Real-time IFRS 9: IFRS 9 bank disclosures #3
Real-time IFRS 9は、銀行業のIFRS第9号の適用状況についての最新動向をお伝えするものです。 - 最新情報の詳細分析 -
Real-time IFRS 9は、銀行業のIFRS第9号の適用状況についての最新動向をお伝えするものです。 - 最新情報の詳細分析 -
銀行業のIFRS第9号に関する開示
最新情報の詳細分析
Real-time IFRS 9 #2の公表以降、KPMGは銀行が今日までに開示した情報を詳細に分析しました。KPMGは、カナダ及び欧州の大手国際銀行14行が公表した2017年度年次報告書、IFRS第9号への移行に関する報告書及び2018年度第1四半期報告書を調査しました。
KPMGは、銀行がIFRS第9号を適用する際に最も多くの労力を費やしているIFRS第9号の予想信用損失(ECL)モデルについての開示に焦点を当てました。
信用リスクの著しい増大の評価
Real-time IFRS 9 #2では、KPMGは数行についてECLモデルに基づく信用の悪化の度合いを示す異なるステージ間でどのようにポートフォリオを配分するかを調査しました。ここでは、その方法についてのより詳細な分析を行います。
一部の銀行は、信用リスクの著しい増大(SICR)を評価するアプローチについてかなり詳細な説明を提供していました。SICRは、減損モデルにおいて金融資産がステージ1からステージ2に移動する要因となるものです。それらの銀行の多くは、定量的及び定性的要件並びにバックストップ(移動を判断する期日経過の基準)を組み合わせて適用する意向を示していました。
最も一般的な定量的指標が、貸出金及びその他のエクスポージャーの残存期間にわたるデフォルト確率(PD)であり、全期間のPDとして知られています。一部の銀行は、ホールセール・エクスポージャーについては内部信用格付けを、特にリテールについては12か月のPD(すなわち、翌12ヶ月間のデフォルト確率)を用いる意向であることを説明していました。
一部の銀行は、適用するPDの相対的(及び絶対的)な変動についてのより詳細な基準を提供していました。例えば、銀行によっては、SICRを組成時に見積ったPDの2倍と定義(個々のポートフォリオについてはより詳細に定義)していた一方で、他行では、より小さい基準を用いる予定であることを示唆していました。
定性的情報については、複数の銀行がSICRについて考え得る3つの指標について言及していました。その3つの指標とは、エクスポージャーが「ウォッチリスト」(より厳格な信用調査が行われる対象のリスト)に記載されること、エクスポージャーについて条件緩和措置が開始されること、信用調査機関から債務者についての不利な情報を受け取ることです。
複数の銀行が、このような評価を行う際の専門家による信用リスクの判断が重要であることを強調していました。
その他に、以下のような興味深い論点があります。
- 30日の期日経過の基準:KPMGが調査したほぼすべての銀行が、SICRの評価に30日の期日経過の基準を適用することを述べていました。すなわち、このような銀行では、期日が30日超経過したすべての金融資産がステージ2に移動することを意味します。
- 低い信用リスクの例外:KPMGの予想通り、バーゼル委員会のガイダンスに従って、この例外についてはあまり広く説明されていません。この例外は、評価する資産の質が十分に高いこと(一般的には、主要な信用格付機関から投資適格の格付けを得ていることと理解されている)を条件として、銀行がその信用リスクの著しい増大の有無を評価することなくその資産(またはその他のエクスポージャー)をステージ1に配分することを認める規定です。この例外について説明した数行は、外部格付けが利用可能な負債証券及び(または)他の一部の商業エクスポージャーに対してこの例外を適用する意向を示しています。
将来予測的な情報の織込み
IFRS第9号のECL減損モデルでは、エクスポージャーの残存期間について将来予測的な情報を織り込むことが要求されます。これは、旧基準(IAS第39号)の発生損失アプローチからの主な変更点の1つです。
この新しい減損モデルは、確率に基づく測定方法であり、複数の起こり得る結果の影響を織り込むモデルです。実務上、このモデルを適用し、関連する経済シナリオを選択するのに困難を伴う可能性があります。
KPMGが調査したすべての銀行が、このモデルのアプローチについて議論し、使用する予定の経済シナリオの数(すなわち、GDP成長率等の信用リスクの主な要因についての仮定の数)を開示していました。その中で最も多く見られたのは、ベースシナリオと、より良い結果とより悪い結果の可能性等をカバーした3つのシナリオを用いるという選択肢でした。
マクロ経済変数の利用
経済シナリオを策定する際には、貸出金及びその他のエクスポージャーの信用リスクに影響を及ぼす主要な経済変数を決定します。ほぼすべての銀行が、どの変数がこれらの主要な要因とみなされるかを開示していました。この情報について全体的な情報のみを開示する銀行も数行ありましたが、中には、ホールセールとリテール別の開示を提供する銀行もありました。
次の展開
数ヶ月後に公表される欧州の銀行の第1四半期決算にすべての関心が注がれることでしょう。IFRS第9号の新しい規定によってビジネスの方針がどのように変更されるのか、IFRS第9号への移行時にどのような定量的影響があるかについてのより詳細な開示が期待されます。欧州の銀行の第1四半期の開示とすでに第1四半期決算を公表したカナダの銀行の開示との比較にも関心が集まることでしょう。
KPMGは、その第1四半期決算が公表され次第、情報を更新します。引き続き、Real-time IFRS 9をご覧ください。