レジリエンスの指針 - 「ISO22320」とは

「レジリエンスを高める」第4回 - 企業のレジリエンス強化に有効な指針となる、国際標準化機構発行の危機管理の国際規格「ISO22320」を紹介する。

企業のレジリエンス強化に有効な指針となる、国際標準化機構発行の危機管理の国際規格「ISO22320」を紹介する。

組織がレジリエンス(逆境から回復する力)を強化するための指針に、国際標準化機構(ISO)が2011年に発行した危機管理の国際規格「ISO22320:2011(JIS Q22320:2013)社会セキュリティ - 緊急事態管理 - 危機対応に関する要求事項」がある。本規格は以下に示す3つの要求事項で構成されており、これまで個別の企業・組織で行われてきた危機対応を発展させ、複数組織が連携し、より効率的・効果的に対応していくことなどを定めている。

  1. 指揮・統制:危機対応は多くの人にとって「初めての経験」である。平時の決裁権限を順守できない状況下で、経営者の果たす役割は大きく、危機が発生する前からリーダーが担う役割・責務や指揮・統制体制の準備が望まれる。
  2. 活動情報:危機発生時には情報量が大幅に不足する。時間的制約もあり、仕事量も増加するため「不確実な状況で判断し行動」することになる。迅速な判断や情報共有を可能にする手法として代表的な例は、災害時に限られた医療資源を最大限に活用するため重症度に応じて視覚的に分類する「トリアージ」である。企業においては「危機レベル・報告基準の策定」による組織内での共通言語を作るなどの対応が考えられる。
  3. 協力及び連携:危機において組織は、すべての「ヒト・モノ・カネ・情報」の活用に加えて、周辺地域、専門家、競合他社などあらゆる組織と連携し、必要に応じて協力を求めながら乗り越えることが重要である。危機が発生する前から協力協定や契約を結んだり、日ごろから連携体制を構築しコミュニケーションを深めたりしておくことが望ましい。例えば近隣のガソリンスタンドと優先供給契約を締結する、取引先や地域と商品供給に関する協力協定を締結するなどの対応が考えられる。

本規格制定の背景には、近年の地震・森林火災などの危機が広域化・深刻化するなかで複数組織の連携・協力を求める声の高まりがある。ISO22320には世界中のあらゆる組織が「危機や環境変化に打ち克ち、それを糧に成長できる組織力」を高めるための基本事項が示されており、レジリエンス強化の有効な指針となり得る。

ISO22320の要求事項(抜粋)

指揮・統制 業務上の意思決定は組織の中で可能な限り低い階層で、業務遂行に必要な支援や組織間の連携は最も高い階層で行う
活動情報 収集したデータは、あらゆる階層の意思決定者並びにその他活動情報を必要とする利用者が、容易に使用できるような形式に規格を統一する
協力及び連携 共通の利害及び価値観に基づく複数の組織が、効果的な危機対応を実現するため、協力協定を必要に応じて締結しなければならない

日経産業新聞 2017年11月9日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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