ブロックチェーンの活用事例~次世代のビジネスモデルを支えるブロックチェーン技術

ブロックチェーンの活用事例~次世代のビジネスモデルを支えるブロックチェーン技術

本稿は、原点から最先端までブロックチェーンの応用事例を紹介しつつ、どのようにブロックチェーンが応用されてきているのかを解説します。

執筆者

豊田 雅丈

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KPMG Ignition Tokyo

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ブロックチェーンはIoT、AIと並ぶ最先端技術の一つとして注目されています。そのためブロックチェーンの事例といえば、仮想通貨を思い出す方が多いのではないでしょうか。この10年でブロックチェーンは進化を繰り返し、今日ではサプライチェーンの生産履歴追跡、将来のドローンや空中タクシーの自動管制、または入国審査の自動化など多種多様な研究事例があります。
本稿は、原点から最先端までブロックチェーンの応用事例を紹介しつつ、どのようにブロックチェーンが応用されてきているのかを解説します。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

I.ブロックチェーンの原点

ブロックチェーンの事例といえば、仮想通貨を思い出す読者が多いのではないでしょうか。
確かに、仮想通貨はブロックチェーンを代表する事例の1つであり、数ある事例の中でも唯一、一般ユーザーに大規模導入されていると言っても過言ではありません。
今、市場に出回っているブロックチェーンのプラットフォームのほとんどは10年前にNakamoto Satoshiが発明した仮想通貨ビットコインが原点とされています。
この原点をブロックチェーン1.0とすると、ブロックチェーンはこの10年で2.0、そして3.0と、進化し続けています。応用事例としても仮想通貨のみならず、これまでのサプライチェーンでは技術的に難しかった、Track&Traceと呼ばれるバリューチェーンを横断的に追跡する履歴が可能になったり、仮想トークンを使ってアプリ上で決済できるような新市場開拓など、世界の企業がこぞって研究開発に力を入れています。このように、ブロックチェーンは将来のビジネスモデルになくてはならない技術として期待されています。
そこで、ここではブロックチェーンの応用事例を原点から紐解き、どのようにブロックチェーンが応用されてきたかについてご紹介します。

II.ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは分散型台帳技術です。これは、「集中型」と「分散型」を比較するとよくわかります(図表1参照)。

図表1 集中型台帳技術と分散型台帳技術の比較
図表1 集中型台帳技術と分散型台帳技術の比較

「集中型」では、さまざまな端末から発生する新規のデータは中央にあるデータベースがチェックし、管理します。たとえば、システムに新規ユーザーを登録する場合、端末から送られたユーザーのデータを中央のデータベースが、データに不正がないか、データの重複がないかを調べます。すべてクリアであれば、データは承認・記録され、接続されているすべての端末から新規ユーザーの情報にアクセスできるようになります。
この集中型は成熟した技術ですが、短所もあります。1つには、データが中央に集中しているために、外部からウィルス攻撃のターゲットになりやすいことです。また、集中データベースを管理するコストはもちろんのこと、管理者自身が不正をしてしまうリスクもあります。ここでのポイントは、集権型はデータの改ざんが何らかの形でできてしまうことです。
これらの短所を克服するために、分散型が発明されました。中央管理を廃止して分散型にすることで、改ざんが不可能なシステムを作ったというわけです。
分散型では、新規データはまずブロックに記入されます。そのブロックは、すべてのコンピューターに共有され、何千、何万という独立したコンピューターが新規データに不正がないかどうかを調べます。大多数のコンピューターがそのブロックに不正のないことに合意するとそのブロックは承認され、前のブロックに鎖のように追加されます。このように承認記録の鎖になることで、改ざんはほぼ不可能になるのです。

