押し寄せる声 - 資産運用規制の進化

押し寄せる声 - 資産運用規制の進化

本稿では、投資家や消費者団体ほか、資産運用業界と規制当局がさらされる圧力と、それにより影響を受ける規制アジェンダ、企業が求められている抜本的な改革について考察します。

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この10年で資産・ファンド運用業界は大きく成長し、世界の運用資産は80兆ドルを超えるまでになっています。世界の金融システムにとっての資産運用の重要性に対する認識が高まるなか、業界も、それを取り締まる規制当局も、これまで以上に注目を集めています。要求の厳しい投資家や消費者団体、声高な政治的・経済的ニーズ、新たなテクノロジーの急成長など、業界と規制当局はさまざまな「外部」の声からの圧力にさらされるようになっています。本稿では、それら圧力が直接影響を与える規制アジェンダと業界に対して高まる期待、考え方や投資商品・サービスにおいて企業に求められる抜本的な見直しについて考察します。

ポイント

  • 投資家の懸念、フィンテックの発達などといった新たな圧力は、規制当局の管轄業務の変更や構造にまで転換をもたらしている。
  • 政策規制当局のシステミックリスクの調査は流動性とレバレッジに重点を置き、資産運用業界の規模の拡大が政策論議を激化させている。
  • 世界の規制当局においてガバナンスとコンダクトは主要な関心事であり、金融サービス業界内の個人の行動に責任を持たせるべきだという要望が世界中で高まってきている。
  • 規制当局は、投資家に課される金額と投資会社が得る利益のバランスを探り、数値や開示の書式のみならず、開示されるコストの水準、ベンチマーク(指標)の利用についても調べている。
  • 投資ファンドのクロスボーダー販売での摩擦は、ブレグジットが国や地域に大きな影響を与えている。
  • 慌ただしい動きを見せる年金市場は、資産運用会社や投資ファンドに新たな機会をもたらす一方、条件や制約が増えているケースもある。
  • 資産運用機関の投資プロセスや戦略に、環境・社会・ガバナンス(ESG)要因への配慮は今や必須となっている。
  • 規制当局は、ますます発展するフィンテックをどのように監督・規制するかについて再考している。

構造の転換、アジェンダの進化

規制当局は、投資家の懸念、社会目標、フィンテックの発達、経済的・政治的必須事項といった「外部の声」からの増大する新たな圧力にさらされています。このような外部の声に対し、グローバル、地域、各国レベルの規制当局や監督当局がアジェンダや仕事のやり方を適応させていく中で、その管轄業務を変更し、既成構造を大きく変えています。
その一方で多くの規制当局は、自らの目的やリソースの重点を定め直し、新たな規則づくりから退き、金融危機後の改革の実行と影響をレビューする事業へと移行を進めています。このように既存の規制の見直しが進むなかで、望ましい成果をあげていない現行の規制要件を削減または撤廃する機会を特定することができるのです。

システミックリスク:対立する声

金融危機以降、政策決定者と規制当局にとってシステミックリスクの特定と抑制が優先課題となっています。レバレッジの測定と監視がグローバルレベルで一貫していないことは、システミックリスクの監視に困難な課題をもたらしています。結果としてファンド運用会社は同じファンド会社に対してさまざまに異なる報告書を作成し、異なる計算を行う必要があるかもしれません。各国はシステミックリスク対策を講じ、規制当局がその管轄業務に鋭い目を向けています。
リスクフリーレートの移行と金利指標の改革も、金融市場全体に大きな影響を及ぼすと予測されています。しかし首尾よく移行できれば業界の新たな成長となり、新たな政策論議が促されるでしょう。

ガバナンスとコンダクトの風潮の広がり

ガバナンスとコンダクトは、世界的に規制当局の主要な関心事であり、さらに、カルチャーとコンダクトの影響について広範に考えることを求められています。企業は株主、従業員、顧客の利益のバランスをとる必要性が生じており、コンダクト規制の導入や規則の順守など、各国が同じ方向へと進んでいます。
一方、金融サービス業界の個人とその行動に責任を持たせることを要求する声の世界的な高まりを受け、コンダクト規則は該当者に責任を負わせることができるようになりました。
またダイバーシティ、報酬、スチュワードシップは、アウトソーシングや委任慣行、マネーロンダリング、市場濫用の防止、販売要件とともにアジェンダに載せられています。

コストと手数料:期待に釣り合わない?

