金融庁、監査基準、中間監査基準、及び四半期レビュー基準の改訂に関する公開草案を公表

ポイント解説速報 - 金融庁が、2019年5月31日に公表した「監査基準、中間監査基準、及び四半期レビュー基準の改訂に関する公開草案」の概要を解説します。

金融庁が、2019年5月31日に公表した「監査基準、中間監査基準、及び四半期レビュー基準の改訂に関する公開草案」の概要を解説します。

1.本公開草案の概要

本公開草案は、近時、不正会計事案等を契機として、監査の信頼性を確保するための取組みの1つとして、財務諸表利用者に対する監査に関する説明・情報提供を充実させる必要性が指摘されていることを受けて、企業会計審議会監査部会において監査報告書における意見の根拠の記載や監査人の守秘義務に関して明確化を求める監査基準の改訂について審議がなされ、取りまとめられたものです。
また、昨年7月の監査基準の改訂において「中間監査基準、四半期レビュー基準についても、今後同様の観点からの改訂を検討することが必要である」とされていた報告基準に関わる改訂事項について、中間監査基準、四半期レビュー基準の改訂が提案されています。

2.改訂の内容

(1)監査報告書の意見区分の明確化

現行の監査基準においては、限定付適正意見を表明する場合には意見の根拠の区分において、「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」を記載する中で、限定付適正意見と判断したことについての説明がなされることが想定されていますが、財務諸表利用者の視点に立ったわかりやすく具体的な説明がなされていない事例があるとの指摘がなされています。
本公開草案では、監査人は意見の除外ないし監査範囲の制約により限定付意見を表明する場合には、意見の根拠の区分において限定付適正意見とした理由を記載する旨を明確にすることが提案されています。
中間監査基準及び四半期レビュー基準についても同様の改訂が提案されています。

(2)守秘義務の明確化

公認会計士法において、職業的専門家としての職業倫理上当然の義務として、「業務上取り扱つたことについて知り得た秘密」を守秘義務の対象として定めています。一方、監査基準においては、監査を受ける企業との信頼関係の下、監査業務を有効かつ効率的に遂行する上で必要な義務として「業務上知り得た事項」を監査人の守秘義務の対象として定めています。
本来、守秘義務の対象は、企業の秘密に限られるものですが、我が国においては、一般的に、企業に関する未公表の情報について、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられる傾向があると指摘されています。このため、本公開草案では、監査基準における守秘義務の規定について公認会計士法との整合を図るため、秘密を対象にするものであることを明確にすることが提案されています。

(3)中間監査基準及び四半期レビュー基準への昨年7月の監査基準の改訂の反映

昨年7月に実施された監査基準の改訂において、財務諸表利用者の監査及び財務諸表への理解を深めるとともに、国際的な監査基準との整合性を確保する観点から報告基準に実施された以下の改訂点について、中間監査基準及び四半期レビュー基準に同様の観点からの改訂を実施することが提案されています。

  • 「監査人の意見」ないし「監査人の結論」を中間監査報告書ないし四半期レビュー報告書の冒頭に記載し、新たに「意見の根拠」ないし「結論の根拠」区分を設ける。
  • 「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」と変更し、監査役等の財務報告に関する責任を記載する。
  • 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、中間監査報告書ないし四半期レビュー報告書に追記するとしていた継続企業の前提に関する事項について、独立した区分を設けて記載する。併せて、継続企業の前提に関する評価及び開示に関する経営者の責任、監査人の当該評価及び開示を検討する責任の記載をそれぞれ追加する。

3.実施時期等

本公開草案では、監査基準については2020年3月決算に係る財務諸表の監査から、中間監査基準については2020年9月30日以後終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から、四半期レビュー基準は2020年4月1日以後開始する事業年度に係る四半期財務諸表の監査証明から、それぞれ適用することが提案されています。

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
監査プラクティス部

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