M&Aサーベイ - M&Aを成功に導くキーファクターと今後の課題に関する実態調査

M&Aサーベイ - M&Aを成功に導くキーファクターと今後の課題に関する実態調査

KPMG FASは、日本企業のM&Aの実態と今後注力すべき課題を考察するため、東京工業大学 井上光太郎教授のご協力をいただき、本調査を実施致しました。

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本調査は、M&Aの検討段階からPMI(M&A後の統合作業)に至るまでの一連のプロセスについて調査・分析することにより、M&Aによる価値創造の成果と、そのキーファクターとを関連付けて明らかにすることを目的としています。

目次

Executive Summary / アンケート調査の実施概要
PART 01 日本企業によるM&Aの特徴
PART 02 M&Aプロセス(M&A 契約締結前まで)
PART 03 M&Aの対価
PART 04 M&A成功のキーファクター
PART 05 今後のM&A
PART 06 事業評価・ポートフォリオの管理

Executive Summary

分析結果から見える重要なポイント

日本企業によるM&Aの特徴

M&Aの成果を「財務指標」「投資効率」を用いて評価している企業は少ない

本アンケートでは、目的や指標に対して総合的に評価した達成度が60%以上の場合に「成功した」、60%以下の場合に「成功していない」と自己評価している企業が多かった。
また、M&Aの成功・失敗を評価する定量指標として、「売上・収益の伸び」「利益水準」「事業計画達成度」などを使用しているケースが多く、特に「売上・収益の伸び」が62%を占めていた。
一方、財務指標の改善(ROA,ROE,EVAなど)や、投資効率(IRR,NPVなど)を使用しているケースはそれぞれ10%台であった。

図表1 M&Aの成功・失敗を評価する定量指標

図表1 M&Aの成功・失敗を評価する定量指標

M&Aの対価

シナジーの定量化が実務として定着。但し、プレミアムの根拠として利用されていないケースも

M&Aの対価算定方法については、国内案件・海外案件ともに7割以上のM&AでDCF法が用いられていた。
また、本アンケートの統計上、プレミアムの多寡とM&Aの成否について、有意な差は認められなかった。すなわち、買収対価としてプレミアムを多く支払うことがM&Aの失敗に直結するというわけではない、ということだ。
シナジーの定量化については、84%のM&Aで定量化が実施されており、実務として定着していることが分かった。一方で、19%のM&Aでは、シナジーを根拠とせずに10%以上のプレミアムを支払っており(シナジーを定量化した、していない双方のケースを含む)、プレミアムの根拠が不明である。

図表2 シナジーの定量化と支払いプレミアムの程度

図表2 シナジーの定量化と支払いプレミアムの程度

M&A成功のキーファクター

成果が3年以内に見えないのであれば「てこ入れ」の検討も

「販売」「人材」「知財」「調達」の主要なシナジーが3年以内に実現し始めていないM&Aは、企業内で失敗と評価される傾向にあることが、本アンケートでは、明らかとなった。事業環境の変化が激しい昨今、事業計画の前提は時間が経つほどに揺らぎやすい。シナジーは、その実現の時間軸も意識して計画しなければならない。
また、63%の企業が、M&Aで取得した事業について、3年以内を目途に既存事業と同列で評価すると回答している。

図表3 シナジーの実現し始めた時期(成功案件・失敗案件 比較)

図表3 シナジーの実現し始めた時期(成功案件・失敗案件 比較)

M&A成功のキーファクター

ターゲット企業との事前のコミュニケーションが重要

「失敗案件」のPMIにおいて、「やり直したい」取組みは、M&A契約締結前に、その方向性を「事前に合意すべきだった」と思われる取組みと類似していた。
また、「事前に合意すべきだった」と回答する取組みの数が多ければ多いほど、そもそも「ターゲット企業の選定」に失敗したと評価されている傾向が高いことも統計上明らかになった。

図表4 M&A契約締結前に方向性について合意すべきだった取組み

図表4 M&A契約締結前に方向性について合意すべきだった取組み

今後のM&A

経営人材の採用・育成、管理体制の整備・構築が急務

本アンケート回答企業の77%が、5年以内にM&Aを予定している。これらの企業のうち、「買収企業を経営できる人材の採用と育成」については、69%の企業が必要と感じながら実際に取り組んでいる企業は26%であり、そのギャップは43ポイントであった。
また、「買収企業を経営できるグループ会社管理体制の整備」については、53%が必要性を感じているが、実施は29%、「事業評価・モニタリング体制の整備」については、36%が必要を感じているが、実施は18%にとどまっていた。

図表5 「買収企業を経営できる経営人材の採用・育成」に取り組んでいる企業

図表5 「買収企業を経営できる経営人材の採用・育成」に取り組んでいる企業

事業評価・ポートフォリオの管理

拡大・複雑化する事業を管理できる体制になっているか?

本アンケートでは、てこ入れが必要な事業を特定するための「基準」を持ち、「特定できる」と回答した企業は20%にとどまった。
また、事業評価・ポートフォリオ入替えの検討頻度については、「必要に応じて」が50%と最も多く、1年に1回以上検討している企業は35%であった(「毎月」検討を含む)。

図表6 事業評価・ポートフォリオの管理状況、入替えの検討頻度

図表6 事業評価・ポートフォリオの管理状況、入替えの検討頻度

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