売上税・サービス税(SST)の草案公開_vol2
マレーシアニューズレター - マレーシア関税局より7月19日付で草案が公開されました。2018年9月1日から導入が予定されている売上税・サービス税(SST)につき、現時点において公表されている情報をベースに、2015年4月1日のGST導入以前のモデルとの比較及びKPMGのコメントを取りまとめました。
マレーシア関税局より7月19日付で草案が公開されました。2018年9月1日から導入が予定されている売上税・サービス税(SST)につき、現時点において公表されている情報を ...
Article Posted date
27 July 2018
提案されている売上税・サービス税(SST)案
従前のSST(GSTが導入される前の旧SST)と新たに提案されているSST案における主な相違点について、概要を下記にて取り纏めましたのでご参考ください。なお、下記はすべての相違点を網羅しているわけではない点ご留意ください。
売上税(Sales Tax)
項目 | 旧売上税 | 売上税(案) |
---|---|---|
「製造」の定義 (石油関連の物品以外) |
手動又は自動で有機又は無機の原材料を加工し、そのサイズ、形状、性質を変えることにより新たな製品とすること(部品の組立を含む) | 手動又は自動で原材料を加工し、そのサイズ、形状、組成、性質、品質を変えることにより新たな製品とすること |
売上税が免除される物品 | 大豆油、ピーナッツ油、オリーブ油を含む | 大豆油、ピーナッツ油、オリーブ油を含まない |
課税業者の自動登録 | 規定なし | 特定のGST課税登録業者は自動的に登録される |
課税業者の任意登録 | 規定なし | 可。非課税物品の製造業者を除く |
課税業者の登録基準 (課税対象物品の売上高) |
RM100,000 | RM500,000 |
特別規定 |
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保税工場における原材料・部品の免税規定 | 規定フォームを関税局へマニュアルで提出する必要がある | 申請書をMySST(電子申請)を通じて提出する必要がある |
申告書の提出 | 課税対象期間終了の日から28日以内 | 課税対象期間終了の日の翌月末 |
延滞税ペナルティ | 30日毎に10%の累積(最大50%) | 最初の30日…10%、 次の30日…15%、 次の30日…15% (最大40%) |
脱税ペナルティ | RM50,000の罰金、または3年以内の懲役、またはその両方 | 初犯…売上税額の10~20倍の罰金、または5年以内の懲役、またはその両方 2回目…売上税額の20~40倍の罰金、または7年以内の懲役、またはその両方 |
法廷外の和解ケース | RM5,000を超えない | 最大罰金額の50%を超えない |
軽減措置 | Finance Ministerの権限で、売上税またはペナルティの軽減措置あり | Finance Ministerの権限で、売上税の軽減措置あり Director General(関税局長)の権限で、延滞税、ペナルティ、フィー等の軽減措置あり |
保管期間 | 6年間 | 7年間(DGの承認のもと、マレーシア国外での保管も可) |
KPMGのコメント
- 提案されている売上税(案)における「製造」の定義は、旧制度よりも拡大されており、旧制度のサイズ、形状、性質を変えることに加えて、組成、品質を変えることも含まれている。この定義の拡大により、旧制度では課税対象ではなかったものが課税対象となる可能性があるため留意が必要。また、当該定義の変更および、新たに導入された課税業者の任意登録の制度は、売上税徴収の裾野を広げ、税収減を埋めることに寄与すると考えられる。
- 提案されている売上税(案)では、保税倉庫及び保税工場をマレーシア国外とみなす規定を無くし、特定地域(Special Area)として取扱っている。また、ラブアン、ランカウイ、ティオマンについては、依然として指定地域(Designated Area)として取扱われる。当該特別規定は、特定・指定地域からの物品の入出庫取引について、売上税の観点から事業・取引の再検討を要する可能性がある。
- 提案されている売上税(案)では、関税局と直接やり取りを行うようなマニュアル手続は少なくなる。旧制度のもと、担当官との直接交渉による問題解決を行っていた旧制度を知る担当者には全く別の制度になることが予想される。これは、旧制度の売上税と比較して、より精度の高い申告書類等の作成、関税局への提出が要求されることを示唆している。
サービス税(Service Tax)
項目 | 旧サービス税 | サービス税(案) |
---|---|---|
課税対象サービス | Service Tax Regulation 1975のSecond Scheduleで規定されたサービス | 規定された課税対象サービス
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課税業者の登録基準 (課税対象サービスの取引高) |
課税業者、課税対象サービスにより異なる | RM500,000 (クレジットカード等の発行会社には適用されない) |
登録基準の決定方法 | Historical法 | Historical法及びFuture法 |
課税業者の自動登録 | 規定なし | 特定のGST課税登録業者は自動的に登録される |
特別規定 |
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グループ企業間の免税規定 | グループ企業間で提供される一定のサービスにつき、グループ企業間の免税規定あり | 規定なし |
輸出サービス | 要件を満たす場合、サービス税の対象外例)提供されるサービスにつき、 (i) マレーシア国外にある物品、土地に関連してなされる場合 (ii) 上記(i)以外の事項につき、マレーシア国外に関連してなされる場合 |
免税(一定の要件を満たす場合に限定される可能性あり) |
申告書の提出 | 課税対象期間終了の日から28日以内 | 課税対象期間終了の日の翌月末 |
延滞税ペナルティ | 30日毎に10%の累積(最大50%) | 最初の30日…10%、 次の30日…15%、 次の30日…15% (最大40%) |
保管期間 | 6年間 | 7年間(DGの承認のもと、マレーシア国外での保管も可) |
KPMGのコメント
- 提案されてるサービス税(案)において、課税サービスの対象が追加されている(電気、ゲーム、国内線フライト等)。
- 旧サービス税において、規定されたサービスの定義が不明確なものがあった(例:コンサルティング・サービス等)。提案されているサービス税(案)においても、課税対象サービスが明確に定義されない限り、課税対象サービスが増えるに従って、より多くのサービス提供業者にとって実務上の対応が求められる可能性がある。
- 旧サービス税において、グループ企業間で提供される一定のサービスにつき免税となる規定があったが、提案されているサービス税(案)において、そのような免税規定は無い。現在、グループ間で提供されているサービス(例:マネジメントサービス等)について、今後、サービス税の課税対象となり、グループ企業のコスト増になる可能性がある。当該コスト増が大きければ、グループ組織及び事業運営についての見直しが求められ、リソースの集中・配分の最適化を妨げる可能性がある。
- 提案されているサービス税(案)の移行期間についても留意が必要である。関税局は、2018年7月19日に公表したFAQにおいて、9月1日以降のサービスについては課税対象であることを示唆している。よって、導入日をまたぐサービス提供取引について、8月31日までのサービス提供金額を決定する必要があり、実務上の困難に直面するケースが想定される。