ノーマルではないことがニュー・ノーマル~「トップ・オブ・マインド調査2018」の日本語版リリース

ノーマルではないことがニュー・ノーマル~「トップ・オブ・マインド調査2018」の日本語版リリース

本稿では、2018年10月に日本語訳が発行された、トップ・オブ・マインド調査2018「ノーマルでないことがニュー・ノーマル - 破壊を事業に活かす」の内容をご紹介します。

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本稿では、2018年10月に日本語訳が発行された、KPMGとグローバルな消費財流通業界ネットワークであるThe Consumer Goods Forumの年次共同調査であるグローバル消費財流通企業エグゼクティブ トップ・オブ・マインド調査2018「ノーマルでないことがニュー・ノーマル - 破壊を事業に活かす」の内容をご紹介します。6回目を迎えた本調査は、世界28ヵ国に本社を置く企業の合計530人のエグゼクティブに対する電話およびオンラインによる調査結果をまとめており、3人のThought Leaderの独占インタビューも掲載しています。

Mark Batenic氏(Chairman、 Independent Grocers Alliance (IGA))、 Stefano Pessina氏(Executive Vice Chairman兼CEO、Walgreens Boots Alliance)およびJoey Wat氏(CEO、Yum China)

ポイント

  • 高成長企業の87%が、イノベーション文化を育てることを戦略的優先課題と回答。破壊的なビジネスモデルを持った企業と競争するためには、成長に焦点を当て、リスクを恐れず自社を刷新する必要がある。
  • 企業のカスタマー・セントリック思考の度合いと、売上の伸び率の間には明確な相関がある。データを活用することで顧客のターゲットを絞り、彼らを引き付けるサービスを提供することで優れた成果をあげることができる。
  • デジタル化が進んでいる企業の収益、生産性および市場シェアの伸び率は、同業他社を上回っている。顧客のニーズに応えることを目的とした新しいテクノロジーへの投資が、競争力の維持と成功につながる鍵となる。
  • 自社のサプライチェーンを顧客のニーズに応えるために配備および最適化していると回答したのは、5社中わずか1社。AIやデータ、アナリティクスの実験を通してサプライチェーンのスピードを速め、よりスマート化することが急務である。

I.はじめに

消費財・小売セクターは、パーフェクトストーム、すなわち地域、人口動態、テクノロジーという同時進行の3つの変革によって変貌を遂げつつあります。企業は不安定な市場の波を切り開きながら、デジタル化や、人工知能(AI)、イノベーション、カスタマー・セントリック思考といったものが結局のところ、「成長」を目的とした手段であることを認識しています。成長はあった方が望ましいという程度のものではなく必須条件です。CEOは自社の文化や戦略、ビジネスモデルが成長に役立っているか、それとも妨げになっているかを自問しなければなりません。一貫した持続的成長を実現するためには、顧客の意見に耳を傾けることが重要です。今年のトップ・オブ・マインド調査を見ると、こうした認識がますます明確になってきています。問題は、企業が顧客の要望に迅速に対応できているかどうかです。

II.市場の破壊、文化と戦略

これまで、企業が成功を続けるためには、コストを削減し、効率性のみを追求していれば問題ありませんでした。しかしこのかつてない破壊の時代において、企業は自社事業の目的、商品、プロセスなどのすべての課題に、根本的に、そして迅速に対応しなければ生き残ることができません。その中でも、高成長企業は、収益の拡大と経営の効率性を重視しています。コスト削減を考えるよりも、成長に焦点を当てた変革が、市場破壊の規模とスピードにうまく対応するためには極めて重要です。実験し、敏捷に行動し、成長することが求められています。また、企業は、社内だけですべてに対応することはできないということを、すでに認識しています。この問題を解決するためには、戦略的連携や提携、パートナーシップを結ぶことを検討する必要があるでしょう。

1.インサイト

  • 企業の31%は、破壊的なビジネスモデルを持った新たな競争相手を市場の動向における最大の課題と捉え、24%の企業が、プラットフォーム企業との競争を最大の脅威と答えいています。
  • 高成長企業の87%が、イノベーション文化を育てることを戦略的優先課題と回答しています。
  • 製造業者の46%と小売業者の34%は、業界の破壊への適応に苦戦しており、58%の企業は、ビジネスモデルを再構築するか、あるいは新たに設計することを計画しています。
  • 取締役会メンバーの55%は、自ら変革できない実店舗は淘汰されると考えています。

