Managing technology innovation - 技術革新を管理する

本レポートでは、2019年にKPMGが行った各種調査の結果をもとにテクノロジー企業におけるイノベーション経営について考察します。

本レポートでは、2019年にKPMGが行った各種調査の結果をもとにテクノロジー企業におけるイノベーション経営について考察します。

多くの企業ではいまだに機動的な投資が進まず、複雑に入り組んだレガシーシステムとアプリケーションネットワークを使用しています。突然起こる技術の進化と陳腐化に対し、どの変革技術を採用すべきか、いつそれを採用すべきか、いかにそれらを既存システムと統合すべきか、あるいは入れ換えた方がよいのかを企業が判断することは困難になっています。
本レポートにおいてKPMGは、Technology Industry Innovation Survey、グローバルCEO調査2019等の回答を参考に、イノベーションの牽引、測定、促進、障壁克服について考察します。

ポイント

  • テクノロジー企業ではCIOがイノベーションを牽引
  • 最も一般的なイノベーション指標は市場価値
  • イノベーションの動機づけには金銭的インセンティブが最も効果的
  • イノベーションの収益化にとって最大の障壁はROIの測定
  • テクノロジー企業は、有機的戦略と無機的戦略を組み合わせることで、将来生じる可能性のある破壊的要因に対応
  • イノベーション経営の次のステップとして、自社のイノベーション成熟度の評価、イノベーションの取組みに関しての新しい投資モデル、優秀な人材の確保を検討すべき
     

イノベーションを牽引する責任を担っている役職

KPMGのTechnology Industry Innovation Surveyにおいて、イノベーションの一番の担い手として2年連続で最高情報責任者(CIO)が挙げられ、Harvey Nash/KPMG 2019年度CIO調査によると、テクノロジー企業のCIOの60%が自らの役割がより戦略的なものになっていると述べています。また、テクノロジー企業のCIOは、IoT、AI(人工知能)、ブロックチェーンから、量子コンピューターまで、多様な変革技術を導入していると報告しています。
一方、イノベーションを牽引する責任をCEOが負っているとした回答者は2%にすぎませんが、グローバルCEO調査2019では、テクノロジー企業のCEOの79%が、自ら組織の技術戦略を指揮していると認識しています。
さらにイノベーションの成否を測定する最重要指標として、テクノロジー業界のリーダーたちは市場価値、次いでROI(投資収益率)、収益成長率を挙げました。これらの回答に企業の規模や地域による大きな差異はありませんでしたが、中国、インド、韓国においては、際立った違いがありました。

イノベーションを牽引する責任を担っている役職

革新的文化の醸成

米国ではミレニアル世代が労働力の最大セグメントを構成しており、2025年には世界の労働力の75%を占めるようになることから、この世代を対象とした調査を実施しました。その結果、2人に1人が、従業員にイノベーションを起こさせる最大の動機づけに「金銭的インセンティブ」と回答しています。ミレニアル世代が成長し、生活の安定を望み、金銭的な報酬の重要性が増していると考えられます。
一方で、世界のテクノロジー企業の幹部のほとんどはミレニアル世代よりキャリアパスとライフステージにおいて進んでいる、ジェネレーションXとベビーブーマーです。彼らの回答は金銭的インセンティブとキャリアアップをほぼ同等に位置づけており、彼らが育ったビジネスの世界では、両者が連動する場合が多いことを強調しています。

従業員にイノベーションを起こさせるための動機づけとして最も効果的な方法

イノベーションの制約

テクノロジー企業のイノベーションを妨げているものとして、さまざまな要因が考えられます。新しい技術トレンド全般に対応する上での主な課題として、世界のテクノロジー業界のリーダーは、ビジネスケースの構築と、最大のROIをもたらす投資の見極めを挙げています。もっとも、あらゆる最新の技術開発に後れを取らないようにすること自体が、難しい課題になっているのです。
また、革新的な組織をうまく作り上げることと、新規売上かコスト節減の形でイノベーションを収益化することは別の問題です。実際、テクノロジー業界では現在のところ、新規売上の獲得ではなく、業務効率の改善やコスト削減のために変革技術が使われています。
加えて、挙げられた障壁の多くが複雑に絡み合っていること、サイバー脅威が絶えず増殖し、プライバシー規制が進化していることも収益化の課題となっています。新しいイノベーションはこれらを念頭に置いて設計し、将来の要件に適応できるよう柔軟性を持たせなければなりません。

破壊に対抗する

テクノロジー企業は現在、オーガニック戦略とインオーガニック戦略を組み合わせることによって、将来生じる可能性のある破壊的要因に対応しています。実際、調査回答者による各項目のランク付けの差は小さく、そのことが破壊に備える最適な万能策がないことを表しています。その一方でテクノロジー企業のCEOは、破壊的技術は成長への大きな脅威の1つだと認めながらも、自社には対応力があると自信を持っているということも回答からは読み取れます。

そこでイノベーション経営における次のステップとして、テクノロジー企業のリーダーは自社のイノベーション成熟度の評価、イノベーションの取組みに関しての新しい投資モデル、優秀な人材の確保を検討すべきであると考えます。

英語コンテンツ(原文)

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