会計・監査ダイジェスト 会計及び監査を巡る動向 2019年9月号

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

1.日本基準

監査関連

【最終基準】
金融庁、監査報告書における意見の根拠の記載及び監査人の守秘義務の明確化のための「監査基準の改訂に関する意見書」等を公表

金融庁は2019年9月6日、企業会計審議会が取りまとめた「監査基準の改訂に関する意見書」、「中間監査基準の改訂に関する意見書」及び「四半期レビュー基準の改訂に関する意見書」(以下、「本意見書等」)を公表した。本意見書等の主な内容は次のとおりである。

  • 監査の信頼性を確保するための取組みの1つとして、財務諸表利用者に対する監査に関する説明・情報提供を充実させる必要性が指摘されていることを受け、監査報告書における意見の根拠の記載や監査人の守秘義務に関して明確化されている。
  • 昨年7月の監査基準の改訂において実施された報告基準に関わる改訂事項について、中間監査基準及び四半期レビュー基準についても同様の観点から改訂が実施されている。

本意見書等では、監査基準については2020年3月決算に係る財務諸表の監査から、中間監査基準については2020年9月30日以後終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から、四半期レビュー基準は2020年4月1日以後開始する事業年度に係る四半期財務諸表の監査証明から、それぞれ適用することとされている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2019年9月10日発行)

【公開草案】
金融庁、内部統制報告書の記載区分等の改訂のための財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準等の改訂案を公表

金融庁は2019年9月6日、企業会計審議会監査部会が取りまとめた財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する公開草案(以下、「本公開草案」)を公表した。本公開草案の主な内容は次のとおりである。

  • 2018年7月に実施された監査基準の改訂において、財務諸表監査における監査報告書の記載区分等が改訂されたことに伴い、内部統制監査報告書についてもこれに対応する記載区分等の改訂を実施することが提案されている。
  • 平成26年会社法改正で監査等委員会設置会社が新たに導入されたことについて対応を図るため、「監査役又は監査委員会」の文言を「監査役等」(監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会)に更新することが提案されている。

コメントの締切りは2019年10月7日である。本公開草案では、2020年3月31日以後終了する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用することが提案されている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2019年9月10日発行)

日本基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(日本基準)


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2.国際基準

会計基準等の公表(国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会)

【最終基準】
IASB、「金利指標改革(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂)」を公表

IASBは2019年9月26日、「金利指標改革(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂)」(以下、「本改訂」)を公表した。
本改訂は、金利指標改革に伴う金利指標の変更にかかわらずヘッジ会計を安定的に適用するための救済措置を設けている。

LIBORの不正操作問題等を契機とした金利指標改革により、既存の金利指標の長期的な存続可能性に関する不確実性が増大し、財務報告に与える影響が懸念されるようになったことを受け、IASBは2つのフェーズに分けてこの問題に取り組んだ。本改訂は、既存の金利指標を代替的な金利指標に置き換える前の期間に生じる財務報告への影響(ヘッジ会計への影響)に対処するものであり、既存の金利指標を代替的な金利指標に置き換える時に生じる財務報告への影響(ヘッジ会計を含む広範な影響)への対処については、審議が継続している。

なお、IFRS第9号の適用後もヘッジ会計についてはIAS第39号を継続適用することが認められているため、本改訂はIFRS第9号とIAS第39号の両方を対象としている。

本改訂の主な内容は、以下のとおりである。

  • 予定取引をヘッジ対象とする場合の予定取引に係るキャッシュ・フローの発生可能性の評価を行う際に、今般の金利指標改革による金利指標の変更はないとみなす。
  • ヘッジ対象とヘッジ手段の将来に向かっての相殺関係の評価を行う際に、今般の金利指標改革による金利指標の変更はないとみなす。
    また、IAS第39号におけるヘッジの有効性の評価ではヘッジの実際の結果が80%から125%の範囲内にあることが求められているが、これを満たさない場合でもヘッジ会計の中止は要求されない。
  • リスク要素が独立して識別可能でなければならないという要求事項はヘッジ関係の開始時にのみ要求し、ヘッジ対象期間を通じた評価を不要とする。
    いわゆる「マクロヘッジ」では、この要求事項は当初指定時点にのみ要求され、ヘッジ関係の再設定時には要求されない。
  • 金利指標改革がもたらす不確実性の懸念が解消した時点で本改訂の要求事項の適用を終了する。また、本改訂による措置を適用したヘッジ関係について、一定の開示が要求される。

本改訂は、2020年1月1日以降開始する事業年度から遡及的に適用される。また、早期適用が認められる。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2019年10月3日発行)

IFRSについての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(IFRS)

 

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3.修正国際基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

修正国際基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(修正国際基準)

 

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4.米国基準

会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))

【公開草案(会計基準更新書案(ASU案))】
(1)ASU案「参照金利改革についての軽減措置」の公表(2019年9月5日 FASB)

