移転価格税制の法案に関するアップデート(2018年6月更新)

2018年1月3日に内閣より閣議承認された移転価格税制の法案が、2018年6月5日、国民立法議会へ提出されました。

2018年1月3日に内閣より閣議承認された移転価格税制の法案が、2018年6月5日、国民立法議会へ提出されました。

当議会で承認され次第ついに法案成立となりますが、今回提出された法案では以下の2点に変更がありました。

  1. 売上基準3,000万バーツ以上の企業については、事業年度内の関連者間取引の有無に関わらず、関連者間取引に関する情報を記載した付表の提出が求められる。
  2. 移転価格税制の適用開始事業年度は2019年1月1日以降に開始する事業年度とする。

タイ移転価格法案の和訳

歳入法 第71条の2(1)
関連者間取引について、納税者が独立した第三者との取引において適用されるであろう、商業上および金融上の条件と乖離した条件で取引を行っていることが税務調査で発見された場合、税務調査官は、納税者の課税所得を独立企業間取引において獲得したであろう金額に更正する権限を有する。


歳入法 第71条の2(2)

歳入法における「関連者」の定義を以下に定める。

  1. 一方の法人が、他方の法人の株式の総数又は出資金額の50%以上を直接又は間接に保有する関係にある法人
  2. 同一の者によってそれぞれの株式の総数又は出資金額の50%以上を直接又は間接に保有される関係にある法人
  3. 一方の法人が資本・経営・支配権の観点において、他方の法人に依存しなければならない関係にある法人で財務省令で定めるもの(実質支配関係にある法人)


歳入法 第71条の2(3)

歳入法では、同条(1)に基づき、税務調査官が納税者の課税所得を更正した場合に、納税者に対して税金の還付申請を認める。納税者は法人税申告書の提出日から3年以内、もしくは税務調査官から更正通知を受けた日から60日以内に税金の還付を申請することができる。


歳入法 第71条の3(1)

歳入法第71条の2(2)に規定する関連者を有する法人は、関連者間取引の有無にかかわらず、歳入局長が定める書式(この書式はまだ公表されていない)に従って、その事業年度の関連者間取引の金額などの関連者間取引に関する情報を記載した付表を作成し、その事業年度終了日から150日以内(法人税申告書の提出期限)に歳入局へ提出しなければならない。


歳入法 第71条の3(2)

タイ歳入局は、同条(1)に基づき関連者間取引に関する付表を提出した法人に対し、提出日から5年以内に、移転価格の算定・分析に必要な文書もしくは証憑の提出を求めることがある。提出を求められた納税者は、その通知を受けた日から60日以内に提出しなければならない。ただし、税務調査官はその裁量により、通知日から120日を超えない範囲でその提出期限を延長することができる。


歳入法 第71条の3(3)

その事業年度の売上が3,000万バーツ未満の法人は、同条(1)(2)の対象外とする。


歳入法 第35条の3

相当の理由なく71条の3に定める書類を提出しない、あるいは提出した書類に不備がある場合には、20万バーツを超えない範囲で罰金を課す。


この移転価格に関する法律は、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用されるものとする。

KPMGのコメント

移転価格税制の法施行に向け、いよいよ国民立法議会の承認を待つのみとなりました。施行開始年度は2019年度へ先送りとなりましたが、関連者取引に関する付表の提出は、年間売上が3,000万バーツ以上のすべての法人に義務付けられることから、ほとんどの日系企業が対象となります。

親会社を含む関連会社との取引(購入・販売・ロイヤリティーやマネジメントフィーの支払い等)がある会社については、それらの価格設定ポリシーとリスクの整理や見直し、税務署による税務調査が実施された場合の対応策の検討等の準備を早めに開始されることをお薦め致します。

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