Me, my life, my wallet 第2号 私、私の人生、私の財布 グローバル消費行動調査の日本語版リリース

Me, my life, my wallet 第2号 グローバル消費行動調査の日本語版リリース

今回はKPMGのグローバル消費行動調査をさらに掘り下げ、人々の行動と選択を決定づけている真の要因を探り、その要因がどのように変化しているのかを追求しました。

中村 吉伸

KPMG FAS 執行役員パートナー/KPMGジャパン リストラクチャリングサービス統括

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およそ1年前、私たちは、KPMGのGlobal Customer Insightsプログラムの最初の包括的な成果物として、「Me, my life, my wallet(私、私の人生、私の財布)」レポートの創刊号を発行しました。このプログラムは、消費者と、消費者の「5つのMy」、さらに消費者の動機・態度・期待の急速かつ根底的な変化について理解を深めるための、独自のフレームワークを提唱したものです。そして、ここで明らかとなった消費者の変化は今も減速する兆しを見せていません。今回、KPMGは、消費者の多元的なあり方についてさらに掘り下げて調査しました。すなわち、人々の行動と選択を決定づけている真の要因を探り、その要因がどのように変化しているのかを追求しました。

ポイント

  • 所得と支出の最盛期に入り、顧客として魅力的なターゲットになりつつあるジェネレーションX、その子供世代であるジェネレーションZを理解し、世代間サーフィンを成功させる。
  • 年金制度の崩壊、長寿化、退職後への不十分な備えと貯蓄、資金消尽への恐怖感、医療費の高騰、労働力供給源の縮小といった状況が、退職後も働き続けるという新しいライフステージ「アンリタイアメント」を生み出しつつある。将来への備えとアンリタイアメントに関する消費者の態度と行動は、あらゆる業界に影響を及ぼす可能性がある。
  • 消費者は、情報過多を回避するために、テクノロジーやフィルター、プラットフォームによる情報のキュレーションなどを活用し、編集された現実の中を生きており、企業がそのような消費者の関心を、引き付け、獲得し、保持し続けることはより複雑化している。
  • 未来の顧客を理解し捉えるために、「5つのMy 」で消費者行動のなぜを理解するとともに、「6つの柱」で魅力的な顧客体験を設計することが可能となる。

I. 世代間サーフィン

ジェネレーションXとジェネレーションZ:もうひとつのエコー効果

ライフステージが長期化し、ライフイベントが流動化し、新しいライフイベントも出現してきたことで、世代という形でやってくる波を次々に商機として捉える「世代間サーフィン」は、かつてのように予測どおりに事が運ばなくなっています。1960年代終わりに生まれた典型的なジェネレーションXのライフステージを見ると、社会人の仲間入りをした1987年にブラックマンデーで株価暴落、所得のピーク期に入った2000年にITバブルが崩壊、不動産市場の絶頂期に住宅を購入したところ2008年に金融危機が発生といった巡り合わせの悪さが、この世代の実生活に持続的な影響を及ぼしているのが分かります。一方で、この世代は今、所得と支出の最盛期に入っており、顧客として魅力的なターゲットになっています。一例ですが、Google、WhatsApp、Alibaba、Amazon、Tesla、すべてジェネレーションXの先駆的起業家が設立した会社です。このジェネレーションXに共通するのは「サンドイッチ世代」と呼ばれる新しいライフステージです。幼い子供と高齢の両親という2つの存在の世話や扶養の板挟みになっており、慢性的な時間不足に陥っています。女性の労働参加率の高まり、親世代の長寿化なども相まって、この世代は助力を求めており、時間を節約するためにお金を払う可能性が高まっています。企業はすでにこの世代の「時間と財布」のあり方に焦点を当てた商品や体験の開発を進めています。サブスクリプションサービス、自動化されたリマインダー、デジタルパーソナルアシスタント、時間管理ツールなど、AIを活用した商品やサービス、IoT(モノのインターネット)に接続されたスマートホーム、音声プラットフォーム、AIを利用したバーチャルアシスタントなど。ジェネレーションXは生活をより賢いもにするためのテクノロジーに投資するでしょう。

