離陸するモビリティ - アーバンエアモビリティ、いよいよ浮上 -

いよいよアーバンエアモビリティがプレミアムモビリティサービスとして浮上してきました。実用化は目前です。今後の展開についてKPMGが考察します。

いよいよアーバンエアモビリティがプレミアムモビリティサービスとして浮上してきました。実用化は目前です。今後の展開についてKPMGが考察します。

小型の電動垂直離着陸機(eVTOL)の実用性の高まりとともに、アーバンエアモビリティ(都市航空交通:UAM)が現実のものとなりつつあります。KPMGでは、UAMのサービスが整うであろうメガシティを割り出し、2050年までにUAMは年間4億人、世界の国内旅客輸送の4%を担うと分析します。拡大するUAM市場で、未来の都市交通がどのように実現していくかについて考察します。

ポイント

  • 実用性の高い小型eVTOLの誕生で、新しいモビリティサービスはエアポートシャトルに始まり、エアタクシー、そして地域的な都市間交通の選択肢として台頭する。
  • UAM市場の進化と成長は、速度と利便性、料金の手頃さ、適切なルートエリアという、相互に関連する3つの要素によって促進される。
  • UAMサービスが根付く最大の市場の多くは、東京・北京・上海・ソウルなど、人口増加と経済成長が見込めるほか、道路の混雑状況の悪化も予測されるアジアのメガシティにある。
  • 世界中の主要都市でUAMサービスが拡大していくと、地上輸送と空中輸送をまとめたエコシステムにおいて、UAMが1つの要素になると見込まれる。
  • UAMの実現は、新登場の航空テクノロジーやデジタルテクノロジーがUAMを21世紀の交通技術へと変貌させ、他のプレミアムモビリティサービスと競合できる存在にすることにある。

モビリティは空へ

eVTOLの航空機設計は複数の電動回転翼を使用するため稼働と維持管理が経済的で、その静音性の高さにより多くの離着陸場を利用できます。また自律制御で労働コストの削減が可能になり、費用面でも大きな競争力を持つことになるでしょう。UAM市場は、都市内エアポートシャトルに始まり、エアタクシー、そして地域的な都市間交通へと3段階で成長します。2050年には、UAMが国内旅客輸送の4%を占有すると予想します。そのため、UAMの機器およびサービスの開発者は短期的には地域のプレミアムモビリティ市場に、長期的にはコミューターおよび都市間サービスをターゲットに設定しています。

どうしたら地上から空に行ける?

基本的なテクノロジー、インフラストラクチャー、規制環境が成熟すると、最終的には速度と利便性、発着地・乗客/ルートの密度に加え、「高級過ぎない」料金が重要なカギとなり、UAM市場の進化と成長が促進されるようになるでしょう。現在その価格としてハイヤーの料金レベルを想定しています。ただし自律的な交通手段の導入により、2030年代までの路上走行の競争相手の価格が60~70%下がる可能性があり、KPMGのモデルではその影響も考慮しています。

UAMはどこを飛ぶ?

UAMサービスが根付くと予測される都市は、人口密度が高く混雑状況が顕著で、比較的裕福な旅行者が多数存在する場所でスタートすると考えられ、KPMGの調査では世界中の約70都市を特定しています。中でも人口増加と経済成長が見込める東京、北京、上海、ソウルのようなアジアのメガシティに最大の市場があることがわかっています。

UAM進化論と市場規模

航空宇宙・防衛企業や、UAMに参入しようとしている企業にとって重要なことは、UAMがいつ現実的になり、ライドシェアの選択肢として登場するかということです。その成長は出張者や価格感度の低い顧客を対象に使用するルートで2030年頃より使用が始まり、2040年頃には富裕層中心のプレミアムモビリティ市場へ、そして2050年以降は都市間単距離市場へと拡大すると予測します。このような進化が世界中の主要都市で起こることで、やがて地上輸送と空中輸送をすべてまとめたエコシステムにおいて、UAMが1つの要素になることが見込まれます。そこでKPMGは、世界中の都市で想定される経済と移動時間の制約に基づき、UAMの需要がどのように増加するかを理解するための1つのモデルを開発しました。

UAMの実現へ

世界中の大都市とその周辺地域には、渋滞をはじめとする移動に関する課題が多く、そのためUAMサービスを必要とする環境があります。そこでUAMの実現のためには、運用側と製造側の2つの支持層による行動が必要です。公共機関・民間企業を問わず参入する多くの団体がそれぞれ協力し、eVTOLの航空機設計やその他テクノロジーを完成させ、規制ルートの明確化や安全で便利な航空輸送オプションの実現のために尽力しています。これまでもヘリコプター輸送サービスは世界中で利用されており、UAMは決して新しい概念ではありません。しかし新登場の航空テクノロジーやデジタルテクノロジーがUAMを21世紀の交通技術へと変貌させ、他のプレミアムモビリティサービスと競合できる存在へと高めてくれるでしょう。そして、ここから未来の都市交通は始まるのです。

英語コンテンツ(原文)

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