中銀デジタル通貨が銀行等民間事業者に与える影響・機会

中銀デジタル通貨が銀行等民間事業者に与える影響・機会

このほど日銀、ECB、BOEなど6つの中央銀行とBISは、「中銀デジタル通貨」の共同研究を進めることで合意しました。背景には、リブラ構想をめぐる議論や中国人民銀行によるデジタル中国人民元の開発の動きなどがあると言われています。本稿は、中銀デジタル通貨が銀行等の民間事業者にどのような影響・機会(チャンス)を与えるかについて解説します。

執筆者

水口 毅

ディレクター

あずさ監査法人

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本稿の目次

  1. 本稿の目的
  2. 『基礎編』 - 中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは何か
  3. 『応用編』 - 銀行等、民間事業者に与える影響や機会(チャンス)を考える
    3 - 1.リブラ、デジタル中国人民元を含めて、最近の流れを振り返る
    3 - 2.CBDCは何故注目されるのか
    3 - 3.銀行等にとっての影響は何か
    3 - 4.金融政策にとっての影響は何か
    3 - 5.国際政治、国際経済の今後との関係(「基軸通貨」についての話を含む)
    3 - 6.スマートコントラクトの可能性
    3 - 7.匿名性、個人情報の保護、国家と個人との関係への影響
    (付1)カンボジアとスウェーデンではCBDCが試験段階に
    (付2)災害・停電・通信網途絶と決済手段
    (付3)日本でキャッシュレス化は進むか

1.本稿の目的

1月21日、日銀を含む6中銀とBISが「主要中央銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の活用可能性を評価するためのグループの設立」と題する文書を公表した(→日銀ホームページの該当部分)。本稿は、中銀デジタル通貨が銀行等の民間事業者に与える影響や機会について論じる。なお、本文中の意見は、筆者の私見である。

2.『基礎編』 - 中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは何か

(1)中銀が発行するデジタル通貨。CBDCは、Central Bank Digital Currency。

(2)ビットコインやリブラと「似たもの」を中銀主導で発行し流通させるものであり、「これまでに無かったデジタルな通貨」となる。当該国の「法定通貨」の新しい形として、その国の「既存の法定通貨」と同額で交換可能となることが想定される(ただし、交換手数料の要否などについてはそれぞれの国の「仕組みの決め方」次第で多少のバリエーションが生じる可能性はある)。

(3)2つのパターンがある。ひとつは「口座型」。もうひとつは「トークン型」。

  1. 「口座型」のイメージ:
    現在、民間銀行に口座を持つ人がその銀行のインターネットバンキングサービスも契約済であれば、スマホにアプリをダウンロードし(あるいはその銀行のウェブサイトを呼び出し)、ID、パスワード、送金先口座情報、送金額を入力して、別の人の口座に「送金」することができる。
    「口座型CBDC」が実現すると、国民が基本的に全員日銀に口座をもち、日銀からインターネットバンキングサービスを受け、アプリを入手することができるようになる。すると、CBDCを使おうとする人は、スマホにアプリをダウンロードし、ID、パスワード、送金先口座情報、送金額を入力して、別の人の口座に「送金」することができる。
    これが「口座型」の基本的なイメージである。
  2. 「トークン型」のイメージ:
    現在、誰かが日銀券を財布に入れるために入手しようと思ったときは、民間銀行に出向いて預金口座の残高を落とし、同額の「お札」を得ることができる。
    「トークン型CBDC」が実現すると、誰かが「デジタル日本円トークン」をスマホ(の中のワレット)に入れようと思ったときは、民間銀行に出向いて預金口座の残高を落とし(あるいは現金と引き換えに)、同額の「デジタル日本円トークン」をスマホにチャージすることができるようになる。
    これが基本的な「トークン型」のイメージである。
    もちろん、「お札」を民間銀行から得るだけではなく、別の人からもらうこともできるのと同じように、「デジタル日本円トークン」も(実現した場合)、別の人が簡単なスマホの操作をしてくれれば、その人からもらうことができることになる(注)

(注)以上1.(口座型)2.(トークン型)のイメージは、非常に「ざっくりと」書いたもので、いずれについても、上に記したものの延長線上に多様なバリエーションを伴う進化形がありうる。
例えば、ID、パスワードによる本人認証や、送金先口座情報の入力による送金・支払先の特定は、もはや「古い」と考えられる。これらは、それぞれ生体認証(顔・指紋・虹彩等)、送金先の携帯電話番号やQRコードの読取りで代替されていくであろう。
少額の支払いには「生身の身体」だけあれば良い、あとはスマホも何も要らない、という時代が来つつあるようにも思われる。例えば、中国杭州のKFC(ケンタッキーフライドチキン)における顔認証とAlipayによる支払いの実現には、その先駆的な姿を見ることができる。

(4)CBDCを現時点で実現している国はない。
米国は、ブルームバーグなどによると、財務長官が昨年12月5日に「自分はFRB議長と話し合ったが、先行き5年間は(米国は中銀による)デジタル通貨の発行の必要は無いと考えている」と証言したとされている。
こうした中で、最も注目されるのは、中国(特にその中央銀行である中国人民銀行)である。中国が注目される理由は、『応用編』の3-5に後述する(注)

(注)なお、カンボジアとスウェーデンは、試験段階に入っている。こちらは『応用編』の(付1)に記す。

(5)今回(1月21日)の日銀の公表文のポイントは次の3点。

  1. 6ヵ国/地域の中銀とBISは、CBDCの活用可能性の評価に関する知見を共有するため、グループを設立したこと。6ヵ国/地域とは、(1)日本、(2)カナダ、(3)英国、(4)ユーロ圏、(5)スウェーデン、(6)スイスである。
  2. このグループは、CBDCの活用のあり方、クロスボーダーの相互運用性を含む経済・機能・技術面での設計の選択肢を評価し、先端技術の知見を共有すること。また、関連機関やフォーラム、特に金融安定理事会(FSB)とBIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)と緊密に連携していくこと。
  3. グループは、Benoit Coeure BISイノベーション・ハブ局長とJon Cunliffe BOE副総裁・BIS CPMI議長が共同議長を務め、参加機関の幹部で構成されること(注)

(注)Coeure氏はECBの元理事。BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)の議長を務めていた。昨年はリブラについてのG7作業部会の議長も務め、10月にその報告書をG7に提出した。
なお、今回公表された「グループ」については、「年内をめどに報告書をまとめる予定」と報道された。
 

「『応用編』 - 銀行等、民間事業者に与える影響や機会(チャンス)を考える」は、PDFをダウンロードしてご覧ください。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
金融アドバイザリー部
ディレクター 水口 毅

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