食品業界で期待されるブロックチェーンとは

「ブロックチェーン活用術」第9回 - 食品業界で期待されるブロックチェーンについて、「食品偽装防止」「サステナビリティ(事業の持続可能性)」「リコール」の3点から解説する。

食品業界で期待されるブロックチェーンについて、「食品偽装防止」「サステナビリティ」「リコール」の3点から解説する。

食品業界では「食品偽装防止」「サステナビリティ(事業の持続可能性)」「リコール」の3つの課題で、ブロックチェーンの活用が期待されている。

1つめの食品偽装防止は国際ルールの厳格化が背景にある。世界の流通・食品メーカーによる組織「世界食品安全イニシアチブ(GFSI)」の食品安全ガイダンス(指針)に2017年、「食品偽装防止」項目が追加され、参画企業は対応を迫られることになった。
情報を関係者で共有するコンソーシアム型のブロックチェーンを使い、産地・一次加工・製品化・倉庫・流通を含むサプライチェーン(供給網)の全情報を分散台帳に記録することで、全工程を遡って追跡できる。ブロックチェーンでは情報が関係者に公開され、監視下にあるとも言えることから、データの信頼性が向上する。

2つめのサステナビリティは世界的に社会問題となっている奴隷・児童労働、違法漁業などへ対応するためだ。そんな産地から原料や食品などを買うとブランドイメージの低下や不買運動へつながる。社会規範を遵守した供給先から仕入れるサステナビリティ調達がメーカーの必須目標になる。
ブロックチェーンの改ざん防止やトレーサビリティ(生産流通履歴の追跡)の仕組みを使うとともに、サプライチェーンごとのサステナビリティ証明書の情報を載せる。こうすれば、環境・人権保護などに対応した原料・加工地を選んでいることを消費者に証明できる。米スターバックスはブロックチェーンを使って、コーヒー豆の産地の正当性を証明する仕組みを構築している。

3つめはリコールの早期化だ。現状では出荷ロットの追跡に数日かかるが、健康被害につながる場合、すぐに出荷先を特定しなければ、被害は拡大する。そこでブロクッチェーンの出番だ。QRコードなどを商品に貼り付け、トレーサビリティシステムをブロックチェーン上に構築することで個々の追跡が可能となる。回収の際も数秒でどのロットがいまどこにあるのかを把握できる。米ウォルマートの実証実験ではマンゴーのトレーサビリティが従来7日かかっていたものが2.2秒で実現できたとしている。

食品業界でのブロックチェーンの活用は出荷先への情報伝達の効率化や企業イメージの向上、付加価値の証明としても期待される。

食品トレーサビリティへの活用

食品トレーサビリティへの活用

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 田中 義人

日経産業新聞 2018年11月14日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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