2.アクション

  • 勢力を拡大するプラットフォーム企業やスタートアップ企業と競争するために、自身を破壊する。イノベーションとパートナーシップがそのための鍵となるかもしれません。
  • 自社事業の目的、商品、プロセスを根本的に考え直す。目まぐるしく変化する今日の市場を生き抜くために、企業は自らを刷新する必要があります。
  • 自社事業を外側から見る。競争相手、顧客がしていることを確認しましょう。
  • 新しいアイデア、リソース、顧客を引きつけるため、パートナーとのエコシステムを作る。そうすれば、より多くのことをより短時間で実現できるようになり、社内組織を再編するよりも効率的です。
  • 経費削減ではなく、成長に焦点を当てる。このことは、市場破壊の規模とスピードにうまく対応する上で極めて重要です。
  • 変革に関してリスクを恐れたり、短期的思考に囚われたりしないこと。野心的な、しかし現実的な態度で臨みましょう。

III.カスタマー・セントリック思考

カスタマー・セントリック思考の高い企業ほど、予想増収率・増益率が高い傾向にあります。これは、消費者が力を強め、より多くの情報を手に入れられる環境になったことと無関係ではないでしょう。今やウェブサイトやソーシャルメディアなどのコンテンツで共有されるおすすめ情報が、商品やブランドの最大の支援者です。また、カスタマー・セントリック思考に基づくデータアナリティクスの活用は、顧客の人物像やニーズ、その市場がどのように進化しているのかを真に理解することで、より良いサービスを提供することにつながります。年中無休の顧客との連絡窓口、新しいテクノロジーによるシームレスな顧客体験も、消費者を引き付けるでしょう。
消費者が多くの選択肢を有する市場でのカスタマー・セントリック思考とは、終着点ではなく、どこまでも続いていく旅のようなものです。消費者も、テクノロジーも、競争も変化している中で、企業がその存在価値と競争力を維持するためには、顧客が求める価値を提案し続ける必要があります。

1.インサイト

  • 企業のカスタマー・セントリック思考の度合いと、利益・売上の成長との相関関係は明確です。
  • 企業の48%は、消費者ニーズの理解を最優先課題に挙げました。
  • カスタマー・セントリック思考の企業は、データを活用して顧客のターゲットを絞り、顧客を引きつけ、サービスを提供することにおいて、より優れた成果を挙げています。
  • カスタマー・セントリック思考の企業の46%は、顧客との連絡窓口を年中無休でオープンしておくことを最優先事項に挙げています。

2.アクション

  • データアナリティクスを活用し、顧客の人物像、その要望に加え、市場がどのように進化しているかを真に理解する。この情報を、カスタマー・セントリック思考の戦術や戦略に落とし込みます。
  • ブランドを刷新する。自社の商品やサービスが今日の消費者と消費者需要にあったものかを確認しましょう。
  • オンラインからオフラインまで、すべてのタッチポイントで顧客と繋がるために、新しいテクノロジーを受け入れる。シームレスな顧客体験を実現しましょう。

IV.デジタル化、スマート・テクノロジー

最も成功している消費財・小売企業にとってデジタル化とは、テクノロジーの活用により社内の効率性だけでなく顧客に焦点を当てることを意味します。企業がデジタル化を成功させるためには、会社全体をテクノロジーでつなぐ必要があります。商品をオンラインで販売すること自体はゴールではありません。フロントオフィス、バックオフィス、さらにミドルオフィスまでをつなぎ、顧客が求めるシームレスな消費体験を提供するのです。デジタル化に乗り出した企業が優先順位を誤ると、肝心の投資利益を得られないということにもなりかねないでしょう。
ロボティクス、機械学習および人工知能(AI)は既に業界の定義を書き換えつつあります。プラットフォーム企業はこうしたスマート・テクノロジーを率先して活用しています。従来型の小売業者や製造業者はそうした流れに追い付くことができなければ、競争力を失う覚悟をしなければなりません。一方、こうした比較的新しいテクノロジーはすさまじいスピードで変化していることから、企業はあらゆる選択肢を残しておく必要があります。10~15年後には、企業における事業上の意思決定のほとんどをAIが下すようになっているかもしれません。会社を高度に飛躍させる事業に、今すぐ取り掛かる必要があります。

