2019年の今後の展望

The Brexit Column - 英国のEU離脱期限が目前に迫っていることから、今回は、マーク・エセックスより離脱期限までの77日間において重要となる出来事とEU離脱後に向けて、どう備えるかについて解説します。

英国のEU離脱期限が目前に迫っていることから、今回は、マーク・エセックスより離脱期限までの77日間において重要となる出来事とEU離脱後に向け

早速今年のカレンダーに重要な日程を書き込んでいきましょう。赤い丸で囲まれた3月29日は、文字通り、もうすぐそこまで迫っています。それ以外の日はどうでしょうか? 今回のコラムでは、(カレンダーと私たちの頭の中の両方の)空欄を埋める作業をしていきたいと思います。

ではまず、このBrexitのプロセスに影響する「政治的」なロードマップ(それが印刷された地図というよりも、鉛筆で描かれたかなりぼんやりしたスケッチに近いものであるとしても)から見ていきましょう。

テリーズ・メイ英首相のEU離脱協定合意案に対して、延期されていた英国議会での採決が1月15日に実施されます。クリスマスの間に、現状の合意案について、議会採決において十分な票をかき集めることができるほどの修正は行われていません。

しかし、これに関して重要になるのは、単にメイ首相の合意案に対する賛否を問うことだけではありません。(仮に否決されたとしたら)誰がその敗北を引き起こしたのかということもポイントになります。例えば後日、2度目の採決のために議会が招集される場合、1月15日に政府案へ反対票を投じた閣僚のリストは、どの議会内会派が説得可能であるかを示すものになるでしょう。忘れないでください、ジョン・メージャー氏ですら、マースリヒト条約を英下院で通過させるために2度も挑戦しなければならなかったのです。

水曜日の議会の造反により、政府は代案(プランB)を提示するまでたった3日の猶予しか与えられていません。これはメイ首相の合意案に反対する勢力が「議会へ主導権を取り戻す」と表現する点です。しかし、何のために? 単に合意なき離脱に反対するだけでは十分とは言えません。誰かが、どこかで、どうにかして、過半数の同意を取りつけられる案を提示しなければならないのです。2回目の国民投票、統一市場2.0オプション(ノルウェー・プラス型)およびその他の提案のそれぞれの支持者たち全員が納得する妥協案が見つかる可能性が残っているかどうかについて、私は懐疑的な気持ちを抱いたままです。

これについては、労働党の戦略に関わる部分が大きいと言えるでしょう。労働党の有力議員(または造反した保守党議員のグループ)に対して、彼らの要望を十分に組み込んだ形を取りつつ、大きく異なる修正案を支持するよう説得することは可能でしょうか。私の目にはそれは現実的ではないように映りますが、その可能性を完全に無視することはできません。

もしくは、労働党は火曜日以降に不信任投票をもって、政権交代を目論んでいるのかもしれません。しかしながら、結局のところ、労働党自体も2月7日に1つの期限を迎えることになります。この日がEU離脱期限を迎える前に総選挙の実施が可能になるであろう最後の日にあたるからです。2月7日を過ぎれば、おそらく離脱期限の延長が考慮されることになり、労働党の勢いはそれ以降衰え、総選挙実現の可能性は急速に薄れることになるでしょう。

実際に、現状の政治的結論のさまざまな可能性はこの時点から絞られ始めます。この日が、離脱派および残留派のどちらの支持者にとっても一旦落ち着きを取り戻す時であり、おそらく3つの可能性が残されるでしょう。1つは、メイ首相の離脱協定の承認、2つ目は離脱期限の延期、そして3つ目は合意なき離脱です。

EUと英国が興じている度胸試しの危険度はますます高まっており、私たちは3月21日~22日に開催されるEUサミットまでどちらがこの勝負に勝ったのか(そしてそれ以降もその勝者が本当の勝利を勝ち得たと確信を持って言える人がいるのか)を知ることはできません。現時点でEU離脱の最初の日にむけて、企業が最終的な計画を立てる際には、デッキチェア、航海中の客船、氷山の格言(氷山にぶつかり沈んでいくタイタニック上のデッキチェアをいくら並び変えたとしても本質的に全く意味がないこと)を心に留めておく必要があるでしょう。

今私たちが行うべきことは?

以上の状況を考えると、極めて楽観的な人ですら、2月半ばまでに画期的な方法でこの危機を切り抜けることができるという希望的な観測を持つことを止め、最終的な結論に対応するため全力で準備しておくべきでしょう。そのような人々は、政治の方向性と足並みをそろえ、社内の英国離脱対策室の壁の予定表がすでにたくさんの社内調整でぎっしりと埋まっている他の企業の仲間に加わり、4月1日の月曜日からの生活(幸いなことに3月29日は金曜日であるため、離脱後すぐに週末の小休止が入る)に対する準備が整うのです。

KPMG英国は、あなたのTo-Doリスト上の主なタスクのほとんどを私たちのBrexit Navigatorに提示しています。明らかな準備を除いて、離脱後の世界に対して3月29日23時1分からすぐに実行する項目として考慮すべきことは以下になります。

  • 混乱に対応するための準備は十分整っているか?
  • 貴社のコミュニケーションチームは準備できているか?
  • 危機管理計画は正常に機能する状態にあるか?
  • 大量の顧客からの問い合わせに対応できるか?
  • そして極めて重要なこととして、この危機的状況に適切に対応できる人材を確保できているか?

あなたにとって重要な人物が離脱期限日前後に近くにいるということは最も重要なことです。知識および役割の観点から、必ず確保しておく人材として、上級管理職、Brexitチームのメンバー、またはそれ以外の誰かなど、それがどんな人物であるかに関わらず、自分が嫌な役回りになることを覚悟して、何人かの休暇願を却下する事態に陥るかもしれません。

私は、その頃までには事態も落ち着いているに違いないという予想の下で、4月10日から(念のため、新しい国際運転免許証を持って)1週間の休暇を取る予定です。リスボン条約第50条(離脱期限)の延長については、私と家族の頭を悩ませる問題ではありますが。

本稿は2019年1月11日に掲載された英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

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