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エンジニアリング・建設業界の革新的リーダーと追随者 - 2019年版グローバル建設業調査

エンジニアリング・建設業界の革新的リーダーと追随者 - 2019年版グローバル建設業調査

近年、エンジニアリング・建設業界では、ディスラプション(破壊的進歩)が加速しています。本稿では、「ガバナンス&コントロール」、「人材」、「テクノロジー&イノベーション」に効果的に投資している事例を紹介するとともに、「フューチャー・レディ・インデックス」という新たな概念を取り入れ、組織の未来に対する備えの度合いを測定および考察します。

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2019年の調査テーマは「未来」です。今年の調査では、「フューチャー・レディ・インデックス」という新たな概念を取り入れました。これは、エンジニアリング・建設会社や施主(発注者)の、未来に対する備え度合いを測定するKPMGの手法です。本稿では、このインデックスをもとに、エンジニアリング・建設業界のプレーヤーを3つのセグメント、「革新的リーダー(上位20%)」「追随者(中間60%)」「落後者(下位20%)」に分類しています。今回の調査結果から、上位20%の革新的リーダーは、戦略の制定から執行に至るまでディスラプションを受け入れている傾向にあり、テクノロジーやイノベーションへの投資を積極的に行い、人材獲得に対する優先順位が高いことが明らかになりました。一方、上位20%以外の業界プレーヤーは、どうすれば自らのレベルをあげることができるか自問するべきでしょう。特に落後者(下位20%)にとっては、状況はより切迫しており、存続にかかわるといってもよいかもしれません。これらの企業は、収益性を高めるため、そして買収の可能性を含む競走上の脅威をかわすため、デジタル化の競争に直面しているのです。
本稿では、自らの組織と同業他社の比較や、設備投資プログラムの策定または充実のための判断基準とすべく、フューチャー・レディ・インデックス上のスコアを測るための自己診断テストの簡易版を提供しています。また、バリューマップは、さまざまなテクノロジーへの投資によって得られる潜在的価値を考察することを可能にし、戦略的ロードマップは、組織がフューチャー・レディとなるための道筋を示します。

ポイント

  • 最も将来を見据えている組織は、ガバナンス&コントロール、人的資本およびイノベーション&テクノロジーについての態勢が秀でているだけでなく、これらの能力の統合をし始めている。
  • エンジニアリング・建設業界は高リスクな業界であり、テクノロジーやイノベーションへの投資は、組織の「フューチャー・レディ」度をしっかりと反映させたものでなければならない。

ガバナンス&コントロールの合理化による進化

プロジェクトのガバナンス&コントロールは、エンジニアリング・建設会社やプロジェクト施主(発注者)が設備投資プロジェクトを計画・実現させる上での基礎であり、業界の生命線であり続けています。今回の調査結果から、革新的リーダー(上位20%)は、ガバナンス&コントロールで大きくリードしていることがわかります。このグループの69%が、プロジェクトやポートフォリオを対象とした、複数のツールを備えた統合プロジェクト管理報告システムを有する一方、追随者(中間60%)では33%、落後者(下位20%)ではわずか7%となっています。
そして、ガバナンス&コントロールの優秀さはプロジェクトのパフォーマンス(成果)に反映されます。革新的リーダーは、プロジェクトの66%が予定スケジュールの90%以内に収まると回答している一方、同様の成功率を回答できた追随者は14%、落後者では0%という結果になりました。

テクノロジー投資を通じたイノベーション

エンジニアリング・建設業界は、先進的テクノロジーへの投資から具体的な利益を実現し始めています。例えば、より優れた、エネルギー効率の高い設計、スケジュールの短縮、品質管理の改善、生産性の向上およびより安全な職場等です。
フューチャー・レディな(未来への準備ができている)企業は、革新的なリーダーが、パフォーマンスの向上に繋がるテクノロジーへの投資に完全にコミットし、イノベーションと創造性を自社の文化の中核に組み込んでいます。こうした組織の多くは、行動と投資によって支えられ、組織全体にしっかり発信されているテクノロジービジョンを有しています。革新的リーダーは、追随者や落後者とは対照的に、新たなテクノロジーのパイロットプログラムを実施し、新たなイノベーションをテストするための全組織ラボを展開し、特定のテクノロジースキルを持つ人材を積極的に採用している傾向が強くなっています。

