自動運転車による配送:迫り来るモノの移動革命

自動運転車と人工知能の発展により、消費者行動に革命的な変化がおこり、自動運転配送市場への対応に備える必要性があります。

自動運転車と人工知能の発展により、消費者行動に革命的な変化がおこり、自動運転配送市場への対応に備える必要性があります。

来るべき破壊の予兆

eコマースは増加、実店舗でのショッピングは減少

自動運転配送によって起こる消費者行動の変化の兆しは、すでに現れています。英国では、消費者によるeコマース普及率が過去10年間で3倍以上増加しているのに対し、ショッピングのための1人当たりの移動回数が、2008~2016年で7%減少しています。このような動向は英国だけにとどまりません。米国はショッピングのための移動回数、モールの来客数ともに減少する一方で、eコマース普及率は2倍以上増加し、5年後にはさらにその2倍近く増加すると予想されています。そして、中国においても同様の変化で、世界最大のeコマース市場、世界有数のeコマース企業が生まれつつあります。
米国では、AmazonやNetflixなどの企業が、宅配、ダウンロード、ストリーミングと小売環境を変化させてきている一方で、Kroger、Costco、Walmartなどの大手小売店は、「商品を見つけやすくするための予測ソフトウェアを含む人工知能」「配送業の経常収益源となる定期購入ビジネスモデル」「商品の保管や積込みを自動化し、短期間、低コストが実現できるスマート倉庫やロボティクス」「オンラインショッピングのための配送車」といった技術や能力に多額の投資を行うようになりました。これらの投資は、小売企業がオンラインによる商品の注文・配送が大幅に増える未来に備えていることを示しています。

自動運転車が配送を加速する:消費者行動の転換点

人の移動は減り、荷物の移動が増える

自動運転配送車の出現は、全く新しい配送エコシステムへと向かう転換点となります。そして、消費者需要の予測能力やサプライチェーン内の接続性が向上することで配送スピードが上昇し、商品の配送可能数が急増すれば、配送料も急激に下落します。そうなると、実店舗での買い物からオンラインショッピングへと消費者行動の変化は一気に加速し、消費者所有の乗用車は減少するでしょう。
自動運転配送に対する消費者の需要が拡大すれば、配送走行距離も増加します。これは、消費者が店へ移動する代わりに配送車が消費者のところへ移動するようになることを示しています。KPMGの分析によれば、2040年にはショッピングのための移動は50%減少するとしています。しかしこれは最も控えめな見積りであり、低コストで便利なオンライン注文は1.5~3倍に増加し、さらに配送走行距離が増加するとみています。
先見の明のある企業は、自動車・運送エコシステムのなかですでにこうした未来を認識しています。トヨタは自動運転配送車の「e-Palette」を開発、スタートアップ企業のNuroは電気自動運転配送車を設計しています。
また中国では、高層マンションに多くの消費者が集中する巨大都市でのラストワンマイル配送の問題を解決するために、巨大eコマース企業が自動運転配送の開発に多額の投資を行っています。
たとえばJD.comやAlibabaではすでに、顧客のマンションなどの指定された場所に商品を届ける自動運転ロボットを開発・導入し、さらに両社は、遠隔地に配送するための自動運転トラックやドローンの実験も行っています。

新しい車、新しいサービス、新しいインフラ

自動運転配送市場には、配送の緊急度に応じた対応が求められます。最も拡大が予想されるのは、超特急配送、つまり1時間以内の即時配送市場です。
このような配送に必要な車両ボットは、緊急性に応じるためには1台につき1件の注文のみで、店舗または配送センターと消費者間を往復移動する必要があります。そのため、多くのボットを用意しなければ即時配送市場に対する消費者の需要を満たすことはできません。KPMGの試算では、米国においてショッピングの移動が50%減少し、注文回数が3倍に増加した場合、最大100万台のボットが即時配送に必要となります。コネクテッドコマースを選択する消費者がわずかに増加するだけでもボットに対する需要は数百万台に上るとみています。
こうした新しい車両の登場に伴い、自動運転配送市場では、新しいサービス事業やインフラが生まれるでしょう。潜在的な事業範囲は広く、たとえば車両へのメンテナンスや保険、クリーニングといったサービス、またインフラでは、ボットのための充電ステーションや荷物の積み下ろしのための駐車ゾーンの新設、宅配ボックス、さらには、この配送エコシステムをつなぐ強力なコンピューターネットワークの構築も必要になります。

自動運転配送の未来に備える

アイランドの分析~お客様の意思決定におけるKPMGの役割

商品の自動運転配送へシフトすることで小売市場が激変し、実店舗販売の環境の変化、また自動運転車製造と関連サービスの新しい市場が生まれ熾烈な競争が予想されますが、企業が成功するには、個々のアイランド - 人口密度、利用可能な技術、規制環境によって自動運転車の導入が加速する都市 - に目を向ける必要があります(「アイランド・オブ・オートノミー」)。
シカゴのアイランドを例に挙げれば、消費者によるCostcoへの比較的長距離な移動はオンラインショッピングへの移行を生き延びるかもしれませんが、比較的短距離のWalmartやTargetへの移動は自動運転配送に取って代わられる可能性があります。また、ロサンゼルス-サンディエゴのアイランドでは、交通渋滞のため短距離の移動にもかなりの時間を要するので、消費者間で超特急配送サービスの需要が高まると考えられます。こうしたことから、自動車・運送企業が競争力をもつには、どの市場に参入しどのようなサービスを提供すべきかを、アイランドごとに注目して分析を行う以外に方法はありません。また、小売企業においてもショッピングのための移動頻度が大幅に減少し実店舗販売の形態が破壊するなかで、モールの役割が専門店や物販以外の用途(食事や娯楽など)へシフトするなど、生き残るためにいかに革新を行うかという課題に取り組まねばなりません。
KPMGは、新しく複雑な自動運転配送市場への認識と理解のために、以下のような作業を行い個々のアイランドについて強力な分析をする必要があると考えます。

  • どこに価値が創出されるかを理解するため、新しいビジネスモデル、採用しうる技術、市場のセグメントを理解する
  • 勝つための商品とサービスのポートフォリオを整備し拡大する
  • 「未対応のニーズ」を中心とする価値の高い投資テーマを認識する
  • 大都市市場アイランドのニーズを反映した全国展開戦略を開発する
  • 短期間で市場を開発しテストするため、ベンチャーを立ち上げる
  • 市場の進化、成熟度、アイランドのニーズを考慮したグローバル戦略を確立する

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