III.ブロックチェーン1.0 ―― 仮想通貨の発明

ブロックチェーンの最初の事例は、仮想通貨であると言えるでしょう。イノベーションを0から10に例えるなら、仮想通貨という技術が確立できたことは、いわゆる0から1への革命と言っても過言ではありません。
従来、インターネット上の決済は、あらゆる金融機関のシステムを介さない限り不可能でした。その不可能なことを、仮想通貨ビットコインは世界で初めて成し遂げました。決済は送る側と受け取る側の2人の当事者だけでできる(P2P決済)という、紙幣などが持つ“おカネ”の特徴をインターネット上で実現したのです。それだけではありません。世界の誰でも仮想通貨を作れるようになりました。これも革命的なことです。
一般的に、通貨は国がおカネの価値を保証し、通貨供給量を経済活動の状況に応じて管理するものです。しかし、ブロックチェーンは、国が価値を保証する代わりにユーザー同士が共同で仮想通貨の価値を保持します。そして、通貨自体に組み込まれているブロックチェーンソフトウェアが自動で供給量を調節してインフレーションを抑えます。この仕組みにより、中央管理を必要としない、まったく新しい通貨の発行とその流通技術が確立したのです。

IV.記録システム

ビットコインと同じくして出てきた事例に「Proof of Existence」というものがあります。これはビットコインの基礎技術であるブロックチェーンに着目して、仮想通貨以外に応用できないのかという発想の第一弾ともいえる事例です。
Proof of Existenceとは記録システムのことで、たとえば身分証明書、卒業証書、資格証明書などの証明事項をブロックチェーンに記録し、検証側がその身元確認、証明書の発行者の確認、証明書の内容に改ざんがないことを確実に、どこでも、瞬時に行えるというシステムです。偽造された卒業証書がインターネットで一万円程で買え、またパイロットライセンスでさえ偽造されるケースが数年に一度の頻度で報道されるなか、Proof of Existenceは検証システムとして有効なソリューションと言えます。
Proof of Existence型の事例としては、証書や保証書、ライセンスなどの検証システム、住宅や土地の所有権の証明、相続証明書、身分証明、車検証明、通関手続きの各書類証明、入国審査の自動化、偽物の発見システムがあります。

V.仮想通貨からスマートコントラクトに進化

ブロックチェーン1.0を基礎に、新世代のプラットフォームも開発されています。その主な機能がスマートコントラクトです。スマートコントラクトとは、世界の誰もが契約書をプログラムとして書くことができ、それをブロックチェーンに載せることで当該者が契約書をコールし、自動的に契約書の事項をモニタリング、遂行するというものです。
たとえば、スマートコントラクトを使えば商品の発注、請求、納入の一環のプロセスを自動化することが期待できます。さらにこのプロセスから、仲介料を取る仲介人または仲介会社を省くことで、買い手と売り手双方にとってコストの軽減が期待されます。
加えて、サプライチェーンファイナンス(SCF)等、サプライチェーンの横断的なコストの削減も期待されています。

VI.ブロックチェーン3.0 ―― 各領域に応用され、特化していく

最先端のブロックチェーン3.0の特徴の一つに、金融領域以外に応用される事例が増えていることがあります。先に触れたブロックチェーンの機能、Proof of Existence、P2P決済、スマートコントラクトなどを使って、多種多様な領域のトップ企業が実証実験に投資しています。
たとえば、音楽が再生された時点でスマートコントラクトを起動、著作権の支払いを仲介者なしにアーティストに直接送信する、予測市場をスマートコントラクトで構成することで仲介者を省略する、車同士で仲介なしでデータ交換と決済をするなどです。さらには、ドローンや空飛ぶタクシーなど、空中交通システムの管理管制にもブロックチェーンが使われる研究事例もあります。こうした事例の背景には、センサーエコノミー等を支える端末の増加によって、集中型では中央サーバーがボトルネックになってしまうのではないかという懸念があります。
そのブロックチェーン3.0で特に注目されている事例として「Traceability(履歴追跡)」「Tokenization(トークン化)」「Self Sovereign Identity(自己証明型身分証)」などが挙げられます。

1.Traceability(履歴追跡)