上位20%はイノベーションを組み込んでいる

イノベーションを組織に組み込むために、下記の組織上の変更を実施した企業の割合

上位20%はイノベーションを組み込んでいる

A:テクノロジービジョンを作成
B:パイロットプロジェクトで新たなテクノロジーをテスト
C:イノベーション担当の取締役またはリーダーを設置
D:イノベーション専門チームを指定
E:自社でのテクノロジー投資
F:他社の買収を通じた、テクノロジーまたは人材へのイノベーション投資
G:新テクノロジーをテストするための組織全体に及ぶラボ開設
H:イノベーションコンペを開催
I:チャレンジチームによる競争
J:イノベーションのための子会社を設立

出典:Future-Ready Index: エンジニアリング・建設業界の革新的リーダーと追随者

さらに、革新的リーダーは、BIM、ドローン、VR/AR等の新しいテクノロジーの採用についても進んでいることが明らかになっています。

人材パフォーマンスの最適化により優位性を維持する

KPMGのフューチャー・レディ・インデックスで上位を占める組織は、他の回答者と比べて、人材の優先順位を高く評価しています。今回の調査結果から、革新的リーダーは、次世代の労働者を繋ぎ止めるために、より多くの措置をとっていることがわかります。彼らは、ミレニアル世代やZ世代の採用候補者を勧誘する方法として、テクノロジー&イノベーションを積極的に利用しています。そして、いつでも、どこでも、という働き方へのシフトを認め、「バーチャルワーク」の選択肢を提供する割合が著しく高くなっています。
また、上位20%のリーダーは、研修プログラム、ミッションステートメントの発信、経営幹部育成制度、プロジェクト進捗アップデート、「働き方」に関する発信といったソフトコントロールを導入している割合が、その他の回答者と比較してかなり高くなっています。

革新的リーダーは上位5つのソフトコントロールを導入している

 

革新的リーダーは上位5つのソフトコントロールを導入している

出典:Future-Ready Index: エンジニアリング・建設業界の革新的リーダーと追随者

さらに、革新的リーダーは、ダイバーシティが組織において果たす役割を認識し、多様な労働力の構築に積極的に取り組んでいることも明確です。このグループの97%が「ダイバーシティは重要だ」と考えている一方、追随者では74%、落後者では69%となっています。

未来のエンジニアリング・建設会社

労働力不足、生産性向上の限界、資材コスト、細分化されたサプライチェーン等が重なり、エンジニアリング・建設業界でディスラプションの機が熟していることはほぼ疑いようがありません。そして、デジタル化、最新テクノロジー、モジュール化への動き等を含む新たなトレンドが業界を揺るがしています。業界はこうした変化への備えがどれほどできているのでしょうか。
イノベーションやテクノロジーを受け入れるための組織文化の変化は一夜にして起こるものではなく、何年にもわたる集中、努力そして強力なリーダーシップが必要であるとKPMGは考えています。また、我々は、将来に対して受け身の取組み方をしないよう、組織に強く勧告します。革新的リーダーも、追髄者または落後者も、以下3つの重要ポイントを検討することで、将来のプロセスに弾みをつける、または今日までの進捗を評価することが可能となるでしょう。

  1. 棚卸:自己診断テスト(PDF P.30)を実施し、フューチャー・レディ・インデックスのスコアと成熟度のカテゴリーを確認する。
  2. 選択肢の優先順位付け:上記の結果を評価し、バリューマップ(PDF P.32)を参考に投資の重要分野を特定する。
  3. 戦略的計画の策定:テクノロジーやイノベーションへの既存投資および計画中の新規投資を基に、テクノロジーやイノベーションのロードマップを策定(策定済みであれば、手直し)する。

英語コンテンツ(原文)