再びイノベーションを起こし、2030年までにR&Dのフロントランナーになるために

再びイノベーションを起こし、2030年までにR&Dのフロントランナーになるために

生産性の低下、個別化医療の出現、新しいタイプのプレイヤーの参入を受け、ライフサイエンス企業のエグゼクティブはR&Dに対するアプローチを根本的に考え直す必要があります。2030年までに、各社は、アウトソーシング、リソース共有、先端科学技術に重点を置いた手法を採用することになるでしょう。主要企業は、これらのトレンドを十分に理解しておく必要があります。

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取り巻く環境の変化

研究開発(R&D)コストの高騰や製品ライフサイクルの短縮化が、リスクの増加と相まって、ライフサイエンス企業の投資利益率(ROI)や生産性にマイナスの影響を与えています。個別化医療の導入の進展、極端に小さい母集団(適応症の細分化や希少疾患など)の重視などを背景として、ブロックバスターの時代も終わろうとしています。また、政府、保険会社、患者は、薬価に対してさらなる透明性を求めるようになっており、ライフサイエンス企業はコストや価格の引き下げ圧力を受けています。ライフサイエンス企業がこの価格圧力に対処する方法の1つが、R&Dの合理化です。

R&Dを取り巻く景色は既に根本的に変化しており、2030年には現在とは全く異なるものになっていると予想されます。KPMGストラテジーの専門家は、R&DエコシステムはR&Dを担ってきた従来のステークホルダーから切り離され、代わりにテクノロジープレイヤー、医薬品開発業務受託機関(CRO)、学術研究機関、あるいはこれらのプレイヤーの合同体の影響が強くなると予測しています。R&Dプロセスの大部分は外注化され、新興製薬の1つの形であるVirtual value chain orchestrators(VVCO)が、コアなR&Dサービスを提供することも考えられます。

資金調達モデルの変化も、将来起こることが見込まれるR&Dの分散化を促進することになるでしょう。KPMGでは、2030年までに、R&Dコストの削減手段として複数の医療ステークホルダー間でコストとリソースが共有されるようになり、R&Dの資金調達が促進されると予想しています。また、医薬品R&D資金の調達のためのクラウドファンディングが活発化し、市民をも含む多様なステークホルダー間で財務的リスクが分散されるようになることも考えられます。

データセキュリティの重要性

R&Dの有効性のコア部分は、データの整合性、機密性、信頼性です。個別化医療は、個々人にとって特有なものであり、その医療に使うデータは個々の患者に特有のものであることを意味します。データの整合性が変わるということは、誤った治療が施されたり、不適切な医薬品が作られるということであり、患者の健康や福祉に直接影響します。これが、T細胞などの個別化治療のメーカーが、網膜スキャンなど安全性の高い技術を導入して、個人に適切な物理療法をマッチさせることを必要とする理由です。

研究プロセスにおける機械学習技術は、分子候補を評価する時間を著しく(おそらく年単位で)削減するでしょう。そのためには、アルゴリズムの安全性を確保することが求められ、アルゴリズムの「ブラックボックス」に投入されるデータフローのセキュリティも不可欠となります。

次の10年で見込まれる研究の大きな進歩のほとんどは、個人の診療データを使用したものになると思われます。個人データの効果的な管理とプライバシー規制順守のバランスを保ちつつ診療データから洞察を得ることが、間違いなく成功のために重要な要素になるでしょう。

ライフサイエンスのブロックチェーン

ブロックチェーンに対する関心や投資ニーズは、ライフサイエンスとヘルスケアの両分野で特に顕著です。ブロックチェーンによって、運用の効率性や新しい収益機会が生まれる可能性があるためです。

各製薬会社は、以下の領域においてブロックチェーンの利用方法を模索しています。

  • 患者関連。主に、ペイシェントジャーニー、臨床試験、電子カルテ、リコール管理などのビジネスプロセスにおける同意や許可
  • 規制・コンプライアンス関連。主に、ラボの機器データ、偽造薬の防止、国境を越えた医療専門家の採用などのビジネスプロセスにおけるデータの整合性、追跡記録、トレーサビリティ
  • 相互運用性関連。主に、サプライチェーン、契約管理、コールドチェーンなどのビジネスプロセスにおける来歴やデータの共有

ブロックチェーンの発達・導入状況は、まだ、概念実証から最低限実行可能な製品段階を経て人体実証試験に移行しているところです。どのような固有のセキュリティ上のメリットを備えていても、セキュリティ問題から免れることはできないため、最初の計画、設計、導入を適切に行い、社内でのテクノロジーに対する信頼を獲得することが重要になります。プロセスの初期に規制機関と連携し、ブロックチェーンの展開という目標に合わせて規制機関の支持を確実に得ることも必要となります。

