成長のための柔軟性 - デジタル・ディスラプション時代のオペレーショナルエクセレンス

急速に変化し競争の激化する現在の市場で、保険会社は自社のオペレーションの効率を高めるあらゆる機会を探しています。

急速に変化し競争の激化する現在の市場で、保険会社は自社のオペレーションの効率を高めるあらゆる機会を探しています。

保険会社の幹部に自社のオペレーションの効率に関する取組みについて尋ねると、必ずや計画とアイデアの長いリストの説明を聞かされることになるでしょう。事実、KPMGインターナショナルと保険業界のグローバルな基準設定機関であるACORDが実施した保険会社幹部の調査※1では、彼らの94%が現在オペレーション効率の改善に取り組んでいると答えています。

※1 保険業界におけるオペレーショナルエクセレンス - パフォーマンス、デジタル、顧客体験 -

目標に届かず

問題は、これらの幹部の半数以上(54%)が、目標に遅れを取り始めていることを速やかに認めていることです。
保険セクターのオペレーショナルエクセレンスに関するKPMGインターナショナルのレポートにおいて、私たちは行動の遅れが企業にもたらすリスクがますます増大し、ついには過当競争の市場において企業の適合性が脅かされることを発見しました。
保険会社の幹部との話し合いでは、進捗の遅れがすでに自社事業に害を及ぼしていると多くの幹部が懸念していることが示されています。

コスト競争力を失い、オペレーションの機敏性は顧客の期待を下回り、成長力が抑制されていると感じているのです。
回答者たちはまた、遅れを取っている理由を明確に認識していました。多くは自社の主要目標が明確さを欠き、企業レベルでの戦略的意思決定で合意が得られないと不満を述べました。
一部の回答者は、質の高いリソースの乏しさ、特に新たなテクノロジーと保険の業務基盤を結びつけるリソースの乏しさを指摘しました。大半は、自社のレガシーインフラおよびプロセスの状態についてある種の懸念を話しました。

加速のための統合

保険会社のオペレーション効率化の目標達成に最大の障害となっているのは、つまるところ統合性の欠落ということになります。
実際に私たちの調査では、新たなプラットフォームとインフラに数年投資した後でさえ、大半の保険会社は商品の引受、販売、オペレーションなど -- オペレーション効率化の取り組みの主な重点領域 -- のテクノロジー・プラットフォーム機能の間で、「限られた」レベルの統合しか達成できていませんでした。
興味深いことに、統合レベルの報告で最も低い傾向があったのは、人事部門と財務部門でした。高度な統合が期待される領域(保険金請求と支払業務)でさえ、保険会社幹部が統合性について低いランクづけをすることが多かったのです。

今オペレーション効率化の道程のどの位置にありますか

低い所になる実を摘む

現在の進捗レベルとペースに不満足な多くの保険会社幹部は、オペレーション効率化プログラムのアプローチを変え、早く成果の得られる方法および戦術的な自動化を優先する方向に移行し始めています。
実際に私たちの調査では、保険会社のリーダーはより基本的な要素(プロセスの標準化やレガシーシステムの修復)への集中を緩め、代わりにインテリジェントオートメーション(IA)など代替的な投資を優先させる計画であることが示されています。

多くの点でこれは朗報です。(適切な品質と統制を伴って)よりよい顧客体験を低コストで提供できる、いかなるテクノロジー・ソリューションでも、長期的なオペレーション効率化達成の鍵となるでしょう。実際に私たちの調査では、保険会社のリーダーはより基本的な要素(プロセスの標準化やレガシーシステムの修復)への集中を緩め、代わりにインテリジェントオートメーション(IA)など代替的な投資を優先させる計画であることが示されています。
しかし、これらはプロセス標準化やレガシーシステムの最新化という継続的取組みに支えられなければなりません。レガシーシステムの修復はより困難で時間がかかり、あまりワクワクする作業ではありません。しかし、速やかに結果を出し、これを組織全体にわたるオペレーション・バリューにつなげるには、これが唯一の方法なのです。

