不動産の直接売買も期待されるブロックチェーン

「ブロックチェーン活用術」第11回 - 不動産業界でのブロックチェーンの活用例と今後の可能性・課題について解説する。

不動産業界でのブロックチェーンの活用例と今後の可能性・課題について解説する。

不動産業界でのブロックチェーンの活用

不動産業界でのブロックチェーンの活用例として、不動産情報の記録が考えられる。住所や間取り、築年数といった情報のほか、売買や賃貸、リフォームや修繕履歴などの情報を、複数の企業が参加するコンソーシアム型のブロックチェーン上に各当事者が記録する。これを取引の関係者間で共有すれば、取引に必要な情報を即座に入手することができる。
これにより、売り手は物件の価値の証明を、買い手は正確な情報を基にした判断を、不動産業者はその業務を効率的に進めることがそれぞれできるようになる。
さらに、紙でのやり取りが多いという不動産取引の長年の課題も解決できる。不動産業者や住宅ローンを提供する金融機関は、申込書や契約書などからのデータ入力や書類の確認、郵送手配など人による業務が各社に数多く残っている。ブロックチェーンを使って情報を電子化し、共有することができれば、データ入力などの人手による業務が不要となり、業務効率化や入力ミスの削減、契約までの手続きにかかる時間の短縮が可能となる。

ブロックチェーンで期待される不動産取引の自動化

情報の記録だけでない。契約内容をブロックチェーンで管理・履行する「スマートコントラクト」により、不動産取引の自動化も期待される。ブロックチェーン上に事前に定義し条件を満たしたものは自動的に契約が成立し、決済や登記などの手続きが自動で実行される仕組みである。これにより、いつでも取引が可能になり、登記などの煩雑な手続きが不要となり、取引にかかる期間も大幅に短縮される。
さらに、ここにスマートフォンで家やオフィスのドアを解錠することができるスマートロックを組み合わせれば、許可した相手に限定し、関係者の立ち合いなしで内見をすることも可能になる。売買における手続きが信頼できるプラットフォーム上で自動的に実行されれば、将来的には第三者の仲介が不要となり、売り手と買い手が仲介業者なしで直接売買することも可能となる。
ブロックチェーンにより取引プロセスの透明性が向上し、情報の非対称性が解消されれば、中古不動産市場が活性化する可能性もある。不動産に関する情報にはブロックチェーンに載せられない個人情報も多く含まれ、また事業者の競争力につながる情報であるため、どのように共有していくべきかは今後の課題である。

不動産業界への応用例

不動産業界への応用例

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 本橋 由祐

日経産業新聞 2018年11月16日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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