資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱いについて

資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱いについて

会計・監査ジャーナル(第一法規株式会社発行)2019年3月号にあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

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この記事は、「会計・監査ジャーナル2019年3月号」に掲載したものです。発行元である第一法規株式会社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

1.はじめに

2018年3月14日に企業会計基準委員会より実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下、「本実務対応報告」という。)が公表された。本実務対応報告は2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用される(早期適用可)ため、仮想通貨を保有する企業や仮想通貨を用いた取引を行う企業等にとっては、今3月期決算において適用初年度となるケースが多いものと考えられる。そのため、本稿では、本実務対応報告の概要について解説を行う。
なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.本実務対応報告の適用範囲

本実務対応報告の適用範囲は、「資金決済に関する法律」(以下、「資金決済法」という。)に規定する仮想通貨※1であるとされている(第3項。以下、特段の断りがない限り、「仮想通貨」は資金決済法における仮想通貨を指すものとする。)。
ただし、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した仮想通貨は適用範囲から除くものとされている(第3項ただし書き)※2。ここでいう「自己(自己の関係会社を含む。)の発行した仮想通貨」には、発行した時点においては仮想通貨に該当しないものの、その後に仮想通貨に該当することとなったものも含まれる。
なお、いわゆる「マイニング」(採掘)などにより取得した仮想通貨は、通常、自己(自己の関係会社を含む。)以外の者により発行されているため、ここでいう自己(自己の関係会社を含む。)の発行した仮想通貨には該当しないことから、本実務対応報の範囲に含まれる点には留意が必要である(第26項)。

 

※1資金決済法における仮想通貨は、次のいずれかに該当するものと定義されている(資金決済法第2条第5項第1号及び第2号)
1.物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
2.不特定の者を相手方として、1.の仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの


※2これは、本実務対応報告が当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めることとされたことに加え、公開草案における会計処理等の検討に際して、自己以外の者により発行されている仮想通貨の会計処理についてのみ議論が行われ、自己の発行した仮想通貨の取引の実態とそこから生じる論点が網羅的に把握されていない状況にあったことから、本実務対応報告の範囲から除外することとされたものである(第26項)

3.会計処理

(1)保有する仮想通貨の会計処理

  • 保有する仮想通貨の取扱い

本実務対応報告では、保有する仮想通貨については会計上の資産として取り扱うことが定められた(第27項)。また、それにあたり、既存の会計基準との関係について整理が行われたものの、仮想通貨は外国通貨、金融資産、棚卸資産、無形固定資産のいずれについても(必ずしも)該当しないものとされたことから、仮想通貨に関する会計処理について既存の会計基準を適用せず、仮想通貨独自のものとして新たに会計処理を定めるものとされている(第28項から第33項)。

 

  • 期末における仮想通貨の評価

保有する仮想通貨の期末評価については、次の取扱いが規定されている。

  1. 保有する仮想通貨に活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する(第5項)。
  2. 保有する仮想通貨に活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する(第6項)。なお、前期以前において仮想通貨の取得価額と処分見込価額との差額を損失として処理した場合、当該損失処理額について、当期に戻入れを行わない(いわゆる「切放し法」)(第7項)。

上記に関して、「活発な市場が存在する」場合とは、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとしており(第8項)、保有する仮想通貨の種類、当該保有する仮想通貨の過去の取引実績及び当該保有する仮想通貨が取引の対象とされている仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所の状況等を勘案し、個々の仮想通貨の実態に応じて判断することが考えられるとされている(第47項)。
なお、保有している活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価において、市場価格として仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所で取引の対象とされている仮想通貨の取引価格を用いるときは、保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格(取引価格がない場合には、仮想通貨取引所の気配値又は仮想通貨販売所が提示する価格)を用いることとされており、期末評価に用いる市場価格には取得又は売却に要する付随費用は含めないものとされている(第9項)※3

 

※3仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所が自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所である場合、当該仮想通貨交換業者は、自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格等(取引価格、仮想通貨取引所の気配値及び仮想通貨販売所が提示する価格をいう。以下同じ。)が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができるとされている(第10項)。

  • 「活発な市場」の存在に関する判断変更時の取扱い

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨が、その後に活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合、活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理することとなり、以後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨の期末評価の方法(前述の2.)に基づいて行う。
一方で、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨について、活発な市場が存在しない仮想通貨が、その後に活発な市場が存在する仮想通貨となった場合、以後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価の方法(前述の1.)に基づいて行う※4

 

※4なお、活発な市場が存在しない仮想通貨は、前期以前に行った資産の帳簿価額の切下げの会計処理については前期以前に計上した損失処理額の戻入れを行わない切放し法のみが認められているが、その後、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合には、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとなるため、結果的に、前期以前に計上した損失処理相当額が当該差額に含まれることにより当期の損益として処理されることがあり得るとされている(第51項)。

  • 仮想通貨の売却損益の認識時点

仮想通貨の売却損益については、当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識することとされている(第13項)。

 

  • 仮想通貨の売却損益の表示方法

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示することとされている(第16項)。

(2)仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨

仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時点で、預かった仮想通貨を資産として認識し、当初認識時の帳簿価額は、預かった時の時価により算定する。同時に、預託者に対する返還義務を負債として認識し、当初認識時の帳簿価額は預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とすることとされている(第14項)。
また、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が自己の仮想通貨として保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離したうえで、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行う。仮想通貨交換業者は、対応する負債について、仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額を計上する。そのため、預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の期末評価からは損益を計上されないこととなる(第15項)。

(3)会計処理に関するまとめ

以上の内容をまとめると、図表1のとおりである。

図表1 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者の会計処理のまとめ

保有する仮想通貨

適用範囲 資金決済法上の仮想通貨(ただし、自己及び自己の関係会社が発行した仮想通貨は除く。)
期末評価 活発な市場が存在する場合
  • 市場価格に基づく価額で評価
  • 差額は当期損益で処理
活発な市場が存在しない場合
  • 取得原価で評価(期末における処分見込価額が取得原価を下回る場合は当該処分見込価額。差額は当期の損失)
  • 切放し法で処理
活発な市場の判断変更時 「活発な市場が存在する」→「存在しない」に変更する場合
  • 取得価額(活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額)で再測定し、評価差額は当期の損益として処理
  • 変更後の期末評価は活発な市場が存在しない仮想通貨として実施
「活発な市場が存在しない」→「存在する」に変更する場合
  • 変更後の期末評価は活発な市場が存在する仮想通貨として実施
売却損益の認識時点 売買の合意が成立した時点で認識
売却損益の表示 売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示

預託者から預かった仮想通貨

適用範囲 資金決済法上の仮想通貨(ただし、自己及び自己の関係会社が発行した仮想通貨は除く。)
認識時 資産・負債とも、預かった時の時価で同額を認識する。
期末評価 保有する仮想通貨と同様の方法で資産を評価し、負債を同額とする。

4.注記事項

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨、及び仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨について、それぞれ次の図表2の事項を注記することとされている(第17項)。

図表2 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者の注記事項

  仮想通貨交換業者※5 仮想通貨利用者※6
1.期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
2.預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
-
3.期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額※7

※5仮想通貨交換業者の期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額及び預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額を合算した額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができる。


※6仮想通貨利用者の期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができる。


※7ただし、貸借対照表価額が僅少な仮想通貨については、貸借対照表価額を集約して記載することができる。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
公認会計士
橋本 浩史(はしもと ひろふみ)

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