IFRS第17号「保険契約」の追加の修正案
IASBは2月の会議で、重要な保険リスクを移転する貸付契約と移行規定を対象とした修正案を決定しました。
IASBは2月の会議で、重要な保険リスクを移転する貸付契約と移行規定を対象とした修正案を決定しました。
IASBは2月の会議で、IFRS第17号「保険契約」の規定に2つの修正を加える提案をすることを決定しました。規定への狭い範囲の修正が、これで連続して4回の会議で提案されています。
今回の会議では、重要な保険リスクを移転する貸付契約と、移行規定に関するいくつかの議題に、審議の焦点が置かれました。保険会社などの財務諸表作成者に実務上の救済措置を提供することを目的として、IFRS第17号の規定を以下の2つの分野において修正することが提案されています。
- 重要な保険リスクを移転する貸付
- 取得した保険金負債(claims liabilities)に関する移行規定
IASBは移行規定についてこれ以上の修正は提案しないことを決めたものの、今回の審議によって移行時の見積りの使用に関する取扱いがある程度明確化されました。
「保険会社と銀行は、両者ともに、重要な保険リスクを移転する貸付契約に関するIASBの決定内容を喜んで受け入れるだろう。多くの貸手が保有する一部の貸付にIFRS第17号を適用しなければならない可能性のある領域だ。しかし、IASBの移行規定に関する決定内容については、保険会社が複雑な反応を示す可能性がある。」
Joachim Kolschbach
KPMG’s Global IFRS Insurance Leader
IASBでの議論
重要な保険リスクを移転する貸付契約
貸付契約に基づく借手の債務の一部またはすべての決済のみを対象とする保険カバーを付した貸付契約について、IFRS第17号とIFRS第9号を修正し、いずれかの基準を適用することを容認する提案を行いました。
移行規定 - 取得した保険金負債に関する実務上の救済措置の追加
保険者が企業結合または保険契約ポートフォリオの移転によって保険契約を取得する前に生じた請求保険金の決済に関する負債の取り扱いについて、移行時の修正遡及アプローチに特定の修正を加えることを提案しています。この修正のもとで、当該負債は発生保険金に係る負債として会計処理されることになり、移行時の公正価値アプローチも同様に修正されることになります。
移行規定 - その他の議論
移行規定に関するその他の側面についても審議しましたが、現時点ではさらなる修正は行わないことを決定しました。
修正案の影響
重要な保険リスクを移転する貸付契約に関する提案では、銀行と保険会社は自社に最も適した会計モデルを選択することができます。特に銀行は、IFRS第17号の適用に対応するように関連するシステムやプロセスを修正する必要がないため、実務上の大幅な救済措置により恩恵を受けるでしょう。
また、取得した保険金負債の会計処理を簡素化する提案により、移行時に有用な実務的な解決策が保険者に提供され、IFRS第17号の適用に伴う費用を削減できる可能性があります。
修正案はIFRS第17号の移行規定を適用する上で一助となり得るものの、移行は依然として複雑な課題を呈しています。IASBは、保険会社の移行規定に関する懸念に対処する道を他に模索することを示唆していますが、次の事項の評価は早期に行うことが推奨されます。
- 各移行アプローチを適用するのに適切なデータが利用可能か否か
- 移行時とその後の両方でどのような影響が潜在していると考えられるか
次のステップ
提案された修正は、IASBの以下の暫定的な決定に追加されるものです。
- IFRS第17号の発効日を2022年1月に延期
- IFRS第9号の適用免除を2022年1月まで延長
- IFRS第17号の財政状態計算書の表示規定の修正
- 先月の会議で審議された4つの重要な分野における修正
これらの事項は、今後IASBの通常のデュープロセスの対象となり、公開草案の公表とその後のパブリックコメント期間を経ることが必要となります。
利害関係者の懸念及び適用上の課題に対応して修正を検討するとした25項目のうち、その大部分が現時点までにカバーされました。残された項目と潜在的な整理論点についても2019年3月の会議で検討されることが見込まれています。また、IFRS第17号の修正に関する公開草案は2019年半ばに公表されることが予定されています。
次回のKPMGのWeb記事でも、このような重要な審議の結果について最新情報を取り上げる予定です。