リース会計に関するグローバル調査 - 新リース会計基準の適用準備状況

リース会計に関するグローバル調査 - 新リース会計基準の適用準備状況

IFRS(国際財務報告基準)とUSGAAP(米国基準)において、2019年1月から新リース会計基準が適用されます。KPMGは2018年に世界の812社を対象に調査を実施し、企業の適用準備状況や課題、地域間の相違を明らかにしました。本レポートではこの調査結果とKPMGの見解をまとめています。また、KPMGジャパンでは調査結果を深掘りし、本レポート内で日本企業の傾向について解説します。

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2019年1月1日から適用開始となる新リース会計基準の骨子は、従来オフ・バランスとしていたオペレーティング・リースをバランスシートにオン・バランスすることです。そのため、オペレーティング・リースとして分類されるリース取引が大半を占め、かつそれが世界の広範囲な地域にわたる借手企業は、基準適用にあたって多くの時間を要するでしょう。調査回答企業のうち、40%以上の企業が500件以上のリースを有しており、43%の企業が10~30ヵ所、もしくはそれ以上の拠点でリースを行っています。全てのリース取引を漏れなく識別することは、適用プロジェクトにおける最大の困難であり、特に、大きなサービス契約や供給契約に含まれるリース要素(すなわち、組込リース)を適切に識別するには相当の時間が必要です。また、適用準備にあたり、企業にとっては時間のみならずコストもかかることが予想されます。社外アドバイザーを雇用したり、新リース会計のソフトウェアを導入する必要性があり、今後もコストが増加することが予想されます。

なお、新リース会計基準において、IFRS第16号とUSGAAPの関連規定であるASC第842号ではオペレーティング・リースに関する会計処理方法が異なるため、IFRSに準拠して財務報告を行う企業と、USGAAPを適用する企業では、予想する影響が異なる場合があります。また、両基準の下で財務報告を行う多国籍企業は、法定報告に準拠できるよう複数のリース会計基準に対応できるシステムの使用を検討する必要があるかもしれません。

ポイント

  • 新リース会計基準適用にあたり、全てのリースデータの収集・分析、リース会計用システムへの入力・検証作業は困難なプロセスを伴い、多くの企業で適用プロジェクトの進捗が遅れている。
  • 適用開始日までにシステムの完全稼働が間に合わない企業は、システムが完全に稼働するまでの次善策として、手作業による万全な対応策を確実にしておく必要がある。
  • 新基準の適用後、企業は新基準に準拠してリースのポートフォリオを再評価・再測定できるよう、将来の財務報告期間に備えて持続可能なプロセスを整備しなければならない。

適用までに残る多くの課題

新リース会計基準の適用に向けて企業がとるべき最初のステップは、適用のためのプロジェクトチームの組成です。調査時点で、南北アメリカ地域と欧州中東アフリカ地域の4分の3近くがチーム組成のステップを終えている一方、アジア太平洋地域の企業は47%しか終えていません。また、グローバル全体で半数近くの企業がリース会計用のソフトウェアを選び終えていますが、実際に会計への影響評価を終えているのは4分の1の企業です。全体として、適用準備が完了しているのはわず3%の企業であり、67%の企業が、困難に直面し予定通りにプロジェクトが進行していないと回答しています。

世界中の多くの企業おいて、適用プロジェクトが想定よりも遅れ、手作業による暫定的な対策を講じる必要性も生じつつあります。ソフトウェアの導入を間に合わせることが最も望ましいものの、確実かつ正確に新基準に適用するために、各企業は盤石な次善の策を考えておく必要があります。

プロジェクトの阻害要因

新リース基準適用プロジェクトの進捗を阻害する要因は、グローバル全体的に見て、組込リースの識別が最も共通した課題です。その他の課題としては、適切な追加借入利子率の決定、リース取引の抽出とシステムへの入力、既存のシステム環境へのリースシステムの連携が挙げられます。これらの課題を解決する方法として、29%の企業が外部アドバイザーの起用と回答しています。また、25%が予算の追加要求、22%が従業員の追加採用を挙げています。しかし、懸念すべき点は27%の企業が課題の取り組み方がわからないと回答している点です。

