有事における情報集約体制の要点

「レジリエンスを高める」第6回 - 災害対策本部やクライシスマネジメントチームの立ち上げ、有効な情報集約体制の構築について解説する。

災害対策本部やクライシスマネジメントチームの立ち上げ、有効な情報集約体制の構築について解説する。

有事の際は、不確実で乏しい情報に基づいて判断し、行動しなければならない。したがって、経営者はまず、必要な情報を適切なタイミングで集約する組織をつくる必要がある。具体的には、速やかに緊急時体制(一般的には災害対策本部やクライシスマネジメントチームなど)を立ち上げ、機能ごとのリーダーを任命する。仮に災害で多くの役員や部長クラスが被災した場合でも、課長以下に部長クラスまたは場合によっては執行役員クラスの権限を与えて対応させることも考慮すべきである。

次に、重要な情報が機能ごとのリーダーに集約されるようにして、経営者は各リーダーから情報を受け取る体制とする。1つの組織の中で複数の人による指示が出れば、現場が混乱してしまうからである。さらに、状況は刻一刻とめまぐるしく変化するため、情報集約体制は状況の変化に応じて、柔軟かつ遅滞なく変更しなくてはならない。例えば、クライシスマネジメントチームのメンバー不在や経験不足などにより、災害対策本部が機能しないケースが想定される。そのような場合は、人事異動・配置転換、OBの招集などで、柔軟に対応すべきである。
こうした判断は、どれも経営者以外が行うことが困難なものである。したがって、有事の際には、経営者はトップダウンで意思決定を進めていかなくてはならないことにも留意する必要がある。

一方で、いざ有事の際には、いくら優秀な経営者であったとしても、このような組織をいち早く立ち上げることは容易ではない。そのため、経営者は、平時において、課長以下のクラスまで視野に入れた代替体制の構築をしておくべきである。
また、通常の有事対応訓練の他、代替者も含めた訓練の必要性を社員に発信し実施させることで、代替者に対して有事の対応を「自分事」として捉えてもらうことが重要である。
海外における有事の際には、地理的な要因も含め、情報の収集が困難となることが想定される。このような場合、一般的に有事が発生した地域の統括会社と連携して情報を吸い上げることとなる。そのため、有事の情報集約体制における海外地域統括会社の役割をあらかじめ明確にし、必要に応じて有事対応訓練に巻き込むべきである。

情報集約体制のイメージ図

情報集約体制のイメージ図

日経産業新聞 2017年11月14日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント 岩田 啓

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