Traceabilityとは、製品などの生産履歴をブロックチェーンに記録することによって、今までの履歴追跡システムでは難しかった全行程(たとえば原料から消費者まで)の履歴追跡や部品単位での履歴追跡が可能になるというものです。昨今の消費者の食品安全、食品偽装防止への高い関心を考慮すると、今後は全行程、あるいは小単位の履歴追跡はかなり重要になってくるでしょう。
KPMG ASIA PACIFICでは、ブロックチェーンを使って高級ワインの生産履歴追跡を記録する「KPMG ORIGINS」の実証実験(Proof of Concept)を行っています。「KPMG ORIGINS」は、ワイン生産者のニーズに合わせて、消費者が簡単に生産履歴情報を取得したり、購入者の満足度を増す趣向が組み込まれた体験型システムです。たとえば、ワインボトルをスキャンするだけで、瞬時に生産履歴にアクセスできます。履歴には、生産者のブドウの品質保証や、生産過程のサステナビリティ基準に達しているといった情報はもちろんのこと、いつブドウが収穫されたか、熟成期間はどれだけあったか、輸送中の気温は何度であったかなど、さまざまな履歴データにアクセスすることができます(図表2参照)。

図表2 ブロックチェーンを使った高級ワインの生産履歴追跡
図表2 ブロックチェーンを使った高級ワインの生産履歴追跡

履歴追跡のニーズは食品関係だけではありません。機械部品類など物理的なもの、決済履歴などさまざまな記録、そしてコンピューターのソフトウェアなど、偽装は至るところで発生します。ブロックチェーンの基本である改ざんが不可能なシステムが、横断的な履歴追跡を可能にし、このような偽装防止ケースに導入されることが期待されているのです。
また、ブロックチェーンは新規のデータ一つひとつが共有され、承認されます。そのため、レギュレーターと共有された履歴追跡は、コンプライアンスを自動化する技術としても期待されています。

2.Tokenization (トークン化)

従来の集権型では、各会社が出資しあって第三者が中央集権型データベースを設置、データを一元化するのが一般的でした。信頼性などの長所はありますが、前述したとおり開発費や管理費、管理責任などの短所もあります。
そこで今注目されているのが「トークン」というコンセプトです。トークンは仮想コインであり、履歴を追跡したいモノ一つひとつに与えられます(英語ではNon Fungible、代替性のないコイン)。たとえば、箱に入った物品を追跡したいのであれば、箱がどこへ行こうと、どの保有者の元であろうと、トークンはその箱をついてまわります。
このように、保有者が変わっても、履歴データはトークン自体に記録されます。これにより、問題が起こりやすい会社間のデータの受け渡しを省略できるだけでなく、さまざまなユーザーや会社、レギュレーターが一元化された情報としてその履歴にアクセスすることができます。

3.Self Sovereign Identity(自己証明型身分証)

「Self Sovereign Identity」とは、アイデンティティ(ID)の自己管理のことです。IDをブロックチェーンの分散型で管理すると、ID管理をする第三者が不要となり、IDの漏洩や盗難のリスクを低減すると期待されています。また、個人についての情報、たとえば医療記録など、どの情報を公開するかしないかは(法律内で)その個人が決めることができることも、Self Sovereign IDの長所の一つです。
今日のネット環境では、ユーザーは一般的に10~20のIDとパスワードを使い分けています。そこで、このSelf Soverign ID技術で、1つのIDですべての認証を可能とするソリューション開発の研究が行われているのです。
Self Sovereign IDは、入国審査の自動化、GDPRなどの個人情報のコントロール、KYC/AML/CFT(顧客確認、資金洗浄・テロ資金供与対策)、機械間の認証、デジタル投票システム、分散型PKIなど多岐に渡る事例があり、その応用性は非常に幅広いと考えられています。

VII.新しいビジネスモデルのためのブロックチェーン

今回は、この10年ほどのブロックチェーンの応用事例をご紹介しました。AIやIoTと共に次世代テクノロジーの一角をなす技術として、ブロックチェーン研究開発のペースはさらに加速していくことでしょう。
既存のプロセスにブロックチェーンを当てはめてコスト削減を期待する一方で、今後はまったく新しいビジネスモデルを可能にするためのブロックチェーンの時代に突入するかもしれません。ブロックチェーンをマスターする企業が市場を制する日もそう遠くないのではないかと思われます。

執筆者

KPMG Ignition Tokyo
ディレクター 豊田 雅丈

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