「環インド洋」新市場の地政学リスクとチャンス

「ビジネステーマ解説2018」連載第24回 - 国内の市場規模縮小が予想されるなか、日本企業が今後ビジネス展開する新興市場のリスクとチャンスについて解説する。

国内の市場規模縮小が予想されるなか、日本企業が今後ビジネス展開する新興市場のリスクとチャンスについて解説する。

2007年以降、日本の人口減少が続き、今後も国内の市場規模縮小が予想されるなかで、日本企業が、新興市場の成長を見越して事業展開することは不可避である。一般に新興市場は、豊富な若年人口と活発な消費により市場規模が拡大し続け、一旦市場シェアを獲得すれば長期的に優位に立てるチャンスがある。1984年にインドに進出したスズキ自動車は、16年度に市場シェア47%を確保するなど他国に類例を見ない。また、アフリカの人口は、今後急増し15年後にはインドと中国の合計を上回るという予想もある。

一方、日本の海外直接投資(FDI)は大きく後れを取っている。
例えば対スリランカへの最大直接投資国の中国の2017年の投資額628.5百万ドルに対し、日本は46百万ドル、インドですら173.8百万ドルに達している(スリランカ投資庁の資料による)。
その一因には、日本企業の地政学リスクに対する回避志向がある。新興市場には、政情不安、インフラの欠如、不正・腐敗などによる公正なビジネスの困難さ、人材教育のコストや労働力の質や離職率の問題など、共通するリスクがある。

地政学的な注目エリアとして、これまでの「環太平洋地域」から、「環インド洋地域」(南アジア、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中東、東アフリカ)の戦略を検討する必要がある。この地域での日本企業の投資は進んでいないが、急速な人口増加と市場拡大が見込まれる。

また、単独進出の困難な中東やアフリカ地域へはインド系企業と業務提携し、日本企業の技術力と資金力、インド系パートナーの人材とIT技術を持ち寄ることにより、現地での経験不足を補いリスクを抑止することができる。こうした進出形態が、今後検討すべきモデルとなりつつある。

執筆者

KPMGジャパン グローバルジャパニーズプラクティス
マネージング・ディレクター Vatkar Prasanna

ビジネステーマ解説2018

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