既存のシステム環境へリースシステムを連携させることは、新基準を適用する上で核となる課題です。なぜなら、基準の適用は1度だけ実施すれば良いのではなく、長期にわたって持続可能でなければならないからです。リース情報は会計期間ごとに必要となり、リースの更新や変更時には計算をし直す必要があります。将来を見据えてリース会計システムを確実にするために時間をかけるのは、事業戦略上意味のあることでしょう。

企業は、適用に向けた準備がどの程度進んでいるかを現状を直視して評価することが重要です。現在のリソースで課題に対応することができるのか、または、会計基準変更の適用に豊富な経験をもつ第三者を通じでチームを強化する必要があるかどうか評価しなければなりません。

企業経営への影響

調査に回答した企業は、新リース会計基準の適用により、貸借対照表への影響が最も大きいと考えています。続いて、開示または会計処理の報告、プロセスおよび統制への影響を重要なものとして評価しています。

新しいリース基準により、次のそれぞれのエリアについて、どの程度影響があると想定していますか?

5段階で評価して下さい(1=まったく影響がない、5=重大な影響がある)。

新しいリース基準により、次のそれぞれのエリアについて、どの程度影響があると想定していますか?

新会計基準が、財務指標や借入契約の財務制限事項にどの程度影響を与えるについては、十分に明らかになっていません。また、借入が承認された時点の会計基準のもとで計算された財務指標で、引続き評価されるかどうかも、まだ分かっていません。IFRS第16号ではすべての主要なリースに単一の会計モデルを適用するため、財務指標はASC第842号よりも影響を大きく受けることになります。従前は毎期定額で計上されていたオペレーティング・リースに係るコストが、IFRS第16号の下では使用権資産の減価償却費およびリース債務に係る利息として計上されるため、EBITDA倍率も影響を受けます。このような損益計算書上の変更は、リース費用の内容と認識時期の両方に影響を及ぼし、財務上のKPI(主要業績評価指標)に大きな影響を与える可能性があります。

このように広範囲な影響が予想されるため、企業は利害関係者と効果的なコミュニケーションを取ることが重要です。企業はできるだけ早く監査人との議論を開始し、基準の適用に伴う移行処理、新たな会計方針、および経営者の仮定に対する監査と、新しいシステムおよび統制のテストに必要な、十分な時間をタイムラインに組み入れる必要があります。まずは最高経営幹部と監査委員会に対して、検討中の移行方法について説明し、貸借対照表と財務数値に与える影響を理解させ、残課題克服のための予算を獲得する必要があります。すべての利害関係者が変化と影響を確実に理解することは、企業の優先事項として据えられるべき事項です。

システム対応に向けて

新リース会計に関わるシステム対応は、地域により対応が明確に異なります。南北アメリカおよび欧州中東アフリカ地域の企業の半数以上が、新しいリース会計システムの実装、または既存システムの変更を進めている一方、アジア太平洋地域の企業は、4分の1(29%)に過ぎません。アジア太平洋地域では46%の企業が手作業またはスプレッドシートによる変更を予定しています。

新しいリース基準のためにシステムを利用する場合、現状を最も適切に表している項目を選択してください。

単位:%

新しいリース基準のためにシステムを利用する場合、現状を最も適切に表している項目を選択してください。

また、適用開始前に、変更済みシステムの大部分が稼働すると回答した企業は、南北アメリカ地域で77%、欧州アフリカ地域で72%、アジア太平洋地域で58%です。

現時点で世界の多数の企業が、手作業による対応を図ろうとしていますが、プロジェクトが進み必要な作業規模が明確になるにつれ、このような企業の数は減少していくでしょう。どのソフトウェアを実装するかを決定して終わりではありません。企業は、システムに入力すべきデータを特定し、そのデータの完全性と正確性確保のために効果的な管理プロセスを構築する必要があります。システムの評価と開発と評価を並行して進める必要があり、想定以上の時間を要する事態も覚悟しなければならないでしょう。適用開始日までにシステムの完全移動が間に合わない場合、システムが完全に稼働するまでの次善策として、手作業による万全な対応策を確実にしなくてはなりません。