ジェネレーションX(40代から50代半ば)とその子供世代のジェネレーションZ(10代)の間のエコー効果は独特の様相を呈しており、予想外の形で起こり始めています。ジェネレーションXは、両親の共働きを経験した最初の鍵っ子世代です。今、自分自身が親となったジェネレーションXは、両親がそばにいてくれなかったことによる寂しさを埋め合わせるために、過保護に走っているのでしょうか?それともただ世界は昔ほど安全ではなくなったと感じているのでしょうか? ジェネレーションZに属する子供たちは、家から離れた場所で過ごす時間が減り、オンラインで過ごす時間が増えています。National Trustが実施した2016年の調査では、英国の子供たちが屋外で遊ぶ時間は週平均4時間程度であり、その親世代が子どものころに屋外で遊んでいた週8.2時間に比べると、著しく減少しています。ジェネレーションXは、ビデオゲームと安価な家庭用ゲーム機で育った最初の世代でした。子どもを守りたいという思いと、楽しませたいという気持ちが結びつき、ジェネレーションXは、ジェネレーションZが架空代替現実の世界で活躍するという状況を作り出したのです。新時代のゲームは、ジェネレーションZが自分自身で演出するオンライン上の自画像を通じて自らの人生の一部を創り出し、それを生きることを可能にします。ジェネレーションZにとって、ソーシャルメディアは、もはやSnapchatやInstagramの類ではありません。大ヒットした最新ゲーム、フォートナイトは、アイテム課金制で基本料金無料にも拘らず1ヵ月間のゲーム内売上が3億ドルに達しています。フォートナイトは、スマートフォンや車の運転免許を持たないジェネレーションZが、仲間と交流し入り浸って過ごす場所であり、遊びの約束の新しい形です。そしてお小遣いの支出先を物理的なモノからバーチャルなモノへと転じさせました。例えば、スキン(全身を覆う着せ替えコスチュームによる新しいバーチャルアイデンティティ)、エモート、ダンスムーブなどをゲーム内で購入し、一人ひとりのフィーリングや「自分らしい立ち回り」を表現するのです。ジェネレーションZは、すべてのメディアと体験をキュレートし、制作し、デザインし、リミックスする能力を欲しています。メディアはクロスデバイス、クロスデザイン、クロスストーリー、そしてクロスエクスペリエンスである必要があります。映画のタイイン(抱き合わせ広告や販売)はもはやアナログロニズムと化しています。ゲームから映画へ、そしてまたゲームに戻り、さらにYouTubeへ、玩具へ、ファッションへというタイインが「ニューノーマル(新たな常識)」です。

