ブロックチェーンの全体像~利用目的別に3種類

「ブロックチェーン活用術」第1回 - ブロックチェーンの可能性と応用について、事例を交えながら16回にわたり解説する。

ブロックチェーンの可能性と応用について、事例を交えながら16回にわたり解説する。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンはよく知られているように、仮想通貨の「ビットコイン」を全世界で利用するための仕組みとしてインターネット上に作られた全く新しいプラットフォームだ。インターネットの登場以来、データやプログラムの持ち方そのものを再び大きく変える可能性を秘めている。「分散台帳」や「分散台帳技術」などとも呼ばれるが、特徴の1つを表すにすぎず、全く同じものではない。
この連載では、ブロックチェーンの大きな可能性と、仮想通貨以外に広がってきた様々な業界や業務での応用について、具体的な事例を交えて解説していく。まず全体像の説明から始めたい。

ブロックチェーンの利用目的

応用が進むブロックチェーンは利用目的に応じて大きく3種類に分けられる。
1つめはビットコインに代表されるインターネット上に公開され誰もがアクセスできる「パブリック型」だ。一般的に知られるブロックチェーンはこの型で、管理者が存在しない非中央集権型である。取引が公開されるため、全員で情報を共有して進める業務には向いている。一度にマイニング(採掘)できる取引ボリュームが決まっており、取引の成立に時間を要する。
2つめは主に単一企業内で使う「プライベート型」である。管理者が許可した人に限り参加できる。パブリック型に比べて取引プロセスが速い特徴がある一方、なぜわざわざブロックチェーンを使うのか説明できない恐れがある。
3つめの「コンソーシアム型」は組織や企業をまたがったメンバー間で情報が共有できる。複数の企業や組織が参加することから第三者を置いて取引の管理と完了をすることになる。今現在、企業でブロックチェーンを利用するには最も向いていると思われる。

3種類に共通して言えることは、参加する人同士が第三者の手を介さず直接取引ができることだ。すなわち、既存の金融機関を介さずに世界中の個人同士が直接取引することができるのである。これは金融システムを根本的に破壊してしまう可能性を秘める。

会社の業務や事業への利用を検討する際も、用途に応じてそれぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、既存の組織や業務の枠組みを根本的に見直し、新しい考え方の組織ネットワークを設計することが重要となってくる。

ブロックチェーンの種類と用途

  パブリック型 コンソーシアム型 プライベート型
管理者 なし あり
(複数企業)
あり
(単一企業)
参加者 不特定多数 特定多数 特定組織内
情報閲覧 原則公開
(制限なし)
制限可 制限可
合意形成 演算処理による証明など 特定者間の合意
(任意に設定可)
組織内特定者間の合意
(任意に設定可)

執筆者

KPMGジャパン
フィンテック推進支援室長 東海林 正賢

日経産業新聞 2018年11月1日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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