税務情報(2019.4-5)

本稿は、2019年4月から5月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。

本稿は、2019年4月から5月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。

2. 国税庁 - タックスヘイブン対策税制に係る改正通達の発遣

国税庁は6月6日、2019年度税制改正に対応したタックスヘイブン対策税制に関する通達を発遣しました。


(1)ペーパーカンパニーの範囲の見直し

2019年度税制改正では、ペーパーカンパニー(その租税負担割合が30%未満である場合には、会社単位の合算課税の対象となる外国関係会社)の範囲が見直され、ペーパーカンパニーに該当しないこととされる外国関係会社として3つの類型が追加されました。これらの外国関係会社として取り扱われるための要件に関する通達が新設されました。


(2)連結納税・パススルー課税の適用を受ける外国関係会社の所得の金額等

2019年度税制改正では、外国関係会社が連結納税やパススルー課税の適用を受ける場合の取扱いが整備されています。具体的には、外国関係会社の適用対象金額及び租税負担割合並びに内国法人における外国税額控除の規定の適用に当たり、外国関係会社の所得の金額及び法人所得税(外国法人税)の額は「企業集団等所得課税規定」(その外国関係会社の本店所在地国における連結納税・パススルー課税の規定)を除いた法令の規定により計算することとされました。この整備に伴い、改正通達において新たに9つの通達が設けられました。


上記に関するe-Tax News

KPMG Japan e-Tax News No. 172(2019年6月6日発行)

3. 国税庁 - 2019年4月1日以後終了事業年度分の法人税の別表様式の公表

国税庁のウェブサイトに、「平成31年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(平成31年4月1日以後終了事業年度等又は連結事業年度等分)」のページが開設され、2019年4月1日以後終了事業年度の法人税の別表様式が公表されました。
別表1(単体申告用)及び別表1の2(連結申告用)については、これまで法人形態によって様式が3種類に分かれていました。


別表1(単体申告用)の場合

  1. 普通法人(特定の医療法人を除く。)、一般社団法人等及び人格のない社団等の分
  2. 公益法人等(一般社団法人等を除く。)及び協同組合等の分
  3. 特定の医療法人の分

今回の様式変更では、上記のような法人形態による区分がなくなり、内国法人であればそれぞれ統一の様式を使用することとされるとともに、別表上に法人区分を選択する欄が新たに設けられました(外国法人の場合には、従来どおり別表1の3を使用します)。財務省の説明によりますと、この様式変更は来年からスタートする電子申告の義務化を見据えたものだということです。

4. 国税庁 - 電子帳簿等保存制度の見直しの概要の公表

国税庁のウェブサイトに、以下のページが開設されました。

2019年度税制改正では、新たに業務を開始した個人の電子帳簿保存等の承認申請書の提出期限の特例の創設(電子帳簿保存法※1第6条第1項及び第2項)及び承認を受ける前に作成又は受領をした重要書類のスキャナ保存の可能化(電子帳簿保存法施行規則※2第3条第7項及び第8項)といった制度改正がなされるとともに、電子帳簿保存及びスキャナ保存制度の運用上の見直しもいくつか行われます。
開設された上記のページには、運用上の見直しに関し、たとえば承認申請手続の見直しや以下に係る通達等の改訂(解釈の見直し)が挙げられています。

  • 入力等に係る期間制限
  • 定期的な検査
  • 検索機能の確保

なお、通達等の改訂は、今年の7月頃に予定されているとのことです。

※1 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
※2 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則

5. 総務省 - 地方税に関する改正取扱通知等の公表

2019年度税制改正に伴い、総務省はウェブサイトの「通知・通達」のページに、地方税に関する以下の改正取扱通知等を4月1日付で公表しました。


(1)地方税法、同法施行令、同法施行規則の改正等について

地方税法に関する改正事項の概要をまとめたものです。


(2)地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)の一部改正について

2019年度税制改正に伴い改正された道府県税関係の取扱通知の新旧対照表です。2019年度税制改正では、個人住民税におけるふるさと納税制度において、過度な返礼品を送付し制度の趣旨を歪めているような地方公共団体を対象外とするため、制度の対象となる寄附金を、一定の基準に適合するものとして総務大臣が指定した地方公共団体に対する寄附金に限定する改正が行われました。これに伴い、ふるさと納税制度の運用に当たっての留意点を示す取扱通知(第2章第2節第4 12の2~12の6)などが改正されています。


