数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合

数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合の取り扱いを解説します。

数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合の取り扱いを解説します。

Question

数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合はどのように取り扱われるか?

Answer

1.「平均残存勤務期間」で費用処理年数を決定している場合において、費用処理年数を変更したときは、会計事実の変更に伴う会計上の見積りの変更となる。

2.「平均残存勤務期間以内の一定の年数」で費用処理年数を決定している場合において、費用処理年数を変更したときには、変更を行う理由により、会計方針の変更または会計上の見積りの変更となる。

3.「平均残存勤務期間以内の一定の年数」で費用処理年数を決定している場合は、採用された費用処理年数は、正当な理由により変更する場合を除き、継続的に適用しなければならない。

解説

1.費用処理年数を変更した場合の取り扱い

費用処理年数の決定方法として、(1)発生年度に全額を費用処理する方法、(2)平均残存勤務期間とする方法、および、(3)平均残存勤務期間以内の一定の年数とする方法がある。上記(1)、(2)および(3)の費用処理年数の決定方法が合理的な理由により変更される場合には、会計方針の変更となる。また、企業が採用している費用処理年数の決定方法内で、その費用処理年数を変更した場合、下記の取扱いに従う(適用指針第104項)。

・(1)を採用している場合には、費用処理年数の変更は該当ない(ありえない)。

・(2)の方法を採用している場合で、平均残存勤務期間が短縮されたときは、期首残高の費用処理年数の変更を行うため、会計事実の変更に伴う会計上の見積りの変更となる。

・(3)の方法を採用している場合には、変更を行う理由により、会計方針の変更または会計上の見積りの変更となる。例えば、リストラクチャリングによる従業員の大量退職などにより平均残存勤務期間の再検討を行った結果、平均残存勤務期間が費用処理年数より短くなったことを原因として費用処理年数を変更する場合は、会計事実の変更に伴う費用処理年数の変更であるため、会計上の見積りの変更となるが、一方、これ以外の合理的な理由により変更する場合は会計方針の変更となる。

以上、数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合の取扱いについてまとめると、以下の図表のようになる。

数理計算上の差異・過去勤務費用の費用処理年数を変更した場合の取扱い
費用処理年数の決定方法 費用処理年数を変更した場合の取扱い
(1)発生年度に全額を費用処理する方法
(2)平均残存勤務期間とする方法 会計事実の変更に伴う会計上の見積りの変更
(3)平均残存勤務期間以内の一定の年数 会計事実の変更に伴う会計上の見積りの変更
(例:リストラクチャリングによる従業員の大量退職などにより平均残存勤務期間の再検討を行う場合)
会計方針の変更(会計上の見積りの変更以外)

2.「平均残存勤務期間以内の一定の年数」を採用した場合の費用処理年数の継続性

数理計算上の差異または過去勤務費用の費用処理にあたっては、費用処理年数として発生年度における「平均残存勤務期間」を選択している場合には、発生年度ごとの当該期間が費用処理年数となるが、発生年度における「平均残存勤務期間以内の一定の年数」を採用している場合には、企業が費用処理年数を任意に選択することができる。

この場合、過去勤務費用または数理計算上の差異ごとに、いったん選択した費用処理年数を毎期継続して適用しないと、会計年度ごとに異なる方法により利益が算出される結果、期間比較可能性が確保されないことになるため、いったん採用した費用処理年数は、正当な理由により変更する場合を除き、各期間を通じて継続して適用しなければならず、発生した年度ごとに費用処理年数を定めることはできない。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
金融アドバイザリー部
アシスタントマネージャー 立本 貴大

※本ページは、書籍『Q&A 退職給付会計の実務ガイド(第2版)』(2013年12月発行)から一部の内容を取り上げてウェブ版としてアップデートしたもので、記載内容はページ公開(2019年4月)時点の情報です。

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