LIBOR等に代表されるInterbank Offered Rates (IBORs) を参照する契約及び他のアレンジメント(以下、「契約等」)がマーケットには大量に存在しており、これらの契約等は現在進行中の参照金利改革を受けて金利の参照先がIBORから代替リスクフリーレートに変更されることが予定されている。
会計上は、そのような契約変更が、既存の契約の消滅と新契約の認識とみなされるのか、もしくは既存の契約の継続とみなされるのかの判断が必要となる。しかしながら、市場参加者からは、対象となる契約等が大量に存在し、また当該契約変更は限られた期間内に行われることから、それらの契約変更の会計上の扱いを現行の会計基準に基づき検討することは負担が大きく、また、参照金利改革はマーケット全体に影響するものでありこれに基づく契約変更は企業の本来の意図に基づき行われるものではないとの指摘がなされていた。また、参照金利の置換えは、ヘッジ会計についても、意図せざる形でヘッジ会計の中止を余儀なくされる可能性があり、これは企業自身が依然としてヘッジが有効と認識してヘッジ戦略を継続しているときに財務諸表にその実態が反映されなくなることから、市場参加者から懸念が表明されていた。

ASU案は、参照金利改革もしくはその影響を会計処理する際の潜在的な負荷を軽減するためのガイダンスを提供し、期間限定で、そのガイダンスの選択を容認するものである。当該ASU案は、参照金利改革によって影響の受ける契約を有するすべての企業に軽減措置を提供する。その主な提案内容は以下の通り:

  • 参照金利改革の結果として生じる契約変更については、(既存契約の消滅と新契約の認識ではなく)既存契約の継続として扱い、変更の影響は将来にわたって取り込むなどの便法を提供することが提案されている。便法の詳細は対象の契約・取引がどの会計基準(トピック/サブトピック)の適用を受けるかにより異なるが、便法を選択した場合は同一会計基準のもとでの契約・取引には一律に適用しなければならない。
  • 参照金利改革の結果として生じる契約変更及びそれを受けて派生的に生じるヘッジ会計上の各種取扱いの変更等については、ヘッジ指定の中止をもたらすものとしては扱わないことを容認し、かつ、公正価値ヘッジ、キャッシュ・フロー・ヘッジの別に、参照金利改革による影響を軽減するための措置を追加的に提案する。

本ASU案は最終化され次第すべての企業を対象に即時適用開始とすることが提案されている。本ASU案の適用開始後2022年12月31日までの間に生じた契約変更、及び、本ASU案の適用開始時点で存在するかその後2022年12月31日までの間に開始したヘッジ関係を対象として、本ASU案は将来に向かって適用される。提案される実務的な便法及び例外処理は、2022年12月31日より後に行われる条件変更及び当該日より後に開始又は評価されるヘッジ関係には適用されない。

コメントの締切りは2019年10月7日である。

あずさ監査法人の関連資料:Defining issues(英語)

(2)ASU案「貸借対照表上における負債の分類の簡素化(流動・非流動の分類)- 2017年1月10日公表公開草案の改訂」の公表(2019年9月12日 FASB)

ASU案は、現行の会計基準の複雑性を低減しようとするFASBのプロジェクトの一環として、貸借対照表における負債の流動・非流動の分類についての現行のガイダンスを変更することを提案するものである。本ASU案は、2017年に公表された公開草案の改訂版であり、未使用の長期のファイナンス契約を考慮しないこととしたこと、コベナンツ抵触時の猶予期間が契約上設けられている場合にはその影響を考慮することにしたこと、の2点は新たな提案となっているが、それ以外の多くの点では前回の提案を引き継いでいる。トピック 470(負債)は、流動・非流動を分類するためのいくつかのガイダンスを含むが、当該ガイダンスは複雑であるというコメントが寄せられていた。提案される変更は、多くの企業の負債の流動・非流動分類を変更させるものと考えられる。なお、本ASU案は、貸借対照表において流動・非流動の分類を行っているすべての企業の負債の契約に対して適用される。

本ASU案では、負債の流動非流動分類は貸借対照表日時点で決定されるべきであるとの原則を導入することが提案されている。提案された原則によれば負債は以下の場合において非流動に分類される。

  • 負債が、契約上、貸借対照表日から1年(もしくは、営業循環が1年より長い場合には、営業循環の基準)より後に決済される;または負債の決済を貸借対照表日から少なくとも1年(もしくは、営業循環が1年より長い場合には、営業循環の基準)より後に繰り延べることができる契約上の権利を、企業が保有している。

なお、本ASU案は、上記提案原則に対しての例外として、負債のコベナンツに抵触したものの、権利者がそれを貸借対照表日後財務諸表が発行される前までの間に放棄した場合においては、当該負債の非流動分類を継続するという現行のガイダンスを特定の条件が満たされる場合において維持することを提案している。なお貸借対照表上では他の非流動負債とは別掲が要求されている。また、本ASU案は、コベナンツ抵触や貸手に付与される早期返還権等についての包括的な開示を要求している。

本ASU案の適用日については具体的な提案はなく、関係者からのフィードバックを受けて決めるとしている。適用日以降最初に到来する期中並びに年度の財務諸表から、当該期において、もしくはその後の期において存在する負債につき将来に向かって適用することが提案されている。早期適用は認めることが提案されている。

コメントの締切りは2019年10月28日である。

あずさ監査法人の関連資料: Defining issues(英語)

米国基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(米国基準)

 

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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