人事部に求められる税務ガバナンス
「ビジネステーマ解説2018」連載第13回 - 本社がグループの税務情報や税務戦略を一元管理する「グローバルタックスマネジメント」が重要な経営戦略となる中、本社人事部に求められる税務ガバナンス構築について考察する。
本社がグループの税務情報や税務戦略を一元管理する「グローバルタックスマネジメント」が重要な経営戦略となる中、本社人事部に求められる税務ガバナンス構築について考察する。
日本企業が海外進出を開始してから既に長い年月が経ち、各社における既存の事業形態を、現在の企業を取り巻く環境や主要国の税制の変化に応じた再検討が必要な段階になってきた。
従来、日本企業の経営は税引前利益の最大化を目標とし、事業運営や管理は各事業部が担っている場合が一般的だったが、キャッシュフローを重視する海外投資家等から実効税率の最適化が求められている。
さらにリスクマネジメントやBEPS(税源浸食と利益移転)の観点からも、グループ企業内の税務上の課題を適切かつタイムリーに把握することが求められ、本社がグループの税務情報や税務戦略を一元管理する「グローバルタックスマネジメント」が単なる節税対策を越えた重要な経営戦略として認識されている。
この流れの中、従来、海外駐在員を含むグローバル人材の税務申告や国際間の移動状況等の管理は現地子会社に任されているケースが一般的だったが、本社人事部にて一元管理することが望ましいと考えられるようになった。
しかしながら、本社人事部において一元管理できるような税務ガバナンスを構築することは、人的リソースの不足や税務知識や経験の不足から、多くの日本企業では遅々として進まない状況だ。このような問題を解決するために、まず、自社の税務ガバナンスの状況を把握し、グループ内各企業が思い描くあるべき人事オペレーション基盤を設計し、不足するリソースを社外リソースやテクノロジーを活用することで、グローバル人材の税務ガバナンスを早急に確立することが必要と考える。
(参考)国際人材プログラムの運用実態に関する調査結果
出典:KPMG International “Global Assignment Policies and Practices Survey 2017 results”
執筆者
KPMG税理士法人
アカウンティング&ピープルサービス
パートナー 宮原 雄一