投資家に課されて妥当な金額と投資会社が得る利益とのバランスというものがあります。規制当局はその手数料とコストの開示に懸念を抱き、ファンド、販売会社、資産運用会社によるその開示に注目しています。商品によって大きく異なる手数料の問題についても明らかになっています。
また規制当局は次第に数値や開示の書式のみならず、開示されるコストの水準にも注目するようになってきています。よく目にする開示は長いばかりで要領を得ず、将来の見通しは過去の運用実績に依拠しており、現行のものでは投資家の誤解を招きかねません。さらに退職貯蓄、価値評価の結果やクローゼット・トラッカー、実績報酬についても開示の要件として規制当局の注目を集めています。ベンチマーク(指標)の利用についても詳しく調べており、その運用実績について開示することなどを義務づけている国もあります。

市場:閉ざされる門もあれば、開かれる門もある

2018年の報告書「別々の道を行く?資産運用規制の進化」で指摘した通り、投資ファンドのクロスボーダー販売には摩擦があり、その状況はいまだ変わっていません。ブレグジットが英国と他のEU加盟国のクロスボーダーのフローに及ぼす影響は大きく、EU法制における第三国既定の見直しの重要性を高めることになりました。委任についての監督も厳格化されつつあり、米国やアジアの企業もその影響を受ける可能性があるでしょう。このような状況でもアジアのファンドパスポートの利用は依然として低水準ながらも、漸増しています。また引き続き新興市場は自国の資本市場を外国企業や外国投資家に開かれ、二国間協定も増加しました。
一方、年金市場に起こった慌ただしい動きは、資産運用会社や投資ファンドに新たな機会をもたらしています。しかし各国で新たな条件や制約、規制による義務が増えているケースもあります。

ESG:投資家の要求が金融機関を動かす

環境配慮(climate-aware)投資や炭素規制を求める声に加え、従業員、顧客、その他のステークホルダーに対する倫理的な振る舞いへの要望も高まっています。環境・社会・ガバナンス(ESG)要因への配慮は今や必須であり、厳しい市場環境にもかかわらず、ESGファンドに対する需要は2018年に急増し、他の多くの資産タイプからの流出が起きました。
主要地域でESG投資への増加傾向が見られ、資産運用機関の投資プロセスや戦略に、投資家の声が多大な影響を及ぼすようになっています。一部の国・地域の規制当局は、ファイナンスの主流の重要な構成要素になるであろう領域のリーダーになるべく、遅れずに付いていこうとしています。ただし、各国の対応はまちまちで、法律がESG基準の採用を妨げる可能性があります。

フィンテックについて:規制当局のジレンマ

ますます発展するフィンテック(FinTech)は、すでに強力な規制の外部推進要因となっています。規制当局は、効率を向上させ、消費者の金融サービスへのアクセスを支える新興産業を支援し、その成長を後押しすることを求められている一方で、サイバーセキュリティーやデータ保護などの新たに高まるリスクへの懸念もあり、ジレンマを抱えています。そこで規制当局は、フィンテックの新規参入者と、その発展を取り込もうとする既存ビジネスの双方をどのように規制するかも再考しています。またほとんどが紙ベースで、直接対面する世界で作成された既存のコンダクト規則は、このデジタル時代に、目的に適合するかどうかも疑問です。フィンテックの監督と規制に関するKPMGの報告書「Regulation and supervision of fintech」は、社会、消費者、カウンターパーティのますます高まる期待に対する規制当局の対応について説明しています。

英語コンテンツ(原文)

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