クラウド・コンピューティング(IAS第38号に関連) - IFRICニュース2019年3月 -アジェンダ却下確定
IFRS解釈指針委員会ニュース(2019年3月) - クラウド・コンピューティング(IAS第38号に関連)については、2019年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
クラウド・コンピューティング(IAS第38号に関連)については、2019年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
Article Posted date
10 April 2019
関連IFRS
IAS第38号「無形資産」
概要
以下の前提において、ソフトウェアをサービスとして提供する(SaaS)クラウド・コンピューティング契約における顧客の会計処理はどうなるか。
- 顧客は、サプライヤーによって管理又は支配されたクラウド基盤上で動くサプライヤーのアプリケーション・ソフトウェアに一定期間アクセスするために手数料を支払う。
- 顧客にソフトウェアの所有権は無く、必要に応じて、インターネットや専用回線を通じて、ソフトウェアにアクセスする。
ステータス
IFRS-ICの決定
IFRS-ICは、2019年3月のIFRS-IC会議で、顧客は、契約開始日にソフトウェアという資産を受領するのか、契約期間にわたってサービスを受領するのかについて、次の通り指摘した。
- 契約が、1.ソフトウェアのリースを含むか、又は2.契約開始日をもってソフトウェア自体の支配を顧客が獲得するのであれば、顧客は契約開始日においてソフトウェアという資産を受領するといえる。
1.リース
・IFRS第16号の定義より、契約がリースに該当する場合、対象資産の使用方法及び使用目的の変更に関連する意思決定権はリース開始日に顧客に移転する。
・もし、契約がサプライヤーのアプリケーション・ソフトウェアに一定期間アクセスする権利のみを顧客に与えるものである場合、ソフトウェアの使用方法及び使用目的に関連する意思決定権(例 いつ、どのようにソフトウェアを更新又は再構成するかや、どのハードウェアを使ってソフトウェアを機能させるか等の決定権)は顧客に移転しないため、当該契約はリースを含まない。
2.無形資産
・資源が企業にとっての資産であるためには、当該資源を企業が支配している必要がある(IAS38.8)。対象となる資源から生じる将来の経済的便益を獲得するパワーを有し、かつ、当該便益への他者のアクセスを制限できる場合に、企業は無形資産を支配しているとされる(IAS38.13)。
・もし、契約がサプライヤーのアプリケーション・ソフトウェアに一定期間アクセスする権利のみを顧客に与えるものである場合、顧客はソフトウェア自体から生み出される将来の経済的便益を獲得するパワー及び当該便益への他者のアクセスを制限する権利を与えられるわけではないので、顧客は契約開始日に無形資産を受領していないこととなる。 - 以上より、契約期間にわたってアプリケーション・ソフトウェアにアクセスする権利のみを顧客に与える契約は、リースにも無形資産にも該当しないことからサービス契約であり、顧客は契約期間にわたってサービスの提供を受ける。サービス提供を受ける前に対価を支払う場合、それは将来のサービス提供を受ける権利に対するものであるため、当該権利に対する資産を認識することとなる。
IFRS-ICは、2019年3月のIFRS-IC会議で、現状のIFRS基準書の要求事項が十分な判断の基礎を示していると判断し、アジェンダに追加しないことを決定した。