小売業界におけるインバウンド市場

小売業界におけるインバウンド市場

「小売りの明日」第8回 - 2020年の東京五輪後にも需要が見込まれるインバウンド(訪日外国人)市場について、政府の動向や小売業界の現状なども鑑み、有効な情報発信源、今後取るべき対応等について考察する。

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2020年の東京五輪をピークにインバウンド(訪日外国人)需要は減っていくという説があるが、果たしてそうなのだろうか。結論から言えば、災害や円高など観光に与える大きなマイナス要因が起きない限り、2021年以降も訪日外国人数は増加する可能性が高い。
他国の事例だけを根拠に断定できるわけではないが、この20年間、すべての五輪開催国で開催年より外国人観光客が増加している。日本が開催国になると発表された2013年に約1000万人だった訪日外国人数は、リオデジャネイロやロンドン、北京、アテネと同じような道のりを辿れば、2020年に約1500万人になるという予測になる。しかし、実際は2017年の時点で2800万人を超え、政府も2020年の目標を4000万人へと上方修正し、2030年には6000万人という観光立国としての旗を掲げた。

政府は、旅行での消費額についても2032年に8兆円、2042年には15兆円をめざす、としている。8兆円は国内のコンビニエンスストア全店舗の年間売上高の約10兆円に匹敵する規模で、小売業界における2021年以降のインバウンド市場は、もはや無視できないどころか、より重視しなければならないものになる。
つまり、2021年以降のインバウンドに対する準備はすでに待ったなしで、言語対応のほか、交通インフラ、店舗オペレーション、人材採用、決済システム、商品開発、体験をはじめとした価値の提供、各国への情報発信など、やるべきことは山積みだ。
ある総合スーパー(GMS)では、電子決済サービスの「微信支付(ウィーチャットペイ)」と「支付宝(アリペイ)」を導入した店舗の対観光客売上が、未導入店舗に対し20%増を実現したという。
大阪市の黒門市場では、店頭調理型で実演販売を見るだけではなく調理の体験までを提供し、市場全体が活気あるイベント型フードコートのようになっている。高齢な店主もサービス精神を旺盛にして片言ながら英語を駆使、店頭販促(POP)は英語と中国語で表記されている。親切な対応と体験が支持され、今や訪日客で毎日が年末の東京・上野のアメ横のような様相を呈している。

また、情報発信源として重視すべきなのは、自国に日本の良さを発信する在日外国人のインフルエンサー活用だろう。外国人向けの日本旅行情報サイト「JapanTravel.com」や北海道の情報に特化した「World loves Hokkaido」など、SNS(交流サイト)型のインバウンドプロモーションの利用価値が今後さらに増大していく。
流通業界で常に声高に叫ばれる「顧客体験の最大化」とは、まさに外国人観光客にも当てはまる。日本人の消費とは別のニーズを把握し、対応する準備を進めるべきだ。さらに、海外観光客に対する顧客体験の最大化を実現して、日本ファンをどれだけ増やせるか。これが政府の目標を達成できるか否かを左右する重要な役割を担っている。

日経MJ 2019年1月14日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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小売りの明日

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