  • リスク軽減オプションの適用可能性 - 保有する再契約契約
  • 企業結合に関するIFRS第17号移行時の軽減措置
  • リスク軽減オプションに関するIFRS第17号移行時の軽減措置 - 移行日からリスク軽減オプションを適用できる、公正価値アプローチの適用を選択できる
  • 保険獲得キャッシュ・フローの予想される回収
  • 保有する再保険契約 - 損失の補填

IASBによる更なる検討を要する論点

  • クレジットカードに関する適用範囲の除外案
  • 保険獲得キャッシュ・フローの予想される回収に関する修正案
  • 投資サービスへの契約上のサービス・マージン(CSM)の配分に関する修正案 - 直接連動有配当保険契約ではない保険契約のカバー単位、開示及び用語の定義
  • リスク軽減オプションの適用可能性 - 当期純利益を通じて公正価値で測定する非デリバティブ金融商品
  • 提案されたIFRS第17号の適用日
  • IFRS第4号「保険契約」におけるIFRS第9号「金融商品」適用の一時的免除の期限の延期案
  • 移行規定 - リスク軽減オプションの遡及適用の禁止
  • 軽微な修正に関する修正案
  • 集約のレベルー保険契約者間において世代を超えてリスクをシェアする保険契約の年次コホート
  • 企業結合 - 決済期間中において取得する保険契約
  • 期中財務諸表
  • 特定の移行規定の修正又は軽減措置の追加

IASBが対処する可能性のある新しい論点

  • 保険契約者の税金の会計処理
  • 変動手数料アプローチを適用する保険契約で、そのキャッシュ・フローが基礎となる項目に対するリターンに基づいて変動しない契約に対するIFRS第17号B113(b)項の適用
  • 時間とともに性質が変わる保険契約

先月我々が述べた通り、IASBによって確認されている分野、特に保険獲得キャッシュ・フローや直接連動の有配当保険契約における契約上のサービス・マージン(CSM)の配分のようにシステム開発やプロセスの見直しが要求される修正箇所においては財務諸表作成者が迅速に対応することが重要である。

12月のIASBボード会議においては、8つの分野において保険業界に対して明瞭化がなされると共に重要な進展があった。特に再保険の再審議が収束に向かったことは喜ばしいことであり、結果として財務諸表作成者はこのエリアにおいて前進することができる。
Mary Trussell
KPMG’s Global Lead, Insurance Accounting Change

次のステップ

IASBは、今後2回のボード会議(2020年2月まで)において、公開草案の修正案を確認し、更なる検討が必要な論点について審議する予定である。
IFRS第4号「保険契約」におけるIFRS第9号「金融商品」適用の一時的免除の期限の延期と適用日は再審議の終盤近く(2020年2月)に審議される予定である。
IASBの目標は引き続き、2020年中頃にIFRS第17号の最終修正を公表することとされている。

英語コンテンツ(原文)

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