金融庁、監査報告書における意見の根拠の記載及び監査人の守秘義務の明確化のための監査基準の改訂に関する意見書等を公表

ポイント解説速報 - 2019年9月6日、金融庁は、企業会計審議会が取りまとめた監査基準の改訂に関する意見書、中間監査基準の改訂に関する意見書及び四半期レビュー基準の改訂に関する意見書を公表しました。

金融庁が、2019年9月6日に公表した「監査報告書における意見の根拠の記載及び監査人の守秘義務の明確化のための監査基準の改訂に関する意見書等」の概要を解説します。

1.概要

今般公表された監査基準の改訂に関する意見書は、財務諸表利用者に対する監査に関する説明・情報提供を充実させる必要性が指摘されていることを受けて、監査基準において監査報告書における意見の根拠の記載や監査人の守秘義務を明確化するための改訂を行うため、企業会計審議会において審議がなされ、取りまとめられたものです。
また、2018年7月の監査基準の改訂において「中間監査基準、四半期レビュー基準についても、今後同様の観点からの改訂を検討することが必要である」とされていた報告基準に関わる改訂事項について、中間監査基準、四半期レビュー基準の改訂がされています。

2.改訂の内容

(1)監査報告書の意見区分の明確化

現行の監査基準においては、限定付適正意見を表明する場合には意見の根拠の区分において、「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」を記載する中で、限定付適正意見と判断したことについての説明がなされることが想定されていますが、財務諸表利用者の視点に立ったわかりやすく具体的な説明がなされていない事例があるとの指摘がされています。
本改訂では、監査人は意見の除外ないし監査範囲の制約により限定付適正意見を表明する場合には、意見の根拠の区分において限定付適正意見とした理由を記載する旨が明確にされています。
また、中間監査基準及び四半期レビュー基準についても同様の改訂が実施されています。

(2)守秘義務の明確化

公認会計士法において、「業務上取り扱ったことについて知り得た秘密」を守秘義務の対象として定めています。一方、監査基準においては、「業務上知り得た事項」を監査人の守秘義務の対象として定めています。
本来、守秘義務の対象は、企業の秘密に限られるものですが、我が国においては、一般的に、企業に関する未公表の情報について、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられる傾向があると指摘されていました。このため、本改訂では、監査基準における守秘義務の規定について、公認会計士法との整合を図る観点から、秘密を対象にするものであることが明確にされています。

(3)中間監査基準及び四半期レビュー基準への2018年7月の監査基準の改訂の反映

2018年7月に実施された監査基準の改訂において、監査報告書の記載区分等及び継続企業の前提に関する事項の改訂が行われていることを踏まえ、中間監査基準及び四半期レビュー基準についても、同様の観点から、以下の改訂がされています。

  • 「監査人の意見」又は「監査人の結論」を中間監査報告書又は四半期レビュー報告書の冒頭に記載し、新たに「意見の根拠」又は「結論の根拠」区分を設ける。
  • 「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」と変更し、監査役等の財務報告に関する責任を記載する。
  • 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、中間監査報告書又は四半期レビュー報告書に追記するとしていた継続企業の前提に関する事項について、独立した区分を設けて記載する。併せて、継続企業の前提に関する評価及び開示に関する経営者の責任、監査人の当該評価及び開示を検討する責任の記載をそれぞれ追加する。

3.実施時期

本意見書では、監査基準については2020年3月決算に係る財務諸表の監査から、中間監査基準については2020年9月30日以後終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から、四半期レビュー基準は2020年4月1日以後開始する事業年度に係る四半期財務諸表の監査証明から、それぞれ適用するとされています。

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
監査プラクティス部

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