結論

企業は新リース会計基準を遵守するために、明確かつ詳細な計画を策定する必要があります。企業が今やるべきことは:

  • 影響評価を完了させる
  • 新基準の適用に必要な対応を特定し、未解決問題に対する詳細な対応策を策定する
  • 人員を増やし、専門知識を有する外部アドバイザーを活用して、適用プロセスを加速させる
  • ソフトウェアを必要とするが実装に時間がない場合は、一時的な次善策を用いる必要があるが、後々コストが増加し、さらに移行措置が複雑になる
  • 外部監査人、投資家、その他のステークホルダーにリース会計基準の財務上の影響を理解してもらうために対話の場を計画する
  • 適切な経営幹部および監査委員会が移行プロセスに関与しており、必要な内部統制を検討中であることを確認する
  • 最終的なソリューションを決定するために必要な措置を早急に特定し、実施方法を決める

また、新基準に沿ったリース取引管理の必要性は、当初移行後も継続します。そのため企業は、継続的に新会計基準を遵守するために必要なシステムおよびプロセスを確保しなければなりません。

日本セクション

サマリー

今回のリース会計に関するグローバル調査に回答した企業のうち、日本企業は61社でした。調査結果から見える日本企業の特徴としては、リース取引数が多いこと、リース取引を管理する拠点が多いことが挙げられます。このため、新基準の適用にあたり、リース取引の一覧化と収集したデータの検証、会計基準の移行に伴う影響額の試算に時間を要する日本企業が相対的に多いことが予想されます。しかし、リース取引の基礎情報の収集と一覧化が終了している日本企業は21%で(グローバル全体では43%)、また、31%の日本企業が会計への影響評価は未着手と回答しています(全体では14%)。これは、日本企業の取組がグローバル全体よりも遅れている可能性があることを示しています。

適用準備作業が想定通りに問題なく進んでいると回答した日本企業はわずか18%です。適用に取り組む上での具体的な課題として、日本企業の41%が、適切な会計処理及び開示が最大の課題であると回答している一方、グローバル全体ではその割合は21%で、組込リースの識別、追加借入利子率の決定、データ抽出とリースシステムへの適切なデータ移行といった、個別課題に対する問題意識が日本企業よりも高いという結果が見られます。

新しいリース基準を導入するにあたり、直面している課題はありますか?(該当する項目をすべて選択してください)

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新しいリース基準を導入するにあたり、直面している課題はありますか?(該当する項目をすべて選択してください)

システム対応という点では、日本企業の52%が新規のシステム導入または既存システムのカスタマイズを予定せず、手作業またはスプレッドシートによって対応すると回答しており、グローバル全体の32%を大幅に上回っています。また、システム導入を検討している日本企業のうち、適用開始日前にシステム稼働を予定しているのは28%で、多くの日本企業が、適用開始日時点で、手作業またはスプレッドシートを用いて対応するということになります。システム稼働が適用開始日までに間に合うと回答した企業は全体で59%であり、システム対応面でも日本企業の取組の遅れが見て取れます。

日本企業の遅れは、多くの日本企業が3月決算であり、欧米企業と比較して時間的余裕を多少有していることも一因でしょうが、残された時間は少なく、課題を早急に解決していく必要があります。IFRS第16号では、グローバルベースでの情報収集、および、リース取引を管理するセクションからの正確かつ網羅的な情報入手が必要であり、既存の業務プロセスでは実施困難なことも予想されます。システムを導入しない場合でも、適切な内部統制を具備したスプレッドシートによる運用と、グループポリシー策定や社内教育が必要不可欠であるといえます。企業によっては数百億円もしくは数千億円という巨額な会計仕訳を新たに切ることになりますので、ケアレスミスが重大な誤謬につながりかねないという点を念頭に置いて新リース会計基準への適用作業に取り組むことが望ましいでしょう。

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