チリ:多国籍企業及び投資家に影響を及ぼす税制案を提案

11月初旬、チリ政府及び主要野党は、チリで発生している反政府デモ及びストライキに対応するため、税収増のための税務法案の合意に達しました。

11月初旬、チリ政府及び主要野党は、チリで発生している反政府デモ及びストライキに対応するため、税収増のための税務法案の合意に達しました。

本法案は、チリ国会に提出され法的検討事項などの討議が行われています。

概要

変更案は次の項目が含まれています。

  • 個人所得税に適用される新税率区分(最高税率40%)
  • プライベート投資ファンドへの特別税制の要求事項の強化
  • 法人税税額控除の現金還付を得るための欠損金利用を廃止
  • 大企業に対するPartially integrated corporate tax systemの継続
  • 投資促進に資するための税務インセンティブである固定資産の取得に関する即時費用化を容認する条項の延長

詳細

チリで事業活動を行っている多国籍企業及び投資家に影響を及ぼす法案は、次の事項が含まれています。

  • 月額所得が1,500万チリペソ超(約20,000米ドル)の納税者に対して、40%の課税をする新税率区分を創設。
  • 優遇税制の便益獲得のためのプライベート投資ファンドに対する要求事項の厳格化、公的投資ファンドのキャピタルゲイン免税の適用には、マーケットメーカーとの契約が“実質的に取引される”という要件を遵守する場合に制限。
  • 繰越税額控除額があるチリ関連企業からの配当の受取に対して欠損金の使用による法人税還付を容認する条項を廃止。当還付制度の廃止は納税者の事業所得に対する欠損金控除及び利益分配上株主の納税に対する税額控除にも影響はしない。本提案では、還付ルールを廃止する法案が次の期間(4年間)にわたり、段階的に行う。

 

2020年 90%
2021年 80%
2022年 70%
2023年 50%

 

  • 前述の提案では、partially integrated corporate tax systemが依然として、大企業に対しては適用される。当該制度では、課税所得を基礎として算定される法人税納付額の65%に制限された税額控除は非居住の株主又は国内の個人株主への配当に対する源泉所得税計算時に利用可能である。政府原案では、全額税額控除とすることを要請していたが、今回の提案により、中小企業(年間収益がUF75,000※1(約280万米ドル)以下)のみが適用となる。この結果、保留となっている米国チリ間の租税条約が批准、適用されない限りは、米国株主に対する全額税額控除の利用は2021年12月31日に終了する。租税条約締結国※2の居住者である株主は、全額税額控除が可能であるということは継続される。
  • 投資インセンティブとして予定されていた国内での投資のために取得する固定資産価額の50%の即時費用化は2021年12月31日まで延長。


※1UFとはUnidad de Fomentoの略称で、消費者物価指数の変化率に応じて、調整される通貨単位でチリ中央銀行で公表されている。

※2現在はカナダ、メキシコ、南米諸国、スペイン、フランス、英国、中国、韓国、日本、オーストラリアなど20を超える国と締結。

その他の事項

  • 税務上の価額が4億チリペソ(約535,000米ドル)以上の居住用財産を所有する納税者に適用される不動産課税のうち、9億チリペソ(約120万米ドル)を超える部分に対する税率が段階的に増加(0.075%から最大0.275%まで)。
  • 中小企業が利用可能なフロー・スルー税制ではキャッシュフローに基づき、簡素な会計制度を利用して、個人所得税のみが対象。

今後の予定

当該提案の詳細な内容が確定次第、当該法案は下院で既に承認された税制改正案に含まれることになります。
税制改正案の他の条項(OECDのBEPSへの取組み、デジタルサービスへの付加価値税課税及び恒久的施設(PE)の定義拡大など)は、引き続き法案に残されています。
 

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

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