Rex W. Tillerson氏との炉辺談話 - 2019 Global Energy Conference

第69代米国国務長官、エクソンモービル社前会長兼CEOであるRex W. Tillerson氏が、2019年KPMG Global Energy Conference(GEC)に登壇しました。

第69代米国国務長官エクソンモービル社前会長兼CEOであるRex W. Tillerson氏が、2019年KPMG Global Energy Conferenceに登壇しました。

Rex W. Tillerson氏

誠実、忠実、尊敬、奉仕

Tillerson氏がこれらの原則をはじめ、多くを学んだのはボーイスカウトである。ボーイスカウトは、彼が所属した組織で唯一エクソンモービル社よりも長い。

「私生活またはビジネスにかかわらず、私が行う決断はすべてボーイスカウトの基本理念に照らしてきた」とTillerson氏。「そして、今まで後悔したことはない」

2019年KPMG Global Energy Conference(GEC)におけるRegina Mayor(KPMG米国 エネルギー・天然資源セクターリーダー、同セクターグローバルリーダー)との長時間にわたる対談の間中、Tillerson氏は、エクソンモービル社のトップにまで上り詰め、米国の国務長官に任命されたことを含め、難しい決断に迫られた際、助けとなり、また自身の成長を長年促してくれた若い頃の教訓に度々触れた。

「私が受けた最も素晴らしいリーダーシップ教育はボーイスカウトだ」と彼は言う。「 それらの教訓は今でも常に私のなかにある。今日私を形作っているほぼすべての要素はそこで養われた。私は、それを人生の経験のなかにうまく取り入れてきた」

異なる世界の秩序

「しかし、今日、米国が両極端な方向へと進み、長期にわたって成立してきた同盟関係を潜在的に害するような状況は普通ではない」とTillerson氏は言う。「わが国が多くの同盟と友を有する国であることが、安全保障にとって最大の強みであり、最も重要な要素であるということを、米国人は忘れてはいけない。我々と敵対するロシア、中国、北朝鮮、イランには同盟や友が存在しないのだから」

Tillerson氏は、ノルマンディー上陸作戦75周年記念前夜であることを踏まえ、同盟の重要性について触れた。「 我々すべての人々にとって、世界にあれほど悪いことが起き得ることを忘れてはならないという教訓になっていることを願っている。もし友人があなたのそばにいてくれることを本気で望むのであればね」

文化的な変化を伴う危機

Tillerson氏は、エクソン社時代に地政学および文化に関する深い知識を得た。彼は1975年、テキサス大学のオースティン校卒業後、すぐに同社にプロダクション・エンジニアとして就職した。そして、彼の責任は年々重いものとなっていった。

その後に発生したエクソンバルディーズ号原油流出事故は、エクソン社を永久に変えることとなった。1989年の事故発生時、Tillerson氏は同社の米国支社における生産部門のゼネラル・マネージャーだった。「それまで、我々のビジネスは、石油、ガス、そして石油化学製品だと思っていたが間違っていた。我々のビジネスはリスクマネジメントそのものだったのだ」

当時、エクソン社は原油流出に対し行動することを求められたが、適切なリスク管理ができていなかった。

「我々は自分たちが適切なプログラム、バナー、スローガンを有し、トレーニングを実施していると思っていた。しかし、我々になかったものは正しい企業文化だった」と彼は振り返る。「我々は何かを訓練することと、それを体現化することのつながりを理解していなかった。それはただ考え方と生き方の問題であるのに」

事故は、オペレーション・インテグリティ・マネジメント・システム、またはOIMSを同社が構築するきっかけとなった。

その後、合併により、Tillerson氏はエクソンモービル・ディベロプメント社の副社長となり、2004年にはついにエクソンモービル社の社長兼取締役に就任する。彼は会長兼CEOになるとは夢にも考えておらず、そう願ったことさえなかった。しかし、「企業は困難な役割を社員に与えることにより才能を伸ばすという育成方針を掲げていた。自らの信念が自らを形成するのだ」と彼は言う。

「神様が与えてくれた自分のスキルと能力を伸ばし続けるのをやめてはならない。私は今でも日々研鑽している」

やがて、Tillerson氏は最終候補者にまで残ることとなる。その時でさえ、「他の人が勝つと思っていた」と彼は言う。2006年1月、彼は会長兼CEOに選任された。

「騒がない」ワシントンでのアプローチ方法

Tillerson氏は定年退職を控えていた頃、トランプ大統領から国務長官のポストへの要請があった。「私は妻に電話をかけた。最初に彼女の口から出た言葉は、『だから神様のあなたへの試練は終わっていないと言ったでしょ。あなたはこのために25年間修行してきたのよ。あなたは彼を助けるべきよ』だった。だからそうした」

その後、エクソンモービル社の厳格な慣習、規則そして信頼性に支えられた企業文化とは対照的に、国務省は「あらゆるマネジメント構造およびプロセスがほぼ欠如している」巨大な組織であることをTillerson氏は知ることとなる。「誰がどの案件に対して決定権限を持っているのかを特定するのは非常に困難だった」

再構築の取組みに対し、省内から強い反感が出たときには、Tillerson氏は、経験はあるが就業年数が浅い職員にアプローチするという、エクソンモービル社時代に有用であった方法を用いた。

「問題が何かということを認識している者を数人集め、チームを形成して対応させた。彼らは問題解決に対するモチベーションがある。なぜならこれから20年も25年も組織にいて、解決による恩恵を受けるのは彼ら自身だからね」

また、Tillerson氏は、マスコミからの執拗な監視も含め、省外からも大きな圧力を受け続けていた。彼は他の多くの政治家とは対照的に、エクソンモービル社時代に有効だった「騒がない」方法でメディア対応を行った。「大いなる野心を持った多くのワシントンの人々とは異なり、私は選挙をするのでもなければ、そもそも政治家でもない。本を書こうが演説をしようが関係ないし、お金も必要なかった。だからワシントンではメディアと繋がることで多くの人々が欲しがる名声も私には必要なかった。もし彼らがメディアに反応し、対応する時間の半分でも課題解決のために用いたのなら、より多くのことを成し遂げられるだろう」

「神様はまだ離してはくれない」

しかしながら、Tillerson氏は、自身の取組みが完了するのを見届けるための十分な時間が奪われてしまうことになる。2018年3月13日、自身のキャリアを通して初めてTillerson氏は首になったのだ。@realDonaldTrumpのツイートによって、だ。
「私はソーシャルメディアのアカウントを持ったことがない。今もそうだが、誰もフォローすることができない。だから、私が首になったときは、チーフ・スタッフが電話でそのことを伝えてくれた」

解任後、Tillerson氏は妻に「いったいこれは何だったのだろう」と聞いたという。すると彼女は、「神様があなたを家に戻したのよ」と返事をしたそうだ。Mayorが、彼女が嬉しそうだったかと尋ねると、「そうだね。でも『神様はまだあなたを離してはくれないわよ』とも言われた」とTillerson氏は答えた。

国務長官を務めたことを振り返り、再び同じ任務を引き受けるかと聞かれると、「ためらいなく答えは『イエス』だ」と彼は述べた。

「ボスが誰であれ、国に仕えるチャンスを絶対に逃してはいけない。なぜなら、それは米国人のために働くことだからだ。それ以上に光栄なことがあるだろうか」

英語コンテンツ(原文)

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