IFRS16号「リース」強制適用!移行準備・最終チェックの4ステップ解説~1:リースの定義

IFRS適用済み企業(リース取引の借手)を前提に、新基準への移行までに解決すべき課題の検討ポイントを4ステップで解説。本ページではステップ1「リースの定義」を詳説する。

IFRS適用済み企業(リース取引の借手)を前提に、新基準への移行までに解決すべき課題の検討ポイントを4ステップで解説。本ページではステップ1「リースの定義」を詳説する。

ステップ1 リースの定義

ある取引がIFRS16号の対象となるかどうかは、当該取引が「リース契約」、「賃貸借契約」といった契約形態をとるか否かではなく、会計基準の要件に照らしての「リース」の判断が必要になる。この点は、従来基準においても類似した、いわゆる「みなしリース」の規定があり、仮にリースの法的形態をとらない取引についても、ある企業から別の企業に特定の資産の使用権が移転される場合には、リースとして(または、リースを含む契約として)会計処理することが要求されていた(IFRIC4号)ため、馴染みのある読者も多いと思われる。また、IFRS16号におけるリースの定義そのものについてもIAS17号から重要な見直しはされていない。

しかしながら、リースの定義をどのように適用するかについては、IFRS16号で支配の観点に基づく再整理が行われたことから、使用権の移転の有無に関する判断の具体的な要件が新旧基準間では異なっている。これらの要件を実際の取引にあてはめた場合、従来基準でのリースへの該当・非該当とは判断結果が異なってくる可能性があることに留意が必要である。

特に、従来のIFRIC4号9項(c)によりリース取引に該当するとしていた取引についてはさらに詳細な検討が必要である。IFRIC4号9項(c)では、特定の資産から製造されるアウトプットのうち無視できない量を他の当事者が購入する可能性がほとんどなく、取引単価が固定額でも市場価格でもない(操業リスクを買手側が実質的に負っている)場合には、これはリースに該当する(リースを含んでいる)とされていた。しかし、IFRS16号の検討フローにあてはめた場合、そのような取引がリースに該当しない可能性がある。そのため、当該取引にリース会計を適用している会社では別途検討を行うことが必要といえるだろう。

また、従来はサービスとリースの違いについても実務上あまり意識されていなかった可能性が高い。なぜなら、本来であればオペレーティング・リースを含むと判断されるべき取引について、仮にすべて「サービス」として処理されていたとしても、オペレーティング・リースもサービスもオフバランス処理であり、会計処理に重要な影響を与える可能性はほとんどなかったと推測されるためである。

しかし、IFRS16号の適用により、原則としてすべてのリースがオンバランスされるため、サービスとリースの違いは直接的に会計処理に影響を与えることとなる。そのため、リースとサービスの峻別は重要な会計論点として位置づけられることとなった。

IFRS16号の適用スケジュールを考えると、本稿をお読みの時点(2018年11月)では、リースの範囲に関する検討についてすでに終了されていると想定されるが、もしサービスの提供を受ける際に専用化された資産が使われる場合等、該当が懸念される取引には早急な対応が必要といえるだろう。

注:本稿において、意見にわたる部分は筆者の私見であり、筆者が所属する法人の見解ではないことをお断りする。

本稿は、旬刊経理情報2018年11月10日号『強制適用まで残りわずか! IFRS16号「リース」への移行準備・最終チェック』に掲載したものです。発行元である中央経済社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
IFRSアドバイザリー室 マネジャー
公認会計士 橋本 浩史

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