II. 資産と財布

アンリタイアメントという選択

世界最大の年金貯蓄制度を有する6ヵ国(米国、英国、日本、オランダ、カナダ、オーストラリア)に2大人口大国の中国、インドを合わせた主要8ヵ国で生じる年金資産の不足額は、2050年までに400兆ドルに達すると予想されています。この合計額は、現在の世界経済規模の5倍に相当します。加えて、人口の高齢化、長寿化、医療費の高騰、確定給付型年金制度の減少、労働力供給源の縮小といった要因も考慮する必要があります。また、技術進歩による雇用市場の破壊によって、数百万人が職を追われるとの予想が示されています。そこにインフレの増大や金利の上昇といったマクロ経済的な圧力が加われば、すでに圧力を受けている消費者の財布はますます緊縮化を強いられ、人口の大部分にとって、今世紀中に「退職」が前世紀の遺物になる恐れが増大しています。
約25,000人の消費者を対象とした調査で、KPMGは資産と退職に対する態度を検証しました。その結果、多少の不安を抱えながらも、現状に甘んじ、十分な備えができていない消費者像というものが浮かび上がってきました。27%の回答者が退職に対して大きな懸念を表明しており、最も低かったのが中国の消費者の17%、最も高かったのがブラジルの40%でした。ジェネレーションXについては、退職が次の大きなライフステージとして間近に迫っているにもかかわらず、強い懸念を表明した割合は3分の1でした。さらに、この曖昧な態度には、所得水準によるばらつきがほとんど存在しませんでした。人生のデキュムレーション(資産引き出し)段階に最も近づいているベビーブーム世代とジェネレーションXについては、退職に備えて十分な貯蓄があると回答した調査対象者は、それぞれ14%と9%にすぎませんでした。さらに憂慮すべきなのは、この2つの世代群の中で、積極的に貯蓄していると回答した割合が3分の1を少し超える程度にすぎず、また、退職をわずか10~20年後に控えるジェネレーションXの25%という大きな割合が、その退職後に向けた貯蓄を(計画しているが)まだ開始していない、と回答したことです。すでに退職した年代を調べてみると、平均41%の消費者が、KPMGの用語でFROOM(Fear of Running Out Of Money)と呼ばれる「資金消尽への恐怖感」があると回答しており、その割合はフランスで最も高く53%、最も低い英国で20%でした。退職に備えた貯蓄が不十分であり、将来への備えを先送りしており、資金消尽への恐怖感(FROOM)があり、債務の返済に苦労しており、世代間の金銭援助が長引いており、退職後のライフステージでも稼ぎ続ける必要がある・・・・・・。このような問題が原因となって、今、定年後も働き続けるという新しいライフステージが出現しつつあり、これをKPMGは「アンリタイアメント」と呼んでいます。親世代から子世代への世代間の資産移転という現行の将来予測に関する想定も疑ってかかる必要が生じます。将来への備えに関する消費者の態度と行動は、あらゆる業界に影響を及ぼす可能性を秘めており、注視が必要です。

III. 生活とテクノロジー

情報を適切に管理しているという幻想

私たちは情報が溢れている世界に生きています。近年では、ニュースやメディア、情報のチャネル、プラットフォーム、そして発信源の細分化が急激に進行し、なお加速し続けています。わずか60秒の間に、私たちが一生かかっても消費し切れないほど多くの情報とコンテンツが生み出され、毎日の日課においてもさまざまなデバイスが中心的な役割を果たし、ほぼ常時接続の状態です。また、音声やAIを利用したアシスタント機能が私たちの家庭の中まで入り込み、その浸透度を拡大しつつあります。今回のグローバル調査で、KPMGは、この新しい現状に対する満足度が全般的に高いことを確認しました。消費者の76%が、たくさんの情報にアクセスできることに好感を持っていると回答し、36%が膨大な量の情報とメディアに閉口していると回答しました。中国とインドの消費者は、例外的に、熱狂的な支持と困惑の表明がいずれも高いレベルで拮抗しました。全世界では消費者の62%が情報を積極的に選別していると回答し、46%が情報の選別を他の人の指示に従って行っており、半数以上が情報の選別を自分に代わって実行してくれるアプリやテクノロジーを好意的に評価しました。55%の消費者が情報は多ければ多いほどよいと考え、さらに情報へのアクセス能力を拡大したいという願望を表明しており、また67%は、自分の閲覧している情報が信頼に値するかどうかを判断できると考えますが、逆に自分では判断できないと考えている消費者が33%も存在することは問題であるとも言えます。ニュースハイライト、フィルタリング、そしてキュレーションはいずれも現代の消費者の多忙な生活にメリットをもたらしますが、一方で、各自が生活の中で必要とし重視している情報を自分自身で掌握しているという幻想を生み出す危険もあります。組織にとって、私たち消費者が何を重視し、情報にどのようにアクセスしているかを理解するだけではもう十分ではありません。消費者がその生活の中から何を排除し、誰を頼りに情報やメッセージを選別し、発信しているのか、そして私たちが照準を合わせている消費者層の周囲にはどのような政治的、社会的、人口動態的なバブルが形成されているのかを検討する必要があります。テクノロジーを活用して情報アクセスを管理し、情報過多を回避する消費者の能力は、編集された現実の中を生きるようになっている消費者の関心をどのように引き付け、獲得し、保持し続けるかという企業にとっての課題に、複雑さをもたらします。

