ゲノミクスによるライフサイエンス分野での価値創造 - 高まるデータの課題

ゲノミクスによるライフサイエンス分野での価値創造 - 高まるデータの課題

本レポートでは、ライフサイエンス企業がゲノムデータを効果的に収集、分析、使用して、臨床試験を加速し、治療計画を改善し、薬効を実証する方法について考察します。一方、今日のゲノムデータ量の拡大に伴い、プライバシー、信頼性、セキュリティに関する懸念や、データの収集、保存、分析といった課題が生じており、これらに対処するゲノムデータ戦略が必要です。

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今日、ライフサイエンス分野の研究開発は大変盛んになっています。ゲノミクスは、臨床研究と医薬品開発の加速化、治療計画の個別化、患者治療結果の改善、および治療費削減を促し、医療システムに大きな価値をもたらす可能性を秘めています。近年では、コンピュータの計算能力の飛躍的向上と、ウェアラブル技術の製品化によって健康データが爆発的に増加し、その一部には人間のデータで最も個人的なゲノムデータも含まれています。このデータを収集、保存、処理、分析する中で、プライバシー、セキュリティ、信頼性の確保が深刻な課題となっています。
ライフサイエンス企業がゲノムデータにおいてリーダシップを確立するには、医薬品の研究開発を支援し、厳しくなる法規制に対応し、倫理的基準を守るための堅牢なゲノムデータ戦略が不可欠です。これに加えて、大量のデータを処理し知見を得るための最も適切なテクノロジーを活用することで、ライフサイエンス企業は、創薬活動をより迅速に進められるようになるでしょう。

ポイント

  • ゲノミクスは、臨床研究と医薬品開発を加速し、治療計画を個別化し、患者治療結果を改善し、そして治療費を削減することにより、医療システムに大きな利益をもたらす可能性を秘めている。
  • 近年では、治験や治療から得られる臨床データや、ウェアラブル端末やIoTデバイスなどのゲノムデータの情報源が急増し、かつ、ゲノムデータを保持、処理する関係者の数も増加している。
  • ライフサイエンス企業がゲノムデータを効果的に使用して創薬活動を推進するためには、ゲノムデータのプライバシー、信頼性、セキュリティに関する課題に対処しなければならない。

ライフサイエンス分野におけるゲノミクスのより広範な役割

医薬品を市場に投入するには多大なコストが必要であり、ますます厳しくなる医療予算と相まって、研究開発チームには新製品をより速く低コストで開発するよう要求が強くなっています。ゲノミクスは、ライフサイエンス産業を個別化治療の道へと導き、ブロックバスター型からニッチ・バスター型へと移行させる、新たな創薬R&Dの姿を形づくる大きな可能性を秘めています。
ゲノミクスにより、医薬品開発では、患者の遺伝子プロファイルを使用して、特定の治療に反応する可能性が高い患者の部分集団を絞り込み、試験を加速させ、より早い段階で無効な治療を排除し、より早く低コストで市場に製品を投入します。また治療においては、より正確に的を絞った治療を提供することで治療成功率の向上につながります。
近年では、腫瘍学者が最も効果的ながんの個別化治療を選択することを支援するために、研究者たちは機械学習を活用しており、データはゲノミクスの中心的役割を果たしています。新しく強力なアルゴリズムにより、どの遺伝子が変異している可能性があるかを特定し、最も適切な治療法を予測することが可能となります。

