地方創生 - 今こそ地方企業は積極的な経営改革を

「ビジネステーマ解説2018」連載第22回 - 「攻め」のM&Aへの取組みが地域の活性化につながる。「地方創生」とM&Aの関連性について紹介する。

「攻め」のM&Aへの取組みが地域の活性化につながる。「地方創生」とM&Aの関連性について紹介する。

「地方創生」という言葉を耳にし始めてからほぼ4年が経過し、その間に行われた政府、行政、民間による様々な取組みを検証する時期にも来ている。KPMG FASはこれまで、地域に根ざして課題と直面する地方銀行とのネットワークを構築しながら地域経済への接点を深め、ソリューションをワンストップで提供するモデルで幾つかの「地方創生」案件に取り組んできた。

その中で、今や地方の中小企業においてもM&Aは一般的になりつつある。用いられるシーンは、地場名士企業による新規事業買収、同業者同士による地域内再編、後継者不在による他社への事業売却、再生企業へのスポンサーの招聘など様々で、最近では海外もターゲットに入りつつある。ただし、大半のケースが「受け身」のM&Aである点で共通しており、自社からの働きかけでM&Aを実施したケースは10%強にすぎないという統計もある。一概に「受け身」が悪いという話ではないが、実際に案件に携わる中で「もっと良いパートナー企業があるのではないか」、「もっと早く決断していれば今よりも高い価格で売却できたはず」と感じることが多いのも実状である。

特に、地方は人口の減少や経済の縮小スピードが時間の経過と共に益々早まっている。地域の雇用を支える存在として、「戦略的に最適なパートナー企業に自らアプローチし」、「他者から促される前に主体的に決断をする」、いわゆる「攻め」のM&Aに、地方企業が積極的に取り組んで行くことができれば、その効果は飛躍的に向上し、ひいては地域全体の活力を向上(真の「地方創生」)させることにつながるのではないだろうか。

さらに先進的な事例として、自らの豊富なアセットを、ビジネスアイデアを有するスタートアップ企業に開放し、短期間において新規事業を創出する取組み(アクセラレーションプログラム)も徐々に地方企業に広がりはじめている。深刻化する地方の現状に対して、多様な手法を積極的に取り入れることを促しつつ、ともに「地方創生」を実現していくのが我々外部アドバイザーの責務でもあると感じている。

「地方創生」に向け地域が抱える主な課題

「地方創生」に向け地域が抱える主な課題

執筆者

KPMG FAS
執行役員パートナー 阿部 薫

電波新聞 2018年8月28日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、電波新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

ビジネステーマ解説2018

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