IFRS16号「リース」強制適用!移行準備・最終チェックの4ステップ解説~3:短期リース・少額資産リースの判断

IFRS適用済み企業(リース取引の借手)を前提に、新基準への移行までに解決すべき課題の検討ポイントを4ステップで解説。本ページではステップ3「短期リース・少額資産リースの判断」を詳説する。

IFRS適用済み企業(リース取引の借手)を前提に、新基準への移行までに解決すべき課題の検討ポイントを4ステップで解説。ステップ3「短期リース・少額資産リースの判断」を詳説する。

ステップ3 認識の免除規定を用いてオフバランスとするリースを決定する

多くの企業では、実務上の煩雑さを回避する目的で、短期リースおよび少額資産のリースの免除規定を適用し、使用権資産・リース負債の認識が要求されないリースについてはこれらをオフバランス処理とすることが想定される。次のステップでは、認識免除の対象となるリースの判断におけるポイントを記載する。

ステップ3 - 1 短期リースの判断

リース期間をどのように見積るかの方針が確立することにより、短期リースの免除規定によりオンバランスが要求されないリース取引の範囲を見極めることが可能となる。なぜなら、短期リースの適用可否の判定はリース期間によるのであり、契約書上の合意期間や解約不能期間等の「明示的な」確認によることができないためである。

なお、短期リースとして処理された取引についても、契約変更時およびリース期間見直しを行った場合にその時点から起算した残存リース期間が12カ月を超えたときには、新たなリースとして使用権資産およびリース負債を認識する必要がある。たとえば、1年ごとの契約延長の際に契約が終了する1カ月前までに延長の契約変更が必要な場合には、改定後の契約は見直し時から13カ月の契約となるため短期リースの免除規定を使うことはできない。そのため、当初認識時には短期リースに該当したとしても、事後的にオンバランスが必要になる可能性があり、いったんは短期リースとして処理した契約も適時に見直しを行えるような管理体制を構築する必要がある点に留意が必要である。

また、短期リースの免除規定の選択はクラスごとに行う必要があるため、同じクラスの原資産の一部の重要な取引にだけ本規定を「つまみ食い」的に適用することはできないのでご留意いただきたい。

ステップ3 - 2 少額資産のリースの判断

短期リースと並ぶリースの認識免除の特例として、少額資産のリースがある。少額資産のリースに関して、結論の根拠において、「IASBは、新品時に5千米ドル以下という規模の価値の原資産のリースを念頭に置いていた」と記載されており(IFRS16号BC100項)、そのような少額な原資産を対象とするようなリースであれば、認識免除の規定によらなかった場合に認識されたであろう使用権資産・リース負債の額は、多くの場合、集計した総額においても重要性がないだろうと考えられていた。逆にいうと、もし使用権資産・リース負債を認識していれば集計の総額ベースで重要性に抵触するようなものが少額資産のリースの対象とされることはIASBでは想定していなかったといえる。少額資産であるかどうかの判断は5千米ドルである必要があるのか、多少これを上回ってもいいのか(たとえば、1万米ドル)、といった点については、両者の値の違いを重要性の観点から判断することになると考えられるが、この際に、IASBがどのような意図で本免除規定を導入したかが参考になると考えられる。

なお、5千米ドルの目安は、リース料ではなく「新品時点」での対象資産の価値での判断が求められる点もポイントである。単にリース料が安いことで少額資産のリースに該当するものと誤解されやすいため、注意が必要である。

注:本稿において、意見にわたる部分は筆者の私見であり、筆者が所属する法人の見解ではないことをお断りする。

IFRS16号「リース」 移行準備の全体像/各ステップで気をつけるべきポイント

本稿は、旬刊経理情報2018年11月10日号『強制適用まで残りわずか! IFRS16号「リース」への移行準備・最終チェック』に掲載したものです。発行元である中央経済社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
IFRSアドバイザリー室 マネジャー
公認会計士 橋本 浩史

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