IV. 組織の最重要課題

未来の顧客

顧客理解とパーソナライゼーション、共感、魅力的なサービス、そのブランドならではの独自の体験の提供は、決して高尚な経営の理想ではありません。益々競争の熾烈化する現実に根差したものです。組織が直面する課題は2つです。1つは、顧客がある意思決定に到達する道筋は昨日と今日では違っており、明日はさらに変化していることを、さまざまな状況、ライフイベント、そしてエンゲージメントモデルに基づき認識することです。2つ目は、この過剰につながり合った、透明性の高い、大衆化した世界、すなわち、情報と力の両方が、消費者の手中にある世界では、そのブランドならではのパーソナライズされ、意図を組み込んだ体験を提供することがますます緊急の課題になっていることです。加えて、そのような体験に対する期待は、多くの組織が追随できるペースを超えて高まっています。消費者がどこか(カテゴリーや業界を問わず)で得た最高の体験そのものが、それ以外のすべてのブランドに対する期待事項となるからです。消費者の動機と期待は何か、何が消費者の関心を奪い合っているか、テクノロジーや他の人々とどのようにつながり合っているか、限られている時間とお金をどのようなバランスで両立させているか、そして、さまざまなライフイベントやライフステージによってそのすべてがどのように変化するか、これらを理解することがKPMGの「5つのMy」のフレームワークの根幹です。これにより、組織は最も潜在力の高い魅力的な市場や顧客に資源や労力を優先的に配分することができるようになります。また、経営幹部に深い洞察、すなわち、消費者の挙動の背後に存在する「なぜ」(その行動を選択したか)に関する洞察をもたらします。そして、次の段階として、「なぜ」に基づいて行動し、その結果に対応し、提案を方向づけ、意図を組み込んだ体験を設計する、という必要性に応える最も強力な手段が「6つの柱」となります。この5つのMyと6つの柱を併用することで、組織内部の変革、資源配分、そして注力先の優先順位を示すヒートマップまたはロードマップを作成できるようになります。ただし、これらはすべてにおいて消費者の最低限の期待を満たすことが必要です。例えば、「誠実性」は6つの柱の基礎となりますが、これを満たさない組織は「パーソナライズ」や「親密性」の領域で効果を達成することはできません。時間に係る重圧、予算への重圧、そしてパーソナライゼーションやプレミアムサービスへの期待という3つの要素の相対的な重要性を理解することによって、私たちは価値提案、メッセージ、そして体験をカスタマイズし、顧客に合わせて最適化できます(図表参照)。

図表 5つのMyと6つの柱
図表 5つのMyと6つの柱

Source:KPMGインターナショナル『Me, my life, my wallet 第2号』(2019年4月発行)より

出発点として、私たちが何を捉え損ねているのかを明らかにする必要があります。現在、あまりにも多くの組織のビジネスモデルが依然としてベビーブーム世代への売り込みを基盤として構築されています。今日、お金を使っているのはベビーブーム世代やジェネレーションXだけでなく、ミレニアル世代とジェネレーションZもこれに比肩する存在となっています。しかも、この若い世代は両親の財布とその開け閉めの判断にも影響をもっています。彼らを理解し顧客として迎える準備がまさに今、必要なのです。

執筆者

株式会社KPMG FAS
執行役員 パートナー 中村 吉伸

KPMGコンサルティング株式会社
パートナー 箕野 博之

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