1.インサイト

  • デジタル化が成熟した企業の、収益、生産性および市場シェアの伸び率は、同業他社を上回っています。
  • コスト削減をデジタル化の主なメリットと捉える企業は、全体の31%でした。デジタルリーダーの間では、その割合はわずか3%であり、データ分析の改良をデジタル化のメリットと捉える割合が、それ以外の企業よりも高いことが分かりました。
  • 回答者の46%が、投資利益(ROI)が不透明であることをデジタル化に対する障害と答えました。
  • プラットフォーム・ビジネス企業が収益の13%をテクノロジーに投資しているのに対し、企業全体では、その比率は5%未満でした。
  • デジタルリーダーの41%はロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を使用しており、46%は2年以内に使用を開始する計画です。
  • 2020年までにAIを使用していると答えた企業はプラットフォーム・ビジネスで72%だったのに対し、企業全体では27%でした。
  • サイバーセキュリティ・システムに投資している企業はわずか36%でした。

2.アクション

  • プラットフォーム・ビジネス企業やスタートアップ企業から学ぶ。これらの企業は、テクノロジーを活用し、戦略、ビジネスモデル、および顧客との対話の仕方を作り替えています。
  • 社内の効率性に焦点を当てる代わりに、顧客のニーズに応えることをデジタル化の最終目標に設定する。そうすることで、顧客により良いサービスを提供することができます。
  • 敏捷であることを心がける。既存システムと接続可能な、クラウド・ベースのツールに投資しましょう。敏捷性を高め、迅速な変革が可能となります。成功している企業はクラウド・ベースのオープン・プラットフォームを活用するとともに、AI、ロボティクスおよび拡張現実(AR)の実験を行なっています。
  • AIシステムを段階的に構築し、エンド・ツー・エンドの自動化を実現する。AIシステムを店で買うことはできません。そして、スマート・テクノロジーに対するアプローチの中心に人間味を持たせる。そのためにはカスタマー・セントリック思考と、従業員による支援が必要となります。

V.需要主導型サプライチェーン

消費者のニーズにより効率的に対応するため、需要主導型のカスタマイズされたサプライチェーンを構築している企業は、他社を上回るペースで収益を拡大しています。一方、実際に顧客のニーズのために自社のサプライチェーンを配備および最適化している企業は、5社中わずかに1社とどまります。トレンドが瞬く間に変わり、欲しいと思ったときにすぐにそれを手に入れたいという消費者の要求を満たすためには、機会や脅威にリアルタイムで対応可能な真の需要主導型サプライチェーンが必要です。従来、コスト効率だけがサプライチェーンの目的でしたが、コストと、顧客満足やより良い消費者体験の提供とのバランスを取ることが求められています。成功している企業は、価値を創造するために、製造業者、流通業者、パートナー、サプライヤー、消費者から成るエコシステムに依拠したオープンで協力的なプラットフォームモデルを受け入れ、自社のサプライチェーンを1つ上のレベルに引き上げつつあります。
また、56%の企業が、2020年には製造業者による消費者への直接販売が大幅に拡大していると答えました。製造業者の多くは、今日の収益ストリームをこれまで以上にコントロールすることや、近い将来においてエンドユーザーの興味を掻き立てるであろう商品やサービスを把握するために、自社商品やサービスのエンドユーザーとの直接的なつながりを確立することに取り組んでいます。このことは、製造業者が競争力を維持するうえでますます重要となります。

1.インサイト

  • 自社のサプライチェーンを顧客のニーズに対応するために配備および最適化していると答えたのは、5社中わずか1社でした。
  • 需要主導型サプライチェーンを構築している企業の予想増収率・増益率は、他者を上回っていることが分かりました。
  • 60%の企業が、2020年にはほとんどのサプライチェーンが需要主導型かつカスタマー・セントリック思考のものとなるだろうと答えました。
  • 小売業者の40%は、収益の拡大を需要主導型サプライチェーンの最大のメリットと答えました。

2.アクション

  • 製造業社、流通業者、サプライヤー、および消費者間のオープンで協力的なパートナーシップを受け入れ、サプライチェーンを変革します。
  • 商品化までの所要時間の短縮が優先課題。製造業社には、消費者需要を満たす能力が必要となります。現地調達はそのプロセスを支援するものとなる可能性があります。
  • AIおよびデータアナリティクスの実験を行い、サプライチェーンのスピードを速め、よりスマート化します。これを怠る企業は他者に遅れを取ることになります。

執筆者

株式会社 KPMG FAS
パートナー 中村 吉伸

KPMGコンサルティング株式会社
パートナー 箕野 博之

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