変化し続ける破壊的テクノロジー2018(第2部)- テクノロジー破壊者が競争を制する

第2部 - 新しいビジネスモデルを可能にし、人々の生活や社会に破壊的な影響を与える革新的なテクノロジーや企業について考察するとともに、テクノロジー業界のリーダーが直面している課題を明らかにします。

第2部 - 人々の生活や社会に破壊的な影響を与える革新的なテクノロジーや企業について考察し、テクノロジー業界のリーダーが直面している課題を明らかにします。

現在、テクノロジー・イノベーションは、世界中のあらゆるビジネスの核になっており、人々の生活や社会に大きな影響を与えています。破壊的テクノロジーである、IoT、AI、ロボティクスが結びつきを深め、新しいビジネスモデルと企業が出現している中で、第4次産業革命は、急速に進展しています。
これからは、伝統的な企業であっても、デジタルファースト企業への転換を進めなければ、廃れていくことになります。次世代のグローバルリーダーは、複雑な破壊的テクノロジーと新しいビジネスモデルを通じて、先を見越した戦略的な経営を行い、効果的な方法で変化に対応することが一層求められています。

巨大な可能性をもたらすテクノロジー

ビジネスを激変させる破壊的テクノロジー

今後3年間で、どのテクノロジーが最もビジネスの変革に影響を与えるかについて意見を集めた結果、上位にランクされたのは、IoT、AI、ロボティクスでした。

 

今後3年間で、どのテクノロジーが最もビジネスの変革に影響を与えるでしょうか。

今後3年間で、どのテクノロジーが最もビジネスの変革に影響を与えるでしょうか。

第1位:IoT – デジタル経済のリーダー(17%)
この数年間でIoTは、実験段階からビジネス価値を生み出す段階へと移行し、現実の世界をデジタル化しています。IoTに対する全世界の支出は、2021年までに合計1.1兆ドルに達すると予測されています。IoTを採用する最大の利点は、ビジネス効率の改善、収益性向上、コスト削減です。一方で、テクノロジーの複雑さ、リスク管理、セキュリティが依然として課題となっています。

第2位:AI – 投資とイノベーションが牽引(13%)
AIの発展に伴い、テクノロジーの主導権と人材をめぐる競争が激化しています。今後は、特に米国と中国の有力なテクノロジー・プレーヤーによる、研究開発やM&Aへの巨額投資が行われることが予想されています。中国はこの分野を支配するための重要なAI戦略を発表し、大きな成果をあげています。コグニティブおよびAIシステムに対する全世界の支出は、2021年までに522億ドルに達すると予測されています。AIに関するイノベーションの発展は、仕事の性質や、企業が成功を収めるために必要なスキルと人材の再定義を促します。bot(ボット)は人間よりも迅速にかつ適切にデータを分析するようになり、そして人間は、将来、より高い目標を達成するために投入されていきます。

第3位:ロボティクス – ロボットが人間の限界を変える(10%)
ロボティクスは、器用さ、知性、センサーを高度なレベルで実現しています。サービス用のロボットや、従業員の代わりとなる産業用ロボットの需要が成長し続け、従業員数を最小限に抑えた工場も現実性を増すでしょう。現在では、プロ向け、消費者向けロボットや無人航空機など、産業向け以外のセグメントのにも大きなロボティクス需要が生まれ、多額の投資が行われています。例えば、IoTとロボティクスのイノベーションにより精度が高まり、遠隔手術など新たな用途が実現しています。今後10年間で、ロボティクスが多くの人々の生活に影響を与える可能性があります。ロボティクスとドローンに対する全世界の支出は、2021年までに2,184億ドルに達すると予測されています。

生活、社会、環境に最も恩恵をもたらすテクノロジー

今後3年間において、生活、社会、環境に対して最も恩恵をもたらすテクノロジーとして、回答者の14%がIoTを挙げました。AIは12%、ロボティクスは10%となりました。


今後3年間で、生活、社会、環境に対して最も恩恵をもたらすテクノロジーとは何でしょうか。

今後3年間で、生活、社会、環境に対して最も恩恵をもたらすテクノロジーとは何でしょうか。

ロボット、AI、IoTが世の中で普及しすぎることを心配する声もある一方、これらのテクノロジーが、日常生活、社会、環境を良くしていく上で役立つことが、より明確になってきています。例えば、健康やフィットネスの予防的管理にIoTデバイスを役立てるケースが増えています。また、個人向けロボットが高齢者や障害者を支援するようになり、AIを使った自然災害発生における新しい支援方法がも考えられています。

消費者市場に前例のない変革をもたらすテクノロジー

今後3年間で、消費者市場において最も変革をもたらすのは、IoTであると回答した人が、全体の17%となりました。続いて、AIが13%、ロボティクスが8%となっています。

 

