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会計監査の未来 ~AIがもたらすもの~

会計監査の未来 ~AIがもたらすもの~

次世代監査技術研究室が取り組むAI技術開発と、その先にある会計監査の未来について、週刊「経営財務」(2019年4月8日号)に取材記事が掲載されました。(本ページはその転載です)

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次世代監査技術研究室の役割

レトロな雰囲気が漂う東京・大手町ビルヂング。その一角に、先端技術と専門的知見を活用して日本企業のイノベーション促進を図る拠点がある。「KPMGイグニション東京」。
KPMGジャパンとあずさ監査法人が2018年に開設したこのオフィスには、KPMG自身のデジタル改革を進めると同時に、その経験に基づき企業のデジタル改革をサポートする役割がある。テクノロジーを集約し、将来のデジタル社会に向けた「発信源」として、新たな発想やビジネスモデルを生み出していこう。イグニション - “点火”という言葉には、そんな思いが込められている。オフィスはフリーアドレスでオープンな環境。KPMGは関連施設を世界の主要都市に設置している。
ここを拠点にして、監査の現場で先端技術を活用する方法を研究しているのが、「次世代監査技術研究室」だ。公認会計士が担う監査業務は変化の過渡期にあり、数年後にはIT専門家が知見と技術を提供して会計士をサポートする体制が、より充実すると言われている。同研究室は将来を見据え、監査上の判断を支援する仕組みを開発・提供する役割を担う。「研究室では監査品質の向上に向け、AI、RPA、そしてデータ分析に取り組んでいます。監査との親和性の観点から、特に力を入れているのがデータ分析です」と話すのは、次世代監査技術研究室長の小川勤氏だ。

「現場」を重視した研究と調査

近年、グローバル化などにより海外子会社が増加する傾向にあるが、親会社や会計士が全ての子会社および取引に目を通すのは非常に難しい。ここでデータ分析を導入すれば、これまで発見が困難だったリスクや異常項目を検知できるようになる。同研究室はAIやRPAなどを組み合わせつつ、横断的な技術活用に取り組んでいる。並行して、自然言語処理や機械学習を通じて、会計や監査などに関する法人内の知見を蓄積・共有するQ&Aシステムの開発も手掛け、すでに運用も開始済み。それでも現場に対してデータ分析の導入を進めるのは「AIを技術的に使用することは可能だが、既存の監査手続の代替までには至っていないから」と小川氏は言う。「(先端技術は)実務で使ってこそ意味がある。技術的には可能でも監査の現場で使えるかどうかはまた別の話。現在は、実務に落とし込んで使えるかどうかを研究している段階です」
常に意識しているのは現場。活用にむけ丁寧に展開している最中だ。あずさ監査法人は2018年3月期を対象とした監査の中で、「全上場会社で一つ以上、データ分析を行う」という目標を立てた。その結果、手法自体は法人全体に浸透したものの、高度な分析の普及はまだ十分ではないという。「データ分析という手段から入るのではなく、『なぜデータ分析をするのか』という視点が重要であると改めて感じました」と同研究室の神保桂一郎氏は振り返る。
そこで、2019年3月期を対象とした目標は、『データ分析にもリスクアプローチ』。つまり、「適切なところに適切なデータ分析・手続を当てよう」というもの。どの被監査会社に対して行うのか、具体的にどのようなリスクがあるから導入するのか、「本当にやるべきデータ分析」を行うことに意識を向けている。神保氏は「規模が大きい会社などは特に効きます。ニーズもありますし、費用対効果も高いです」と意義を強調する。

活用まで一歩ずつ

では、比較的小規模の会社はどうだろうか。上場したばかりなどの会社の場合、データ分析を「コスト」と捉えてしまうことがある。先端技術の必要性はわかる。だけど、現場はひっ迫している…。変化に痛みはつきものだが、実際に行動に移せない会社が多いのも現状だ。
「その部分の意識改革を促すのが私たちのミッションの一つです」と神保氏は話す。先端技術によるソリューションとその効果を感じてもらうため、実際にイグニション東京に被監査会社を呼んで議論を交わすこともある。会社にとって効率性と効果が最も作用するポイントを探っているのだ。「いざデータ分析に取り掛かろうとすると『大幅な追加作業』になってしまい、『既存の代替手続』にならない場合もあります。なので、規模が大きい会社での経験を標準化し、中小企業に落とし込んでいく」(神保氏)。絞り込みを行いながら、活用までの階段を少しずつ登っている。

未来の会計士に求められる能力は

ほんの1~2年もすれば、このようなデータ分析が監査の現場で当たり前のように活用されると研究室は見ている。そのためにはまず、被監査会社側のシステムの標準化や整備も欠かせない。買収を繰り返している会社は各社でシステムが異なるといった事情をクリアしなければならないし、経営者のモチベーションを高めることも必要だ。
もう一つの課題は監査法人側の意識改革だ。分析された結果を使い、最終判断を下すという新たな役割が生まれる。神保氏は「会計士の存在意義はとても大きい。最後に意思決定する中で、『AIがそう言ったから』ではクライアントを説得できない。経験をもとに説明を尽くし、信頼を得て同意を得る。それが意思決定の最終プロセスです」と力を込める。
小川氏も言う。「会計士に求められる能力は変わると思いますし、変わっていかなくてはならない。会計士だから会計基準を知っているというのもバリューではなくなるでしょう。AIが分析したものをどう読み解き、最終的な判断をどうするか。そんな能力で勝負する世界になっていくのではないでしょうか」
技術の進化と共に、人間もイノベーションできるかどうか。監査の未来は私たち使い手のあり方も問い掛けている。

週刊「経営財務」No.3403(2019年4月8日号)掲載。本記事は、株式会社 税務研究会の許諾を得て転載しています。

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