ゲノムデータ:止まらない成長

ヒトゲノムがライフサイエンスの分野でより重要になるのに伴い、ゲノムデータの量は急速に拡大しています。現在、ヒトゲノムの解析は、以前と比較して低コスト、短時間で行うことが可能になりました。そのため、臨床開発を支援する「バイオバンク」でゲノムデータを構築しようとする数多くの取組みが世界中で見られ、ライフサイエンス企業や各国政府機関などが、数十万、数百万人規模のゲノムデータの解析を進め、がんや心臓病などの疾患の予防、診断、治療に結び付ける取組みを行っています。
そして近年では、ゲノムデータの保持やアクセス、研究のために、クラウドやブロックチェーンの技術が活用されています。データ収集と機械学習技術は、治療の価値を判断する上でますます重要になっています。アルゴリズム的アプローチは、臨床試験や実臨床における治療効果が高い患者群の特定に役立つだけでなく、新薬の創出や「Pay-for-Performance(治療成績に基づいた償還)」の実現に向けた薬の有効性の正確な根拠の提供にも寄与します。しかし、こういった取組みはライフサイエンス企業だけでは実現できず、さまざまな関係者からデータが調達され、専門家、臨床、研究室、分析のリソースにアクセスするためのアウトソーシングや共同作業が行われています。

データの危険性

一方、ゲノムデータの情報源が広範囲に広がり、複数の関係者がそのデータを収集、保存、処理、分析するにつれ、規制上、倫理上の基準を確実に満たすためにゲノムデータのプライバシー、信頼性、セキュリティを確保することが一層難しくなっています。
ゲノムデータは、プライバシーリスクの影響を非常に受けやすくなっています。個人データを収集する組織は、個人に対してプライバシーの権利について説明をしなければなりません。また、収集したゲノムデータの処理活動を正当化するにあたり個人の明確な同意が必要となる可能性がありますが、インフォームドコンセントの取得は高いハードルとなる可能性があります。特に、プライバシー関連の新しい規制である、EU一般データ保護規則の下では、同意は具体的かつ十分な説明がなされた明確なものである必要があり、研究目的を事前に特定することは難しく、これらの特定要件を満たすことは困難な場合もあります。
また、サイバーセキュリティもライフサイエンス分野における重大な課題です。ゲノムデータ、健康データなどの機密情報や、複雑な分子医薬品の製法などは、非常に大きな価値を有しています。実際に、サイバー攻撃による、製薬会社や医療機関の企業秘密盗難の被害額は毎年急増しています。ここ数年間は、ライフサイエンス企業によるM&Aが活発化し、新しいテクノロジーとデータ機能が次々と誕生する状況と相まって、今まで以上により悪質なサイバー脅威とプライバシーリスクに晒されるようになっています。
さらに、ゲノムデータは、競争力のある画期的な新しい医薬品を生み出す確率をあげる可能性がありますが、その過程ではゲノムデータの信頼性が不可欠です。臨床試験プロセスに関与する関係者が増えれば、データが偽造もしくは改ざんされる可能性が高まります。加えて、AI、機械学習、アルゴリズムへの依存が高まるにつれて、分析によりエラーが発生しやすくなります。このように、改ざんや、臨床試験結果の不正確性が判明した場合、試験は無効となり、医薬品の開発が遅れ、企業ブランドの失墜につながります。

ゲノムデータの管理戦略:5つの柱

ライフサイエンス企業は、新しい医薬品をより早く市場に投入するために、商業的、規制的、技術的、倫理的な課題に取り組まなければなりません。ライフサイエンス企業がゲノムデータの安全性、機密性、信頼性を維持し、より効果的な研究開発を推進していくための、ゲノムデータ戦略の5つの柱は次の通りです。

  1. ブロックチェーン技術を活用し、データの信頼性を保証するための標準化されたシークエンシングと解析を行う。
  2. 個人データを使用する際はプライバシー尊重し、またデータ処理の法的根拠を確認する。
  3. 組織の上層部を筆頭に組織全体のサイバーリスクに対する意識を高め、知的財産の侵害と盗難を防止するためのセキュリティ対策を講じる。
  4. 研究のグローバル化およびゲノムデータ量の増大にあわせて、高速で安全なアクセスを確保するためのストレージとデータ転送手段を利用する。
  5. 機械学習、AI、アルゴリズムなど、研究開発と臨床用途に有効な知見を提供する分析技術を活用する。

本レポートでは、研究開発の責任者たちがコンプライアンスを保持しながらゲノムデータを最大限に活用していくための、具体的なゲノムデータ戦略チェックリストを公開しています。

英語コンテンツ(原文)

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