「トークンエコノミー」へのブロックチェーンの活用とは?

「ブロックチェーン活用術」第14回 - 特定コミュニティー内でのトークン(電子コイン)の流通で形成されるユーザー同士の独自な経済圏「トークンエコノミー」。ブロックチェーンのトークンへの活用について解説する。

特定コミュニティー内でのトークン(電子コイン)の流通で形成されるユーザー同士の独自な経済圏「トークンエコノミー」。ブロックチェーンのトークンへの活用について解説する。

ユーザー同士の独自な経済圏「トークンエコノミー」

ブロックチェーンはまず仮想通貨に応用されて発展してきた。仮想通貨のさらなる活用として期待されているのが、既存の貨幣に代わってトークン(電子コイン)を発行し、特定のコミュニティー内で流通させることで、独自の経済圏を形成する「トークンエコノミー」だ。
例えば、共通の趣味を持つユーザーが集まるコミュニティーを想定した場合、運営者はコミュニティーの活性化を目的に参加者へのインセンティブ(誘因)としてトークンを活用できる。具体的には、参加者の発言やコンテンツの共有といった貢献度に応じてトークンを付与するのだ。
トークンはコミュニティー内での物品やサービスの対価として、あるいはユーザー同士の取引に使用することができる。また、ユーザー同士で「投げ銭」をして創作物を応援しあう企画のほか、トークンの保有量に応じてユーザーがプロジェクトの「意思決定」に関与できるユーザー参加型のプロジェクトも考えられる。

ブロックチェーン上でトークンを発行

これまでも、小売業やサービス業などで独自のポイントを発行する仕組みはあった。しかし、運営者が一方的にサービスを個々のユーザーに提供するもので、ユーザー同士はポイント交換できないことが多かった。一方、トークンエコノミーでは、コミュニティー内でトークン自体に価値が生まれることから、同じような嗜好を持つユーザー同士が積極的に交流し、価値を交換しあう経済圏が様々な場所や分野で成立すると考えられる。
トークンエコノミーで重要なのは、トークンがブロックチェーン上で発行されるということだ。ブロックチェーンの非中央集権的な特徴によりトークンの価値が担保され、トークンがコミュニティー内で流通する仕組みが形作られる。これは、ある個人が保有しているトークンを他の個人に譲渡でき、受け取った人はさらに別の相手にそのトークンを譲渡できるというものだ。
トークンエコノミーは発行体にとって、ユーザーとの接点の増加やニーズのすくいあげのほか、ユーザーによる自律的なコミュニティー活性化を促すことができる仕組みと言える。

ただし、課題もある。トークンの性質を踏まえ、法規制への対応もあわせて検討する必要があり、対応コストを考慮に入れる必要がある。とはいえ、トークンエコノミーは今後の経済活動の多様化において大きな可能性を秘めており、ユースケースの増加が期待される。

トークンエコノミーの例

トークンエコノミーの例

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 渡邊 崇之

日経産業新聞 2018年11月21日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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