どのような結果が生まれるのか - 3つの形態のR&D運用モデルの出現 -

2030年までに、R&Dは大部分が外注化されます。この過程で、一部新しいタイプのステークホルダーが、初期の創薬段階からR&Dの完了と製品流通まで、R&Dプロセスの半分以上を管理するようになると考えられます。この変わりつつある環境において、KPMGでは、テクノロジープレイヤー、技術主導型CRO、プロジェクト志向プレイヤーという3つの形態の企業が台頭すると予測しています。

  1. テクノロジープレイヤー
    テクノロジー企業は、ライフサイエンス分野参入に対する欲求とその適性があることを示し続けます。2030年には、テクノロジー企業は重要なプレイヤーとなり、AI、クラウドベースのプラットフォーム、機械学習、認知技術、ウェアラブルなどの新しい技術を活用し、創薬からR&Dバリューチェーンまでの極めて重要な役割を担うようになります。
  2. 技術主導型CRO
    技術主導型CROは、さまざまなイノベーションを通じてコモディティ化から抜け出します。単なる臨床試験の外注先でなく、R&Dバリューチェーンにおいて幅広いサービスポートフォリオを提供できるだけの十分な設備を持つようになるでしょう。
  3. Project Focused Player
    Project Focused Playersは、さまざまなステークホルダーが共通の目的のもとに集まったチームです。このチームは、初期の創薬段階から後期の医薬品開発までR&Dバリューチェーンの全体を管理することができ、R&Dの目標を達成すると解散します。プロジェクト志向プレイヤーが成功するためには、意思決定プロセスなどの組織全体の体制を効率的かつ柔軟なものにする必要があります。

新しい資金調達モデルの出現

R&D周辺の状況が再構成されるだけでは、R&D投資のリスクは十分に低減されません。現在の資金調達モデルも変わらなければなりません。KPMGでは、R&Dコストとリソースはさまざまなステークホルダーの間で、新しいシェアリングエコノミーモデル、CROとのエクイティパートナーシップ、クラウドファンディングの3つの方法を通して分散される可能性が高いと予想しています。

新しいシェアリングエコノミーモデル
シェアリングエコノミーモデルでは、物理的なアセットを所有するのではなく共有することでコストを削減します。R&Dエコシステム内の企業は、資産、人材、資本、知的リソースの最適化のために連携し、コストとサービスを改善します。Science Exchange(実験の一部を外注するための手配が行えるオンライン市場)などのプラットフォームプロバイダーがより幅広く採用されるようになることで、シェアリングエコノミーモデルはさらに加速するでしょう。

CROとのエクイティパートナーシップ
現在のアウトソーシングモデルは、シンプルな取引ベースのモデルから結果ベースのモデルへと進化しています。KPMGの専門家は、CROと既存プレイヤーの関係は、2030年までにエクイティパートナーシップ(CROが医薬品開発プロセスの持分権を取得する形態)が主流になると予測しています。これにより、財務負担の分担によるリスクの低減や、イノベーションの促進、費用対効果の向上などが期待できます。

クラウドファンディング
第3の資金調達モデルは、クラウドファンディングです。ウェブベースのプラットフォームやポータルを通じて、個人が連携してリソースや資金をプールし、アイデア、理念、企業をサポートします。すでにR&D領域で一般的なものになっており、企業のパイプラインの「マイクロファイナンス」部分を担う実行可能な手段になりつつあります。

革新的で持続可能なR&D機能を作り上げるために

  1. R&Dの範囲を広げる
    R&Dの範囲を、製品ベースの治療よりも包括的で個別化したソリューションの提供にまで広げ、予防、疾患の遮蔽、治療、治癒までもカバーする必要があります。また、R&Dの範囲の再定義にあたっては、必要なR&D機能や企業文化も再定義しなければなりません。企業は、新しい臨床成果を取り入れる適応性、個々の消費者のニーズに応える柔軟性、新しいテクノロジーをシームレスに統合する敏捷性を備える必要があります。
  2. 成功に向けて、ツールキットを開発し、デジタル文化を醸成する
    R&Dのフロントランナーになるためには、中脳、ラボオンチップ技術、3Dプリントなどの科学技術のツールキットを向上させ、深く根ざした文化を変える取組みが極めて重要になるでしょう。これを実現するには、社内の要員計画や、シェアリングエコノミーモデルなどの新しいリソース調達アプローチを通じて、必要な能力を適切に拡張するロードマップが必要になります。また、サイバーセキュリティの問題を考慮するとともに、規制に関する議論にも積極的に参加し、将来の道をふさぐ可能性となるものに対処しなければなりません。
  3. 戦略的に多様な取組みを行う
    KPMGのストラテジーの専門家は、現在のR&Dモデルやコストは、持続可能ではないと考えています。会社として、R&Dバリューチェーンのどこに位置したいのか、その明確な戦略を持つようにするとともに、社内にあるいは提携を通じて、適合する能力を開発し、ばらばらに取り組んでリソースを無駄にしないようにするべきです。そして、このような新しい取組みを行うなかで、テクノロジープレイヤー、CRO、そしてもしかしたら市民とも、リスクやメリットを共有することが必要となるでしょう。

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