(3)地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)の一部改正について

2019年度税制改正に伴い改正された市町村税関係の取扱通知の新旧対照表です。上記の道府県税関係と同様、ふるさと納税制度の運用に当たっての留意点を示す取扱通知(第2章第2節第4 24~24の3、24の6、24の7)などが改正されています。

6. 経済産業省 - 研究開発税制の概要資料等の公表

2019年度税制改正では、研究開発投資の増加インセンティブを強化する観点から、試験研究費の税額控除制度について、総額型の控除率や控除上限の見直し等が行われるとともに、オープンイノベーション型の対象範囲の拡充や控除上限の引上げ等の改正が行われました。
これを受け、経済産業省は4月3日、改正後の制度の概要を説明する以下の2つの資料を公表しました。

7. 経済産業省 - 『「攻めの経営」を促す役員報酬 - 企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引 - 』の改訂

2019年度税制改正では、コーポレートガバナンス改革の実質化を進めるため、報酬諮問委員会における審議を充実させ、各社が効果的に報酬諮問委員会の活用を進める観点等から、役員の業績連動給与に係る損金算入手続が見直されました。
これを受け、経済産業省は5月31日、以前より公表している役員報酬に関する手引の改訂版を公表しました。

「II. 株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A」に、2019年度税制改正の概要及び適用時期(Q2 - 1~2)や改正後の業績連動給与としての損金算入要件の詳細(Q64 - 1~4)に関するQ&Aが追加される等の改訂が行われています。

8. 東京都主税局 - 2019年10月1日以後に開始する事業年度の法人事業税の税率(案)の公表

2019年度税制改正では、地域間の税源偏在を是正するための新たな恒久措置として、2019年10月1日から法人事業税の一部を分離し、国税である特別法人事業税を創設して国から地方へ配分することとされました。これに伴い、2019年10月1日以後に開始する事業年度の法人事業税の税率が見直されました。
東京都は、法人事業税の税率(超過税率)を定める東京都都税条例の改正案を、2019年第2回東京都議会定例会(会期:6月4日から19日)に提案する予定ですが、5月28日、その提案予定の法人事業税の税率(案)が東京都主税局のウェブサイトに公表されました。

東京都は、現行の超過課税の規模を変更しない(現行の標準税率と超過税率の差分をそのまま、改正後の標準税率に加算する)方針で、法人事業税(所得割・収入割)の税率を改正することとしているため、この改正による法人実効税率への影響はほとんど生じない見込みです。


上記に関するKPMG Japan tax newsletter(2019年5月29日発行)
東京都 - 2019年10月以後に開始する事業年度の法人事業税の税率(案)を公表(日本語)
Tokyo - Proposal for Business Tax Rates(英語)

II. 2018年度税制改正

1. 国税庁 - 恒久的施設(PE: Permanent establishment)関連規定の見直しに関する改正通達の趣旨説明の公表

国税庁は昨年12月12日付けで2018年度税制改正に対応した「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」を発遣しましたが、このうち「第1 法人税基本通達関係」(P.18~24)では、法人税法においてPE関連の規定が新たに整備されたことに伴う通達の改正及び新設等が行われました。
4月11日、国税庁はこのPE関連の通達に関する趣旨説明を公表しました。

たとえば「20 - 1 - 1(その他事業を行う一定の場所)」では、恒久的施設の範囲のうち、法人税法施行令第4条の4第1項第三号に規定する「その他事業を行う一定の場所」に該当するものとして通達に列挙されている倉庫やサーバーについて、より詳細に説明しています。


上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No. 165(2018年12月26日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 170(2019年5月8日発行)

III. 租税条約

1. ウルグアイとの租税条約 - 締結交渉開始及び実質合意

財務省は4月8日、日本国政府がウルグアイ東方共和国政府との間で、租税条約を締結するための交渉を4月9日より開始することを公表しましたが、4月19日、実質合意に至ったことを公表しました。
この条約は、今後、両国政府内における必要な手続を経たうえで署名され、その後、両国における国内手続(日本の場合は国会の承認を得ることが必要)を経て、発効することとなります。