成功のためのフレームワーク

保険会社はオペレーション効率化の取組みにおいて、コストの最小化よりも価値の最大化に重点をおく必要があるというのが、私たちの見解です。オペレーション効率化プログラムでは、コスト削減は行動目標というよりも行動の結果とみなし、より無駄のない柔軟な組織の構築にまず集中するべきです。
当社のメンバーファームがあらゆるセクター、地理的位置、規模にわたり主な保険会社と協働した経験の集積から、私たちは保険会社がオペレーション効率化の取組みを軌道に戻すのに役立ちうる、堅固なフレームワークを作成することができました。

過去12~24ヵ月において、オペレーション効率化にどのように取り組みましたか。また、今後12~24ヵ月において、どのように取り組む計画ですか(回答者の比率)。

オペレーショナルエクセレンスの重要な6手段に注目するフレームワーク

  1. データ:社内外の大量データを発見、捕足、処理する能力
  2. 自動化:衝突の削減、統制の強化、効率の向上に、自動化がどこでどのように役立つかを知る
  3. 人材:異なる役割を受け入れる準備が十分あり、柔軟性に富み、将来に備えた人材へのアクセス
  4. インフラ:伸縮自在で柔軟性のあるオペレーティング・モデルに貢献する、機敏なテクノロジー・インフラの存在
  5. アナリティクス:高度なアナリティクスと機械学習を異質なデータセットに適用し、意思決定の際の情報となる新たなインサイトを明らかにする
  6. プロセス:合理化、標準化、自動化、タスクの除去により、非効率性を取り除く

多くの意思決定すべきこと

競争力を獲得するレベルまでオペレーションを効率化することは、容易ではありません。長年に亘る製品・地理的拡大、合併・買収、規制遵守義務、その他の要因により、オペレーション・システム構造が形成され、その多くは自社製または非常にカスタマイズされたものです。これらのコアシステムを他の新しいプラットフォームに統合することは、依然として難題です。
保険会社の多くはどこから始めてよいかの判断がつかないようにも見えます。意外ではありません。現在の保険会社には、従来のコスト削減から自動化やクラウド・コンピューティング、クラウドソーシングのような新興テクノロジーに基づくソリューションまで、オペレーション効率化のための広範な戦略・選択肢があります。しかし、これらの選択肢に優先順位をつけ、長期的ロードマップおよび現在の企業力と整合させることは、難しい可能性があります。

ロードマップから始める

こうした理由から、オペレーショナルエクセレンスを達成しようとする保険会社のお客様に対し、より構造的なアプローチを取るように支援することが多いです。それは保険会社を最善の状態にもたらすだけではなく、そこからさらに自立力の向上を推奨するようなアプローチです。
コストと比較してバランスのとれた顧客の期待、デジタル要件、効率性のビジョンを組織のために明確化することから始めます。発見と想像的思考を通じて、組織は重要なビジネスパターンを見いだし、価値あるソリューションと成長機会を共に創出することができます。ここからプロトタイプの作成と優先順位付けを迅速に行います。最も優れた、最大の価値があるアイデアをスケールアップし、維持し、進化させることにすべてがかかっています。

保険会社はオペレーション効率化の目標に遅れを取っているかもしれません。しかし、今日のテクノロジーは、ビッグデータやAI、機械学習を考えればわかるとおり、保険会社に途方もないチャンスを提供しています。それにはコスト削減のみならず、より豊かな顧客体験、代理店体験、従業員体験を実現することによる競争優位の達成も含まれています。
オペレーション効率化への取組みからまだ期待する成果を得ていない保険会社は、目標達成に役立ちうるすべての潜在的手段を活用する長期的戦略的視点を確実に持てるように、ロードマップの見直しを考えているかもしれません。
デジタル・ディスラプション時代におけるオペレーショナルエクセレンスの達成は容易ではありません。しかしながら、それは保険会社にとっても、その従業員、顧客、株主にとっても、非常に大きな見返りをもたらすものです。

調査結果の詳細な分析は、KPMGのレポート「保険業界におけるオペレーショナルエクセレンス」をご覧ください。

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