今後3年間で、消費者市場において最も変革をもたらすテクノロジーとは何でしょうか。

今後3年間で、消費者市場において最も変革をもたらすテクノロジーとは何でしょうか。

インターネット対応のコンピューターセンサーが急速に普及して、大量のデータ収集と機械学習が行われるようになり、消費者市場では、かつてない変化が起きています。
調査では、国ごとに少し違いはあるものの、消費者市場に変革をもたらすテクノロジーとして、主要な地域においては、IoTとAIの両方のスコアが高くなっています。その他として、暗号通貨を選択した回答者は、全世界の7%でした。特にデジタル通貨が急速に進むアジアで、暗号通貨を選ぶ人が増えています。また、仮想現実(7%)と拡張現実(6%)も、勢いを増しています。拡張現実は、モバイルアプリでのユーザー作成コンテンツのオーバーレイから、店舗内マーケティングまであらゆる用途で利用されています。

成長への道:破壊的ビジネスモデル

デジタル革命が驚異的な速度で拡大し、大量生産・大規模生産中心の産業経済から、情報中心のデジタル経済へと移行しています。デジタル時代の競争を制する企業とは、テクノロジーの導入により、意思決定の迅速化、コスト削減、効率の向上、ユーザー体験、顧客体験の改善を実現する企業です。今年の調査では、クラウドコンピューティング、エンターテインメント、ペイメントゲートウェイ、モバイルデータなど革新的かつ多角的な事業を展開する、中国企業のAlibabaが、最大のビジネス破壊企業として、米国の企業よりも上位に選出されています。
回答者の26%が、今後3年間で、最も破壊的影響を持つ新しいビジネスモデルとして、eコマース・プラットフォームを挙げました。AlibabaやAmazonに見られるように、eコマースの変化のスピードは速く、迅速な配送に始まり、その後、効率の高い物流管理やサプライチェーンの運用へと進化し、非常に優れた顧客体験を実現しています。現在のeコマースでは、新しいモバイルペイメントサービスとデジタルアシスタントが導入されています。
また、テクノロジー業界のリーダーは、今後3年間で、メディア、輸送、ヘルスケア、消費者の各市場がこれまでにない変革を遂げると予測しています。例えば、米国では、NetflixやAmazon Primeなどのビジネスモデルや破壊的テクノロジーの成功が評価され、メディアが最大級の変革に向かっています。OTT(オーバーザトップ)コンテンツプロバイダーの成長と規模により、消費者は、より多くのテレビ視聴オプションを得ることができるようになりました。一方、プレーヤーたちは、これまでに培った収益性の高いモデルを大きく破壊され、モデルの発展と変革が急務になっています。

イノベーションと事業化の壁

イノベーションが進展する一方で、回答者の24%が、テクノロジー・イノベーションを制限する最大の問題として、政府による抑制的な規制政策を挙げました。例えば、米国と中国では外国投資に対する監視が強化されています。また、EUでは2018年5月25日にGeneral Data Protection Regulation(GDPR: 一般データ保護規則)が施行されました。
ほかに認識されている問題として、第2位に人材および専門技術へのアクセス(22%)、第3位にテクノロジーの標準が存在しない(21%)、ITインフラストラクチャが旧式(21%)という課題が挙げられました。

 

テクノロジー企業がイノベーションを試みる際に、次のうちどれがイノベーションを制限/制約するでしょうか。

テクノロジー企業がイノベーションを試みる際に、次のうちどれがイノベーションを制限/制約するでしょうか。

各テクノロジー企業がイノベーションに取り組んでいる中、人材をめぐって熾烈な競争が起きています。そして、主要なテクノロジー・プレーヤーは、テクノロジーの複雑さを低減することに関心を持っているものの、テクノロジーの標準を共同で策定しようとする気運は限定的です。テクノロジー企業がどのように統合のパラダイムに対処して複雑さを低減するかが、次の波で業界のリーダーが優位に立てるかどうかの鍵となります。
また、テクノロジー・イノベーションの事業化を阻む問題の第1位は顧客獲得で、回答者の22%を占めました。この問題は特に日本で顕著になっており、30%を占めています。第2位は、資金調達/資本へのアクセス(21%)、およびサイバーセキュリティ(21%)という結果になりました。

まとめ

第4次産業革命は着実に進行しています。最先端のテクノロジーが企業、消費者、社会、環境に影響を与え、産業全体が激変しつつあります。次の波となる破壊的テクノロジー、つまりIoT、人工知能、ロボティクスが結びつきを深め、新しいビジネスモデルと企業が出現している中で、今世紀のテクノロジー革命は、その影響を予測できないほど加速を続けています。
この複雑な破壊的テクノロジーと新しいビジネスモデルを通じて、先を見越した戦略的な経営を行うには、先見の明と勇気が必要です。失敗を恐れたり、現状維持に甘んじたりしている場合ではありません。
各企業は、数年前には視野になかった新しい事業分野に参入しています。この複雑なテクノロジーを通じて事業を展開し、最前線のポジションを維持することが、次世代のグローバルリーダーにとっても課題となります。


レポートの全文については、以下のダウンロードPDFをご参照ください。

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