財務省プレスリリース
日本語:
ウルグアイとの租税条約の締結交渉を開始します
ウルグアイとの租税条約について実質合意に至りました
英 語:
Negotiations for Tax Convention with Uruguay will be Initiated
Tax Convention with Uruguay Agreed in Principle

2. ギリシャとの租税条約 - 締結交渉開始

財務省は5月7日、日本国政府がギリシャ共和国政府との間で、租税条約を締結するための交渉を5月8日より開始することを公表しました。


財務省プレスリリース
日本語:ギリシャとの租税条約の締結交渉を開始します
英 語:Negotiations for Tax Convention with Greece will be Initiated

3. フィンランドとの租税条約 - 改正交渉開始

財務省は5月21日、日本政府がフィンランド共和国政府との間で、現行の租税条約(1972年発効、1991年一部改正)を改正するための交渉を5月22日より開始することを公表しました。


財務省プレスリリース
日本語:フィンランドとの租税条約の改正交渉を開始します
英 語:Negotiations for Tax Convention with Finland will be Initiated

IV. その他

1. OECD - 経済のデジタル化によって生じる租税問題を解決するためのロードマップに合意

OECDは5月31日、OECD/G20包摂的枠組みが多国籍企業への課税について新たに世界的な合意を形成するためのプロセスを明確化した作業プログラムを採択したことを公表しました。


OECDプレスリリース
日本語:国際社会は、経済のデジタル化によって生じる租税問題を解決するためのロードマップに合意
英 語:International community agrees on a road map for resolving the tax challenges arising from digitalisation of the economy

この作業プログラムは、2つの主要テーマ(課税権の配分に関する論点及び低課税国への所得移転等のBEPSに関連する論点)について解決すべき技術的な問題を考察しています。OECD事務総長はこの作業プログラムについて、6月8~9日に福岡で開催されるG20財務大臣会合で、各国財務大臣に承認を求めることになっています。
また、OECDは2020年初めに主要な論点について合意し、2020年末までに最終報告書を提出する予定です。

2. 国税庁 - e-Tax関連情報の公表

5月7日、国税庁のe-Taxのページにおいて、同日より新たに使用することが可能となった2つの機能に関する情報が掲載されました。

2018年度税制改正により、勘定科目内訳明細書及び法人税申告書別表等(明細記載を要する部分)については、2019年4月1日以後の申告から従来のデータ形式(XML形式)に加えCSV形式による提出が可能とされましたが、このお知らせでは、5月7日より実際にCSV形式による提出が可能となったこと及び「CSVファイルチェックコーナー」(法人が作成したCSV形式のデータが国税庁の仕様に沿っているか確認することができるツール)を開設したことが公表されています。

  • メッセージボックスの閲覧方法の改善について

このお知らせでは、5月7日よりメッセージボックス(共通フォルダ)にパスワード付きの複数のサブフォルダを作成することができることとなり、申告書等の送信時に受信通知等のメッセージを格納するフォルダを選択することも可能となったことが公表されています。
これまでは、1つの利用者識別番号に対して1つのメッセージボックスが作成されていたため、たとえば法人納税者が部署単位で申告手続等を行っている場合には、メッセージボックス内に格納されている全ての受信通知等のメッセージをどの部署でも閲覧できる状態でしたが、今回の改善により部署単位で情報を管理できるようになります。

3. 国税庁 - 改元に関するお知らせの公表

国税庁は5月7日、以下の点を明らかにしたお知らせを公表しました。

  • 新元号への移行に伴い、国税庁ホームページや申告書等の各種様式を順次更新する。
  • 納税者からの提出書類は、たとえば「平成31年6月1日」と平成表記の日付で提出されたとしても、有効なものとして取り扱う。
     

国税庁は4月3日、「改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた」を公表しました。
源泉所得税の納付の際には、改元後においても、「平成」が印字された「源泉所得税の所得税徴収高計算書(納付書)」を引き続き使用することができることとされており、実際に納付書を作成する際の留意点が示されています。


上記2.及び3.に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No. 170 (2019年5月8日発行)

執筆者

KPMG 税理士法人

お問合せ