インド源泉取引における外国企業の法人税申告義務
インドでの源泉取引における、外国企業の法人税申告義務の概要および親会社への具体的な影響と対策について紹介します。
インドでの源泉取引における、外国企業の法人税申告義務の概要および親会社への具体的な影響と対策について紹介します。
Article Posted date
16 December 2019
1.概要
近年、日本親会社がインド税務当局から、突然、法人税の申告漏れの通知を受け取る事例が増えています。海外からの文書でということもあり、所管部署である財務経理部門に届いた頃には、税務当局への回答期限が迫っていたり、場合によっては期限を過ぎている場合があり、早急な対応が必要となります。
外国企業の法人税申告義務に関する概要は以下の通りです。
1 - 1.対象となる所得
- 外国企業がインド企業/関係会社に対して役務提供やロイヤリティにより所得/売上を獲得している場合
- インド税法の規定に従えば、外国企業を含む全ての事業体において、インド源泉所得を有する場合、インドで税務申告が必要(たとえ、源泉徴収納付義務が履行されていて追加納税がない場合であっても必要)
1 - 2.必要なコンプライアンス
- 本来は、法人税の申告期限(移転価格証明書含む)は当年の11月末まで
- 関連当事者取引による源泉所得の場合には移転価格コンプライアンス(移転価格証明書、移転価格文書)の対応も必要
- 通常、税務調査の対象期間の過去6年分の提出も併せて検討することになる
- 税務申告は電子申告になっており、申告期限を過ぎた場合、提出ができなくなるため、余裕を持った対応が必要となる
2.課税強化の背景
2 - 1.外国企業への課税の強化
- インド歳入庁は外国企業のインドにおける税務コンプライアンスを強力に要請 - コンプライアンス違反の通知を送付
- 外国企業のインド源泉所得は、インド企業の源泉税申告書およびインド企業の支払時の銀行送金情報から税務署に容易に捕捉可能
- 外国企業からの回答に基づき、税務調査官は税金が適切に源泉徴収されているか、外国企業が所得を非課税としていないか等を検討
- その上、アセスメント逃れの所得がインド国外に所在している資産(金融資産を含む)に関連する所得の場合、通知は最大16年まで遡及して発効可能
3.親会社への具体的影響
3 - 1.ペナルティおよび刑事訴追
(罰則の具体的な内容)
法人税 | 罰則
(未申告)
刑事訴追
|
---|---|
移転価格証明書 |
|
最近デリー高裁(Karan Luthra社の判例)は、たとえ納税者が申告していれば還付となる場合であったとしても、申告漏れの場合には、起訴される可能性があるとする判決を下しましたので、注意が必要です。
4.親会社がとるべき対応策
4 - 1.対象取引、対象企業のピックアップ
- 日本親会社だけでなく、インド企業と取引しているすべてのグループ会社も対象となる
- 源泉徴収が必要な取引とインド関連会社が認識していない場合もある
4 - 2.インド側の税務コンサルタントの選定
- インドにおいては、通常、現地の税務専門家(勅許会計士:Chartered Accountant: CA)にサポートを依頼
- ローカルの税務コンサルタントの場合には、外国企業の税務申告手続きに不慣れな場合もある
4 - 3.申告、納税等
- 必要に応じて、納税者番号(PAN)、取締役の電子署名(DSC)の登録が必要となる
- PAN、DSCの登録申請には、会社と取締役個人の多くの情報とエビデンスが要求される。日本語のエビデンス(例えば、住所を証明する水道料金の領収書)も英文にする必要があるため、翻訳、アポスティーユ等の手続きが必要になる
- 各手続きは、現地子会社等がある場合にはサポートも期待できるが、ない場合には、現地コンサルタントとやり取りをしながら進めることとなる
- 申告、納税(還付)手続きは近年電子化されたため、過年度の取り扱いについて検討が必要となる
- 税務申告に伴い、税務調査の対象となり、インド税務当局への対応も必要となる
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
グローバルジャパニーズプラクティス
シニアマネジャー 合田 潤